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第3話

Author: 白団子
麻美は横になったまま、電話に出ていた。

だから、入り口で気配がした時には、音を立てずに通話を切って、目を閉じて眠ったふりをしていた。

渉が怒りをあらわにして飛び込んできたが、ベッドに近づくと麻美が目を閉じているのに気づいた。

なんだ、寝言か……

渉は安堵したものの、心のどこかにはわだかまりが残った。夢の中ですら、麻美が自分を愛さないことを許せなかったからだ。

渉は麻美を揺り起こした。「麻美、悪夢でも見てたのか?『愛してない』とか寝言を漏らしてたけど……一体どんな夢を見たんだ?どうして夢の中でそんなに悲しそうに泣いてたんだよ?」

麻美は伏し目がちに言った。「なんでもないわ。ただ聡の夢を見て……聡が夢の中で泣きながら、『どうしてパパとママは愛してくれないの?』って聞いてきたの」

渉の心臓が鋭く痛んだ。彼は麻美を強く抱きしめると、くぐもった声で言った。「麻美、聡の事故は不幸なことだったんだ。お前のせいじゃない。自分を責めるのはやめろ」

間をおいてから、渉は付け加えた。「俺たちはまだ若い。これからも子供は作れる。たくさん作ればいいんだ」

麻美は黙り込んだ。心が冷え切り、もはや涙すらこぼれなかった。

確かに自分は若いし、また産むことはできるだろう。でも、だからなんだというの?聡はもう戻らない。新しい子供が産まれれば、すべてがなかったことになるというの?

今となっては、麻美には渉と言い争う気力すら残っていなかった。彼女は何事もなかったかのように話題を変えた。

「渉、真夜中にここへ何の用?」

渉は一瞬戸惑い、バツが悪そうな顔をした。「麻美、美穗が胃が痛いって言うんだ。お前が作る生姜スープが飲みたいって言っていてな」

麻美は凍りついた。自分は交通事故で足を骨折したばかりなのに、渉は真夜中に自分を起こして美穗の生姜スープを作らせようというのだ。

自分の言葉の無神経さに気づいたのか、渉はすぐに言い直した。「麻美、ベッドから降りなくていい。作り方を教えろ。俺が作ってくるから」

渉は胃が弱く、よく痛めていた。だから麻美は食事療法に関する本を読み漁り、独自のレシピを作り上げたのだ。渉が胃痛を訴えるたび、その生姜スープを作ってあげていた。

実際は、受験勉強で無理をした麻美自身も胃を壊していたのだが、渉がそれに気づいたことは一度もなかった。結婚して5年、彼が麻美のために料理をしたことは一度もなかった。

結局、この結婚生活はずっと、麻美の一方的な片想いだったのだ。

麻美は自嘲気味に笑うと、穏やかに言った。「紙とペンを取ってきて。レシピを書いてあげるわ」

渉は部下に命じて紙とペンを用意させた。

麻美がレシピを書き上げ、渉に手渡した瞬間、彼の心臓がびくりと震えた。

かつて自分がこの生姜スープのレシピを聞いた時、麻美が言った言葉を思い出したからだ。

「私たちが別れたら教えてあげるわ。別れない限り、私が一生あなたのそばにいて、この生姜スープを作ってあげたいもの」

それなのに今、麻美はこれほど簡単にレシピを渡したのだ。

渉は胸が詰まる思いがしたが、離婚の話なんてただの意地悪か冗談だと言い聞かせた。麻美が自分と別れられるはずがないのだ。

「杉本さん、妹さんが胃痛で大騒ぎしています。早く上に様子を見に行ってください」入り口で看護師の声が聞こえると、渉は眉をひそめ、苛立ちまじりに吐き捨てた。

「あいつは本当に手がかかるな!痛けりゃ痛み止めでも飲んどけ。急かすなよ!」

口では悪態をつきながらも、結局渉はすぐに階段を駆け上がり、美穗の元へと消えた。

いつもそうだ。口では冷たく突き放しても、結局行動は常に美穗を優先する。慣れっこだった麻美は、何も言わず、目を閉じた。

ところが、眠りに就いたのも束の間、渉は荒っぽく麻美をベッドから引きずり下ろした。

「麻美!どうして俺がお前のレシピ通りに作った生姜スープを飲んだ途端、美穗が血を吐いて苦しみ出したんだ!」渉は麻美の顎をつかみ、地獄の底から響くような声で詰問した。「レシピの中に毒でも混ぜたのか!」
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