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第5話

Auteur: 君雅乃
胸が締め付けられるように痛む。親に先立つは不孝。まだ何一つ親孝行もできてないのに、あの世とこの世で分かれることになってしまうなんて、悲しすぎる。

母さんはいつも細かいところにまで気がつく人で、ちょっとした異変でもすぐ察知するんだ。でも、あの時だけは私の異常に気づかなかった。それが少し残念だった反面、ホッとした自分もいた。もしバレてしまったら、あの二人にかかる負担を考えると怖かったから。

良平は私の両親を見送ると、さっさと携帯を取り出して浮気相手に電話しやがった。

「もう大丈夫。戻ってきていいよ」

その一言が全ての始まりだった。私はその瞬間から、あいつの愛人を追い出すことだけを目標にした。

夜中、彼女がトイレに立ったタイミングを狙って、そっと背後に立つ。彼女が振り向いた瞬間、私はスッと姿を消した。まず確認したかったのは、彼女が私を見えるかどうか。結果、彼女には私が見えていた。本当に不思議だ。

「だ、誰......?誰かいるの?」

彼女はおそるおそる辺りを見回し、どうやら自分の目がイカれたんじゃないかと思ったらしい。

私はリビングのベランダにじっと立って、彼女の様子を見てい
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