俺は久しぶりの私室でゆっくりと休んだ。両親へ隠す事が無くなったせいか、なんだかこれまで背負っていたものを下ろしたような気持ちだ。心が軽い。そのせいか、睡眠時間は短かったのに、スッキリと目を覚ますことができた。足取りも軽く食堂へいけば……心なしかくたびれた風情のアスカが俺を待ち構えていた。「おはようございます。アスカ様」スッと俺の椅子を引く姿も堂に入ったもの。まさに「できる従者」の趣を醸し出している。一晩で何があったのだろう。ちら、とバースに視線をやれば、とてもいい笑顔でにっこりとほほ笑まれた。……どうやらアスナにとって大変な夜となっていたようだ。「父上、母上。昨日はお騒がせいたしました。アスナを連れて学園に戻ろうと思います」「うむ。分かった。しかし……慌ただしいものだな。もう少しゆっくりしていけばどうだ?お前の成績ならば、数日休んだところで問題あるまい」息子にズル休みを進める父親でいいのか?父上!いや、それくらい俺が両親を寂しがらせていたということか。今まで俺が二人に「ここまで」と決めた距離をあえて侵さずにいてくれた両親。俺がこの世界で腹をくくって生きると決めたから、彼らも俺に遠慮するのをやめたのだろう。「今後は……もっと頻繁に帰るように致しますので」少し照れながら告げれば、母上が嬉しそうにはしゃいだ声を上げた。「ええ、そうなさいな!ランカにも会ってあげて?あの子、あなたがここから通わずに寮に入ったことが今でも納得できないみたい。よければ、あの話をあの子にも聞かせてあげて?あの子ならちゃんと理解できると思うわよ。あなたのタイミングでいいから。あなたの口から話してあげて欲しいの」「分かりました。……ランカは煩いですからね。アスナが落ち着いてからにしましょう。アスナとランカ、両方の面倒を見るのは大変ですから」「うふふふ。そうね。じゃあ、それまでは私たちも内緒にしておくわね?」片目を瞑って「内緒」と人差し指を口の前に当てる母上。可愛らしい母上には、悪戯っぽい仕草が良く似合う。俺の後ろに立つアスナのほうから「あざと!さすがアスカの母上だ」と小さな声。すぐに「イテッ」と悲鳴があがり、振り返ると涙目のアスナが足を庇いながらバースを睨んでいる。睨まれたバースは涼しい顔。「煩いですよ」と、まるで虫けらに向けるような視
レオンがここに来た時に見てはいたが、アスナとしてあたらめてアスカの屋敷に来てみて驚いた。驚くほど空気が澄んでいる。皆気付いていないようだが、アスカの両親が、人間とは思えぬほど清浄な空気を身に纏っているのだ。そのせいもあって、邸自体がまるで聖地のようになってしまっている。通常ならば森など人のいない場所を好む精霊もここに多く集まっていた。ご両親とも精霊に非常に好かれる体質なようだ。彼らがまるで警戒するかのように新参者である俺の様子を伺っているのを感じる。中には二人を守ろうと、高位存在の俺に向かって威嚇するものまでいた。なかなか忠義の厚いやつだ。きまぐれな精霊が多い中で、見どころがある。とりあえず、何かに使えるかもしれん。マーキングしておくか。ひょいッと魔力を飛ばす。「お前を俺の眷属にする。邸に何か異常があれば俺に知らせろ。俺が力を貸してやる」そう伝えれば、抵抗するのをやめ大人しくなった。精霊同士のマウンティングを行い、俺の印をつける。これでこいつは俺の眷属だ。「あんまりいじめてやるなよ?」とアスカが苦笑しながら言った。どうやらアスカにも奴らが見えていたようだ。「いじめるわけないだろ?みんなお前の家族なんだから。大事にしてやるさ」アスカが大切に思っているのなら、俺もアスカの家族を守る。こいつらも大切なアスカの家族。つまり俺の守る対象なのだ。とりあえず怖がらせぬよう少しだけ魔力を張り巡らせ、邸にいる精霊たちに「俺は敵ではない」とあえてアスカとの繋がりを見せてやれば、彼らは安心したようにあちこちに散っていった。