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豚は豚だ

Author: をち。
last update Last Updated: 2025-06-25 14:15:17

「と、とにかく!ボクが言いたかったのは、侯爵が妖精姫に異常なまでに執着しているということなのです。

どうやら、過去に婚約を申し込んで断られているようなのですが……お母さまから聞いたことはございませんか?」

ふむ。父上のノロケで「マーゴットには多くの輩が惚れていた」だの「私の妻はあらゆる男から憧憬の生刺しを向けられていた」だの「熾烈な争いを勝ち抜いたのが私」だのと聞いたことがある。

そういえば「侯爵家の阿呆が権力にものを言わせ『妖精姫は私のものだ』と戯言を抜かしていたのでな。思い知らせてやった」とも言っていたな……もしやそれか?

一応確認してみると、アスナもエリオットも額に手をあて首を振った。

「絶対それだろ……」

「それですね……どう考えても……」

よし、纏めてみよう。

「つまりは、その豚は恐れ多くも母上に懸想し、母上の実家である伯爵家よりも格上であることから無理矢理に母上を娶ろうと画策してそれを自慢げに吹聴したあげく、実質王国最高権力者に等しい父上にあっけなく返り討ちにされた。

それでも未練がましく母上に執着し、図々しくも父上への逆恨みを一方的に募らせていた。

母上は父上が公爵家にガッツリと囲い込み守っているから手が出せない。そこで学園という治外法権の場にいる私で過去の恨みを発散しようとした、というわけか?」

こうして口にしてみると……

「下らん!実に下らん!

要は自分に魅力がなくクソだったから振られただけだろうが!

父上と豚を並べてみろ!誰だって父上を選ぶだろう!

誰があの豚と結婚したい?身分意外は底辺も底辺。容貌はもとより、人格も下劣極まりない男だぞ?」

吐き捨てるように告げれば、エリオットが「あのー……」と手を上げた。

「一応言っておきますが、学生時代の侯爵は……豚ではな

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  • 悪役令息に転生した俺は、悪役としての花道を行く…はずだったのに話が違うぞ⁈   汚らわしいにも程がある

    単に権力欲におぼれた豚だと思っていたが、想像よりも酷い内容に頭が痛くなりそうだ。そんな俺に、エリオットが申し訳なさそうにおずおずと切り出す。「……あの……非常に申し上げにくいのですが……続きが……」「「まだあるのか?!」」思わずアスナと俺の声が被ってしまった。権力を手にするため、という分かりやすい筋書きが、初恋拗らせ逆恨みストーカーだったというゾッとする事実が分かったのだぞ?母上の私物を集めているだけでゾッとするのに、それよりも言いにくそうに言うこととはなんだ?!「……非常に聞きたくない。少し落ち着かせてくれ」大きく深呼吸をする。この上更に酷い内容だったら、俺は確実に奴を殺る。いっそその方が早いし気持ちがいい。一切の憂いを絶てるし、世の中からゴミも減る。いいことづくめだ。いや、もういいんじゃないか?焼き払えば罪なき者にも被害が出るかもしれないが、直接殺る分には問題ないだろう!と、椅子に座ったままの俺にアスナが後ろから椅子ごと抱き締めてきた。抱き締める、と書くと愛情表現のようにもとれるが、ギリギリギリ、と音のしそうなこれは……「おい!何故俺を拘束する?」「話を聞き前にアスカの身柄を確保しておく方がいい気がする」チッ。勘のいい奴め。無理に解くのは簡単なのだが、俺も話の途中で飛び出さない自信がないのでとりあえずこのまま話を聞こう。「……アスナ様、絶対にアスカ様を放さないでくださいね?あと、アスカ様、これはあくまでも侯爵の行動からボクが推察した話であり、確定ではありませんから。そこだけはご了承ください。それと、ボクはこの件に一切関係ありませんので!!いいですか?ボクは無関係!」必死か!そんなに不味い内容だということか。「いいだろう。お前は無関係だ。では話せ」「あの……その秘密の部屋には、妖精姫様のものが沢山集められていたわけなのですが……」「それは先ほど聞いた」「………その中にアスカ様のコーナーが……」ガタン!!「クソ!アスナ、放せ!というか、お前も来い!焼き払うぞ!放さないのならば、遠隔で……メギ…」「ああああ!!ダメだって!やめろっ!それ隕石落とすヤツだろうが!被害甚大すぎっ!!」渾身の力で口をふさがれた。簡単な魔法ならば無詠唱でいけるのだが、さすがに伝説クラスのメギナとなればそうはいかない。しかし

