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第3話

Author: ちょうどよかった
家の中は静まり返っていたが、散乱したままで、南が出て行った時と変わらなかった。

視線が開け放たれた寝室のドアに向けられた瞬間、心臓が大きく跳ねた。

南が早足で近づくと、タンスの引き出しはすべて開けられ、中の服や宝石がひっくり返され、まるで泥棒に入られたかのような惨状だった。

胸が激しく上下し、指先は冷たくなり、怒りで体が震えた。

その時、玄関の鍵が開く音がした。

剛が入ってきて、部屋の惨状を見て眉をひそめた。

寝室の入り口に立つ南を見て、いつもの不機嫌な口調で言った。

「何を突っ立ってるんだ?家がこんなになってるのに、帰ってきたなら片付けたらどうだ」

南は冷ややかに笑った。

「規律を重んじる官舎の隊長ともあろうお方が、被害者に後始末をさせるとはね」

彼女の皮肉な視線が剛を通り過ぎ、その後ろにいる恵美を捉えた瞬間、凍りついた。

全身の血液が沸騰し、頭に上ったような気がした。

それは母の形見の着物だった。貴重な京友禅で傷つきやすいため、結婚式の当日に一度袖を通しただけで、タンスの奥深くに大切にしまっておいたものだ。

その、母への尽きせぬ思慕が詰まった着物を、あろうことか恵美が着ていたのだ!

「脱ぎなさい!誰の許可を得て母の物に触ったのよ!」

恵美はすぐに身を縮め、剛の後ろに隠れるようにしておどおどと言った。

「剛さんが私と翔太を家族写真の撮影に連れて行ってくれたの。着ていく服がなくて、この着物が一番奥にしまってあったから、きっと要らないものだと思って借りってしまった」

南は猛然と振り返り、剛を睨みつけた。声が震えている。

「北村剛、この人でなし!母の形見だって知ってるくせに、彼女に着せて家族写真を撮りに行ったの?」

剛は彼女の青ざめた顔を見て一瞬表情を強張らせたが、すぐに冷徹な顔に戻った。

「翔太が父親に会いたがったから、俺の判断で写真を撮りに連れて行ったんだ。

たかが服一枚だろう。しまっておくだけなら無駄だ。そんなに目くじらを立てる必要があるか?」

目の前の「家族三人」を見て、南は目眩がした。積もり積もった感情がついに爆発した。

彼女は狂ったように突進し、恵美の腕を掴んで殴りかかろうとした。

それを見た翔太がすぐに南の足元に駆け寄り、タイミングを見計らって転ぶと、凄まじい泣き声を上げた。

「悪い人!どうして僕を押すの!」

突然の出来事に、揉み合っていた二人の動きが止まる。

剛の顔色が一変し、一足飛びに近づくと、問答無用で南の頬を張り飛ばした。

「桜木南!いい加減にしろ!」

強烈な平手打ちに耳がキーンと鳴り、顔の半分が瞬時に麻痺した。

よろめいて二歩後退し、南は信じられない思いで彼を見つめた。

剛の目は冷たく、彼は身をかがめて翔太を抱き上げると、怒りと失望を込めて彼女を見た。

「ただのわがままだと思っていたが、これほど性根が腐っていたとはな。こんな小さい子供に手を上げるとは!」

南は床でのたうち回って嘘泣きをする翔太と、口元に薄ら笑いを浮かべる恵美を見て、心臓が痙攣するように痛んだ。

「自分で転んだのよ。私、触れてもいないわ。演技だって分からないの?」

「演技だと?まだ六歳の子供が嘘をつくとでも?お前は自分の非を認めたくないだけだ」

剛の目はさらに冷たくなり、ドアの外に向かって怒鳴った。

「お前ら!こいつを反省室へ連れて行け!俺の命令があるまで出すな!」

二人の隊員が入ってきた。

剛の視線は霜のように冷たく、南を突き刺した。

「中で頭を冷やせ。自分の過ちを悟るまで出てくるな」

南は必死に抵抗した。

「私は悪くない!どうして閉じ込められなきゃいけないの!」

しかし彼女の力など訓練された隊員二人には敵わず、すぐに反省室へと引きずり込まれた。

ガチャンと重いドアが閉まり、光と音を遮断した。

暗く、湿っぽく、狭い部屋にはカビの臭いが充満していた。

南は冷たい隅にうずくまり、頬の痛みと、それ以上に冷え切った心を感じていた。

どれくらい時間が経っただろうか、ドアが再び開き、強烈な懐中電灯の光が差し込んだ。

入り口に立っていたのは恵美と二人の隊員だった。その目は残忍で軽蔑に満ちていた。

彼女はゆっくりと入ってくると、引き裂かれた着物を南の顔に投げつけた。

「居心地はどう?このボロ布、慰めに持ってきてあげたわ」

南の目から火が出そうだった。彼女は恵美に飛びかかろうとしたが、地面に押さえつけられ動けなかった。

「こんなことをして、剛に知られるのが怖くないの?」

恵美は冷笑し、隊員たちに顎をしゃくった。

「剛さんがあなたを信じるとでも?たとえ今、あなたが彼の前で土下座して訴えても、私を陥れようとしてるとしか思わないわよ。

南さんにたっぷりお世話をしてあげて。状況を理解させてやるのよ」

南は必死に抵抗したが、完全に制圧されていた。

「何をするの?離して!」

拳や蹴りが雨あられと降り注ぎ、南は痛みに体を丸め、苦悶の声を上げた。

恵美の陰湿な視線が、彼女の華奢な足に向けられた。

南の瞳孔が収縮し、嫌な予感が走った。

次の瞬間、重いブーツが彼女のふくらはぎを容赦なく踏みつけた。

骨の砕ける不快な音が、静まり返った反省室に響き渡った。

骨髄まで達する激痛が、瞬時に南の全身を駆け巡る。

彼女は断末魔の悲鳴を上げ、目の前が真っ暗になり、完全に意識を失った。
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