アスカの魔力の多さにも非常に納得がいく。元々、両親共に規格外。アスカはその二人の血を受け継ぎ、こんな聖地のようなところに生まれたあげく、多くの精霊の祝福を受けながら育ったのだ。一種の精霊王のような存在になってしまっている。転生チートというよりも、そうなるべくしてそうなった、というほうが正しい。俺に言わせれば、ここは「精霊の愛し子、アスカが主役の世界」だ。それなのにアスカは「悪役に転生した」だと思い込んで、断罪を避ける道をえらびつつも、正しく悪役であることを選んだ。本当はお人好しなくせに、あえて露悪的な言葉を好んで口にするアスカ。断罪を避けたいのなら、悪役をやめて善人ぶって生きる方が簡単だっただろうに。愚直なまでに「悪役で
俺の話を全て聞いた父上は、言われた内容を噛み締めるように、しばらくの間、黙って俺を見つめていた。そして俺にこれだけを言った。「私が聞きたいことはひとつ。ゲームとやらのお前は断罪されると言ったな。ここはそれとは似て異なる世界だと分かったというが……。もうお前に危険はないという解釈でいいのか?」「ようやく分かったわ。あなたが私たちと距離を置いていたのは、あなたが断罪される可能性を心配していたからなのではないの?こうして話をしてくれたということは……もうその心配はないのね?」「……お二人とも、それ以外に聞きたいことはないのですか?そもそも俺の話しを全てそのまま信じると?」「当たり前だろう。疑う理由などないのだから。ああ、どうせお前のことだ、私たちが巻き込まれることを心配してこれまで隠してきたのだろう。言っておくが、無駄なことだ。お前だけをみすみす断罪させるような間抜けな親になるつもりなど、もとよりないのだから。他に何か心配があるのならば話せ。我々は家族なのだから」眉唾物の話だったのに、俺の話したことの一切を、真実だと疑いもしない二人。俺に向けられるその眼差しは、ひたすらに息子の安否を案じるもの。俺が距離を置いていることに気付いていたのか。それでも見守っていてくれたのか。そのうえで、どんな時も俺と共にあると言ってくれるのか。そんな二人だからこそ、俺は怖かった。そう、俺がこの話をするのをためらっていたのは……二人に信じて貰えないと思ったからだけではない。巻き込みたくなかったこともあるが……それ以上に、俺が「本物のアスカではない」と父上と母上に拒否されてしまうのが怖かったからだ。ゲームの世界に本来存在していたはずのアスカの魂を
父上も母上も、俺が普通の子供とは違うことは分かっていたという。「だって、ねえ?あなたは規格外すぎたもの。言葉もそうだけれど……幼児とは思えない落ち着きや、物言いだとかね?」「うむ。なぜか母に懐かずこの私に懐いていたことといい、神童というには余りある逸脱した知力と能力。何かあるのだというほうがしっくりくる。前世の記憶があると聞けば納得がいく」俺からすると、父上と母上も十分規格外なのだが、その両親からしても俺は明らかに規格外だったようだ。「お二人の子だから、ということで誤魔化されてくれているものとばかり……」苦笑すれば、父上が呆れたように片方の眉を上げた。「そこまで愚かだと思うか?我が息子のことなのだぞ?何があるにしろ、お前が私の愛する息子だということは変わらぬ。それでよいと思ったまで」「うふふ。そうね。あなたが何を抱えているにしろ、あなたは私たちの可愛い息子。理由はわからなかったけれど、あなたが幸せで元気でいてくれるのならそれでいいと思ったの」慈しみに満ちた目で俺を見つめるふたりに、何も言えなかった。そうか。両親というものは、そういうものなのか……。俺のありのままを受け入れ、見守ってくれていた両親。改めて知った親の愛というものの深さに、胸が震えた。「俺は……前世では親の愛に恵まれませんでした。両親と姉と俺という家族に生まれましたが、父は仕事のため家を出ており、母と姉は好き放題。金銭的に困ったことはありませんでしたが、幼い頃から俺が家事をやるしかなく、心許せる友をつくる暇もありませんでした」母上が「まあ」とショックを受けたように口元を押さえた。泣きそうな表情で俺に駆け寄ると、そっと俺の背を抱きしめてくれる。「……辛かったわね。なんという親なのかしら!使用人はいなかったの?」