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    「と、とにかく!ボクが言いたかったのは、侯爵が妖精姫に異常なまでに執着しているということなのです。どうやら、過去に婚約を申し込んで断られているようなのですが……お母さまから聞いたことはございませんか?」ふむ。父上のノロケで「マーゴットには多くの輩が惚れていた」だの「私の妻はあらゆる男から憧憬の生刺しを向けられていた」だの「熾烈な争いを勝ち抜いたのが私」だのと聞いたことがある。そういえば「侯爵家の阿呆が権力にものを言わせ『妖精姫は私のものだ』と戯言を抜かしていたのでな。思い知らせてやった」とも言っていたな……もしやそれか?一応確認してみると、アスナもエリオットも額に手をあて首を振った。「絶対それだろ……」「それですね……どう考えても……」よし、纏めてみよう。「つまりは、その豚は恐れ多くも母上に懸想し、母上の実家である伯爵家よりも格上であることから無理矢理に母上を娶ろうと画策してそれを自慢げに吹聴したあげく、実質王国最高権力者に等しい父上にあっけなく返り討ちにされた。それでも未練がましく母上に執着し、図々しくも父上への逆恨みを一方的に募らせていた。母上は父上が公爵家にガッツリと囲い込み守っているから手が出せない。そこで学園という治外法権の場にいる私で過去の恨みを発散しようとした、というわけか?」こうして口にしてみると……「下らん!実に下らん!要は自分に魅力がなくクソだったから振られただけだろうが!父上と豚を並べてみろ!誰だって父上を選ぶだろう!誰があの豚と結婚したい?身分意外は底辺も底辺。容貌はもとより、人格も下劣極まりない男だぞ?」吐き捨てるように告げれば、エリオットが「あのー……」と手を上げた。「一応言っておきますが、学生時代の侯爵は……豚ではな

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    ここで何を思ったのかエリオットがブルリとその身を震わせた。「ボク、見ちゃったんです」「何を見た?」「侯爵の秘密を。侯爵家には、侯爵様しか入ってはいけないとされる部屋があるのです。そこのカギは侯爵のみがもっていて、誰もその中に何があるのか知らないのです」アスナがコキリと首を慣らした。「ヤバい匂いがプンプンするな」その言葉にエリオットが心底嫌そうな表情をした。「想像以上にヤバいですよ。ボク、あんなに気持ち悪いのを見たのは初めてです」エリオットの語った内容はこういうものだった。無理やり侯爵家の息子として引き取られたエリオット。当然だが侯爵家での扱いは酷いものだった。侯爵が居る時にはいいが、居ない時には正妻から使用人扱い。「まあ、それはまだマシなんです。元々平民なので、家事手伝いは当たり前でしたから。問題はそっちじゃない。ウジ虫のような兄弟の方なのです」正妻の子は二人いて(ちなみに地位をかさに着た素行の悪さで、社交界の鼻つまみ者となっている。それぞれ25歳と23歳だったか?)そいつらに至っては、血のつながりがあるというのにエリオットに欲に満ちた目を向けてくるのだという。正妻が居る時には、皮肉なことに正妻が二人の抑止力となっていた。二人とも両親の前では「良い息子」として振舞っていたから。しかし、二人が居ない時には隙あらばエリオットに手を出そうとする。飲み物に何か入れられ、這う這うの体で自室にカギをかけて閉じ籠ったことまであったそうだ。身の危険を感じたエリオットは、二人に知られない場所を探し、侯爵の秘密の部屋に思い至る。「侯爵しか入れない部屋」というのなら、侯爵不在の際の隠れ家としてちょうどよいのではないか?エリオットは魔法に長けていた。力業に近いアスナとは違い、特に繊細な操作が得意なのだ。そこで秘密の部屋の鍵を魔法で開けてみたのだという。果たしてそれは成功した。「その部屋の中に何があったと思います?……執念です。アスカ様のお母様の肖像画が壁一面に並べられていました。おまけに、恐らくですが、アスカ様のお母様の使用された私物まで……」思わず唾をのみ込む。ゾッとした。寒くもないのに寒気を感じ、思わず腕をさする。「それってストーカーじゃねえか!気持ちわる!」何故か汚いものに触れてしまったかのように手をブルブルと振るアスカ。

