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第4話

作者: ココア
どうやらさっき、激しく動きすぎたみたい。

ナースコールで医者を呼ぶと、診察した医者は、険しい顔で、すぐに流産を防ぐ薬の点滴を手配した。

手の甲に針が刺さる瞬間、私はぐっと歯を食いしばった。

そして、冷や汗で病衣がぐっしょりと濡れてしまった。

布団の中で体を丸めて、点滴の液がゆっくりと落ちるのを、ただじっと見つめていると、一秒一秒が、一年みたいに長く感じられた。

お腹の子を失うのが、怖かった。

それから、30分ほど経って点滴が半分くらい進むと、下腹部の重い痛みも少し和らいできた。

その時、病室のドアが乱暴に開けられた。

竜也が、二人の警察を連れて飛び込んできたのだ。

「お巡りさん、この人です!」竜也は私を指さして、悲痛な顔で叫んだ。「睦月が救急で診断書をもらってきたんだ。全身打撲だそうだ」

そう言いながら、竜也の目は、失望の色でいっぱいだった。

「絢香、どうしてこんな乱暴なことをするんだ?睦月は俺の教え子なんだぞ!」

竜也の声は震えていた。

「本当に、がっかりしたよ!」

私はベッドの上で体を起こしたまま、このバカげた茶番をただ見ていた。

警察はベッドのそばまで来ると、私の手の甲の点滴針に気づいた。そして、ベッドのヘッドボードにかけられた「ハイリスク妊娠」と書かれた札にも気づいたようだ。

「お巡りさん」私は布団をめくって点滴のチューブを見せた。「今、切迫流産で、安静にしていないといけないんです」

そう言って、私は竜也を見た。

「さっきはあの人が突然襲い掛かってきたんです。私は、自分の身を守っただけです」

そして私は、少し間を置いてから続けた。

「だから、もし体が動くなら、そこの男も一緒に蹴り飛ばしてやりたかったくらいですよ」

それを聞いて、竜也は、全身が凍り付いたように固まった。

「安静に?」

彼は私をじっと見つめ、唇は血の気を失っていた。

事情を確認した警察は、竜也を軽蔑したような目で見た。

「奥さんの体調が戻ってから、警察署で事情を聞かせてもらうことにします」

警察が帰った後、病室は恐ろしいほど静かになった。

竜也はベッドに近づくと、私の手を握ろうと手を伸ばしてきた。

「絢香、妊娠してたのか?なんで、俺に言わなかったんだ?」

そう言う彼の声は、さっきと打って変わり急に優しくなった。

「やっと俺たちにも子供ができたんだな。三人家族か……本当によかった」

だが、私は竜也を見つめたまま、何も言わなかった。

すると再び、病室のドアが開けられた。

睦月が飛び込んできて、竜也が私のベッドのそばにいるのを見て、顔色を変えた。

「絢香さん、すみません」睦月はうつむいて、不満そうな声で言った。「妊娠されているなんて知らなくて……さっきのは、誤解だったんです」

そう言って、睦月は竜也の方を見た。

「私に暴力を振るったことは、もう気にしませんから」

私は睦月をじっと見つめた。

「私が産婦人科にいるって知ってたはずよね?それでも手を出してきたってことは、流産させようとしたんでしょ?」

それを聞いて、睦月は視線をそらし、何も言わなかった。

すると突然、竜也が口を挟んだ。

「まあまあ、二人とも。誤解だって」竜也は私を見て言った。「絢香、とにかく今は体を大事にしろ。怒るのはよくない」

そして彼は、睦月に目配せをして言った。

「睦月、君は先に帰ってくれ」

それを聞いて、睦月は唇を噛んで、くるりと背を向けて出て行き、病室のドアが再び閉まった。

一方で、竜也はベッドの脇に腰を下ろし、私の手を握った。

「絢香、これからは、家族三人でうまくやっていこう」

竜也の手は温かく、声も優しかった。

でも、彼が睦月に目配せしたのを、私は見逃さなかった。

この男は、妻と愛人の両方を手に入れようと、本気で考えているのだ。

それから竜也は、病院から急な呼び出しを受けて出て行った。

病室を出る前、私の手を握って優しい目で言った。「絢香、すぐに戻るから。ゆっくり休んでるんだぞ」

私は頷いたが、何も言わなかった。

そしてドアが閉まった瞬間、得体の知れない不安が胸にこみ上げてきた。

胸騒ぎが止まらなかった。

どれだけ落ち着こうとしても、心臓は異常な速さでドキドキして止まなかったのだ。

医者が安静にするための注意事項を説明してくれていたけど、私の耳には何も入ってこなかった。

こうして嫌な予感は、ますます強くなっていくと、ふとあることが脳裏によぎった。凛は薬を取りに行ってくれている。

付き添いの介護士は、食事を買いに……

父のそばには、誰もいない。

そう思って、私は勢いよく布団をめくりあげ、点滴の針を引き抜いた。

「横山さん、ベッドから出ちゃだめです!」看護師が止めようとしたが、私は看護師を振り払って、病室を飛び出した。
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