その日は一晩公爵家に泊まり、朝早くまた学園に戻ることになった。寮に戻るつもりだったのだが、父上や母上に「久しぶりに戻ったのだからゆっくりしていけ」と請われたのと、なにより執事のバースが「アスナを従者にするのならば、最低限アスナに教えておかねばならぬことがございます!」と譲らなかったのだ。「さあ、まいりましょうか?あなたは従魔。眠る必要はございませんよね?」「…………お手柔らかに」アスナはドナドナされる仔牛のような表情で、いい笑顔のバースに引きずられていった。せいぜい頑張ってくれ!残された俺は、父上と母上と久しぶりの公爵家の食事に舌鼓を打った。「さあ、これも食べなさい。アスカの好物だろう?」と父上が手づから牛肉を取り分けてくれる。触れたとたんスッとナイフの刃が通り、スルスルと気持ちよく切り取られていく。我が家の肉はとても柔らかいのだ。俺はこれが普通だと思っていたから、学園の肉料理を食べて驚いた。味はともかく、食感がまるでゴムを噛んでいるようだったからだ。とにかく、ウチの味に慣れていた俺にとって食べられたものではなかった。噛んでも噛んでも消えないので、最後は無理やりに吞み下している。公爵家の肉は、口に入れるとほろりとほどけ、噛む必要がないくらいなのに。「ありがとうございます。……ああ、美味い」思わず幸せなため息が漏れた。この味だ。学園のあれば食事ではない。餌だ。これこそが食事というもの!「ああ、久しぶりに満足のいくものを食べた気が致します」と心からの笑みを浮かべる。するとそれを聞きとがめた母上が、心配そうな表情に。「アスカちゃん、学園できちんとお食事している?そんなにひどいの?」「……食べてはおりますよ?機械的に噛み下して飲み込めばいいのです。ここの食事が特別なのです。どこも同じようなものでしょう」そううそぶけば、絶句してしまった。お嬢様育ちの母上にはショックだったようだ。母上と父上が居た頃は、皆がこぞって父上と母上に忖度し、特別席にせっせとシェフに作らせた食事を運ばせていたという。一般の生徒が食べるようなものを食べたことなどないのだろう。俺もそうしようと思えばできなくもない。だが、有象無象に捕まるのも面倒なので、周りを排除し、一番早くできる「本日のメニュー」とやらでさっさと食事を済ませることにしている。ただそ
とってつけたような笑みを浮かべ「勿論でございます、ご主人様」とへりくだって見せるアスナ。一見すれば非のつけようもない従者としての態度なのだが、先ほどのやり取りでアスナの素を知った師匠たちは、それを見て鼻の頭にしわを寄せた。「そうすると礼儀正しい貴族にしか見えないな……。れでいいはずなのに、どこかうさん臭く感じるのは何故だ?」「確かに。今改めて見ると、嘘くささしか感じませんね……」いや、いったいどうしろと?これにはさすがのアスナも苦笑するしかない。「ご主人様の師匠は厳しいですねえ……」師匠は俺の保護者だからな。お前に厳しくなるのは仕方ない。諦めろ。少々打ち解けたところで、本題に入ることにした。「アスナのことはレオンも知っています。実は、アスナをどこで見つけたかというと……レオンに憑いていたのです」「……は?!アスカ、今なんと言った?」「アスカ、憑いていた、ってどういうこと?それって……まさか、レオンハルト殿下に憑りついていた、ということかしら?」