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    「さて、これでエリオットの家族の安全は確保された。俺専属使用人であり、護衛であり、俺の剣や体術の師匠でもある双子がリオの家族の保護に向かった。彼等は優秀だ。もう君の家族のことは心配いらぬ」「公爵家の執事も動いた。あの人も……すげえぞ?」ほっとしたようにエリオットから肩の力が抜けた。「…………ありがとうございます。ああ……ようやくボクはボクで動けます」「うむ。これで君の憂いは取り除いた。では、ここから本題に入ろう。侯爵はなぜ私を貶めようとする?私はいわば爆弾。私に害を成したいのならば、自らの死を覚悟する必要がある。身内を王子の婚約者に据え権力をというのならば、もっとリスクの低い方法もあっただろう。そもそも私本人が婚約者であることを厭うているのは周知の事実。ならば、私を懐柔し味方につける方が得策のはず。しかし侯爵はわざわざ寝た子を起こすようなこと、つまり私を貶め、私の評判を傷つけ婚約者の地位から引きずり落とす方法をお前に指示した。どう考えてもリスクが高すぎる道を。その理由を君は知っている、あるいは心あたりがあるのではないか?」そう。引っかかるのはそこだ。ゲームのアスカはレオンにこだわっていた。懐柔の余地などはなく、ああするしかなかったのだろう。しかし、今の俺ははっきり言って「喜んで譲ろう!」という立場だ。そもそも婚約を望んでなどいなかったし、レオンに対して悪印象を払拭した今でも「面倒だ」というほうが勝つ。するとエリオットが真面目な口調でこう問いかけてきた。「その『婚約者の地位を厭っている』のがアスカ様の本心であるとどう証明できます?それがポーズである可能性は?ご自分のお立場を優位にするための駆け引きであるという見方もできます」「はあ?馬鹿にしてんのか?」イラっとした様子を隠さぬアスナを片手で止めて、逆にエリオットに問い返す。「なるほど。それが侯爵の見解というわけか」「ええ」「その問いにはこう答えよう。王子の婚約者?準王族というと聞こえはいいが、要は「籠の鳥」ではないか。たかが『王族』という下らん名ひとつのために、社交だの執務だの面倒なものを背負い込む必要がどこにある?俺を舐めるな。実力、金、地位も名誉も必要なものは既に持っている。必要なものがあれば自ら手に入れる。レオンに与えて貰う必要などない。どうだ?答えに