こくりと頷く俺。ガクリと父上の顎が落ちた。そこまで隙を見せるなんて珍しい。よほど驚いたようだ。だが……申し訳ないが、まだ先がある。「アスナですが……実は、自分に似てるレオンの身体を乗っ取ろうと思っていたそうで。ですが、思った以上に魔力を消耗していたため、レオンに憑りつきながら徐々に力を取り戻しているところだったのです。レオンもうすうすそれに気づき、内にいるアスナの力が増していることに危機感を抱いた。そこで俺に『呪いを解いて欲しい』と相談をしてきました。俺は貴重な闇の魔力も持っていますから。で、調べてみたらこいつだったのです。俺の傍に居たいだけだとい
「とりあえず、こいつのことは認めてくれたということでいいんだよな?」念のため確認すると、父上もアリアとセリアもしぶしぶ頷いた。母上は……「ねえ。アスナくん?あなたウチのアスカちゃんを追いかけてきたって言ってたわよね?どこから?アスカちゃんとどんな縁があるの?もしかして、愛だったりするのかしら?きゃああああ!素敵ねえ!世界を超える愛だなんて!ロマンチックだわあ!」大丈夫そうだな。違う意味で問題がありそうではあるが……。とりあえず放置していいだろう。俺は改めて皆の顔を見渡した。この部屋にいるのは俺の信頼できる家族と、もう一人の親であり兄姉のような師匠たち、幼い頃から俺を見守ってくれている祖父のような執事のみ。ちょうどアスナが「俺を追いかけてきた」などと口にしたことだし、いい機会だ、話してしまおう。「あー……。アスナと俺について皆に話しておきたいことがあります」「なんでも話してみるがいい。この父がどんな話でも受け止めて見せよう」うん。父上ならそういうと思った。実際にこの両親ならば俺が何をしようと、どんなことをしようと受け止めてくれるはずだ。そう言った意味で、俺は本当に恵まれている。「驚かずに聞いてください。俺にはこの世界に生まれてくる前の、つまり前世の記憶があるのです。前世の俺は、アスナが居たのと同じ世界にいました。俺とアスナは幼馴染の親友だったのです。だが……まあ色々あって俺は死に、この世界に転生してきました。正直、アスナがどうやってここの世界に来たのかはわかりませんが、まあ、そういった訳で俺とアスナには前世の因縁があるのです。こいつに害はありません。安心してください」いきなり前世を持ち出され、さすがの父上も目を見張った。「前世の記憶持ちの話は聞いたことがあるが……アスナと同じ世界とはどういうことなのだ?こことは別の世界から来たというのか?」「そうです。前世の私とアスナはこことは別の世界に生まれ、地球という惑星の日本という国で生きておりました」「地球?日本?……確かに聞いたこともない名だ。…………いや、アスカの言うことを信じないわけではないが……信じがたい話なのでな。頭がついていかぬのだ」さもあらん。俺も前世で誰かにこんなことを言い出されたら同じ反応をしただろう。「アスカの言っていることは真実です。私は、私の元いた世界で飛鳥
「では、場所のご移動を」控えていたバードがスッと出てきて三人を練習場へ誘導する。実は公爵家の練習場は、俺が好きなだけ新しい魔法を試せるようにと、強度な結界を張ってある。折にふれ強化してきたから、三人が存分に戦っても十分耐えうるはずだ。練習場に向かいながら、アスナが俺を振り返り、こう確認してきた。「私はどこまでやってよろしいのでしょうか??」「そうだな……。こちらの世界に渡った時点で、お前もかなりチートなんだよ。魔力は言うまでもないが、お前の身体能力も……恐らく従来の5倍から10倍くらいにはなっていると思うぞ?アリアとセリアの能力は魔力ではなく純粋に身体能力に特化したものだ。だから、ここは公平に……魔法禁止な?その身体を使いこなして見せろ」アスカの片方の眉尻がくいっと上がった。「それは、命令でしょうか?私の能力は主に魔力によるものなのですが……」うん。だからこそだよ。魔力を使えば勝負にすらならないだろう?だから俺は傲然と顎を上げ、ニヤリと笑ってこう言った。「不利な状況で勝ってこそその価値を示せるというもの。命令だ。アスナ、俺のためにその身体能力だけでこの二人を制してみろ!ちなみに、この二人は俺の師匠だからな?強いぞ?」声に出さずに口の動きだけでアスナが言う。「マジか……」それに俺も口の動きだけで返してやる。「俺を守るんだろ?」アリアがフン、と鼻を鳴らした。「主人を守るのが下僕の務め。私たちにも負けるような従魔にいったい何の価値が?」セリアがニコリとほほ笑む。「我らは学園ヘはいけぬ。我々に勝って、己の価値を示せ。アスカ様をお守りできるのだと、証明してみろ」アスナはスッと俺の前で片膝をつき、俺の手を恭しく持ち上げるとその甲にキスを落とした。「我が主人に必ず勝利をささげます」アスナが二人に向き直った途端、アリアとセリアが左右に分かれアスナに襲い掛かった。ひとりは上段、一人は下段を狙い鋭い蹴りを放つ。とっさに上段の蹴りをその腕で受け、後ろにバク転することでその反動を殺すとともに下段の蹴りを避けるアスナ。「ふん、いい判断だ」「ありがとうございます」双方ともまだ余裕の表情。ここから猛攻に次ぐ猛攻。前後左右あらゆる方向から腕や足がアスナを襲う。双子なだけあり打ち合わせてもいないのに、どちらかに目を向ければどちらかが必
慌ててソファに座り居住まいを正すアスナ。なんとかギリギリ体裁が整ったところに、父が飛び込んできた。「アスカ!戻ったか!従魔を連れていると聞いたが、真か?!どのような従魔なのだ?」執事の話を聞いて急いで来たのだろう。珍しく髪を振り乱している。その後ろから母、俺の従者のアリアとセリアが続く。「アーク!少し落ち着きなさいな?おかえりなさい、アスカ」「「坊ちゃま、お帰りなさいませ!」」皆の視線が一斉にアスナに集中した。「……失礼。お客人を連れているとは思わず……」言いかけてふと何かに気付いたように目を見開く父。「いや、それにしては魔力が……。もしや、彼が従魔か?」アスナの魔力に俺の魔力が混じっていることに気付いたのか?さすが父だ。一方、母は「まあ!とてもカッコいいのね!素敵!」と少女のような笑い声をあげた。アリアとセリアは仇敵にあったかのようにギリリと唇を噛み締め、アスナを睨んでいる。俺は「こほん」と咳ばらいを一つ。改めて皆にアスナを紹介した。「あー……、みなに紹介しようと連れて戻りました。彼は俺の従魔、アスナです。高位精霊に近い存在で実体がないため、従魔契約をし、俺とアスナの魔力を注いで器を作りました。この実体はアスナの本来の魂の形に添ったものとなっております」アスナが緊張した面持ちで立ち上がり、正式な礼をとる。「初めまして。アスナと申します。わたくしはアスカ様の忠実なるしもべ。この命ある限りアスカ様にお仕えいたします所存」うん。レオンの中にいるときに学んだのだろうか。文句の付け所のない、綺麗な礼だ。「…………レオンハルト殿下とそっくりではないか。どういうことなのだ?」言われると思った。どうしたって気付くだろう。誰もが同じ疑問を抱いているようで、4対の視線が俺に向けられた。うーん……そう言われても、俺にもわからんのだから説明のしようがない。「あー……。たまたま?」信じて貰えないだろうが、本当にレオンを真似して作ったわけではないのだ。案の定、胡乱な眼差しになる父と母。するとアスナがフォローしてくれた。「どうやら私の姿は、王太子とそっくりの様子。しかしながら、これは私本来の姿なのです。私はアスカ様の魂を追ってこの世界に渡って参りました。その過程で実体は失われてしまいましたが……。アスカ様のおっしゃる通り、殿下と姿が