  • 悪役令息に転生した俺は、悪役としての花道を行く…はずだったのに話が違うぞ⁈   侯爵の過去2

    とりあえずアスナが戻るまではと、茶でも飲んで待つことに。「リオ。茶でも飲むか?」「あ、は、はい!ありがとうございます!頂きます!」「?」飲むことに同意したのに動こうとしないリオに、俺は首を傾げた。もう一度言わねばならないのか?「リオ、茶だ」「?は、はい。頂きます?」……ああ、この部屋の茶葉などの場所が分からないのか。「茶葉はそこの棚の上の段にある。私は今日はダージリンのセカンドフラッシュだ。お前は好きなものを選ぶといい。ポットはコンロの上の棚だ」アスナは初めて来た時にも俺の許可を取ることなく、勝手にあちこちの棚を開けて茶を淹れ出したのだが。さすがにリオはそこまで勝手はできないようだ。それに気づいて指示を与えてやると、目をぱちくりさせてようやく動き出した。「……あ、ああ、ボクが!あはは!そうですよねえ、うん!ボクが淹れるんですよね!はい、直ぐにお淹れ致しますね。ボク、ティーバックでしか淹れたことがないので、上手くできなかったらお許しください」ああ、茶葉で淹れたことがなく戸惑っていたのか。平民の時にはティーバック、養子に入ってからは使用人がしていたのだろう。俺の配慮が足りなかった。「多めに湯を沸かし、先にポットとカップに湯を注いで温めておけ。カップを温めている間に湯を沸かし直し、沸騰したらポットの湯を捨てる。ティースプーンで人数分、プラス一杯の茶葉をポットに入れ、再沸騰させた湯を回し入れろ。蓋をして蒸らして……そこに砂時計があるだろう?その砂が落ちたらカップの湯を捨て、ポットから紅茶を注ぐ。理解したか?」分かりやすく茶葉での茶の入れ方を説明してやれば、慌てたように胸元から手帳を取り出しメモしはじめた。メモを取るのは良いことだ。見込みがある。「あの……アスカ様、お伺いしても?」「許す。なんだ?」「どの茶葉でも方法や蒸らす時間は同じなのですか?」「厳密には同じではない。今教えたのはあくまでも『一般的な淹れ方』に過ぎない。それぞれの茶葉の特性にもよるし、その日の湿度、温度によっても変わる。同じ種類の茶葉であっても、仕入先、収穫年度によっても変わるものなのだ。だがそれは口で教えることはできない。茶を淹れるのが上手いものもいれば、どうしてもできないものもいる。感覚、と言えばいいか?アスナは言わずとも完璧

  • 悪役令息に転生した俺は、悪役としての花道を行く…はずだったのに話が違うぞ⁈   侯爵の過去

    ほとんどのエリオットの話はゲームで知っているものだったが……まさか最初から侯爵を裏切るつもりだったとは。しかも、俺と同じクラスに入り俺に近づくために必死で学んできたというのか?てっきりゲームで俺を推していたファン心理の延長上の好意なのかと思っていたのだが……。エリオットの最大の目的は俺ではない。侯爵への復讐か。大切な母や家族を守るため、この男はひとりで戦ってきたのだ。見た目に反して、反骨精神のあるヤツだ。俺はエリオットを見直した。恋だの愛だのいうよりもよほどいい。つまり俺とエリオットは、俺が一方的にエリオットを利用するだけの間柄、というよりお互いに利用し利用される間柄、というわけか。「分かった。公爵家がお前の母と実家の後ろ盾になろう。潰す、ということは、なにか商売でもやっているのか?」俺の端的な言葉にエリオットの顔が一気に明るくなった。「ありがとうございます!はい、小さな商会を経営しております。織物を中心に扱うオルシス商会という商会なのですが……」「ああ。知っている。小さいが良い品を扱うと聞く」ここで俺は遮音を解き、部屋の窓を開け放った。あえてハキハキと声を張る。「……………アスナ。私は卒業に備え商売を始めようと思っているのだが……」「はいはい。分かってる。『出資先を探しているのですのですか?私のおススメはオルシス商会という商会ですね。小さいながらも、扱う品が非常に素晴らしい。最初の出資先といたしましてはちょうどよいのでは?』」「では、そのように取り計らえ。この私、アスカ・ゴールドウィンがオルシス商会の後ろ盾となることにしよう。出資について話をしたい。

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