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chapter 11

مؤلف: Chiyo potato
last update تاريخ النشر: 2026-10-31 09:37:15
夜は更け、窓の隙間から冷たい風が忍び込む。十六夜薫は布団にくるまり、携帯の光を顔に受けていた。夜更けまで待った末にようやくついた「既読」の二文字は、声のない鞭のように胸を打ち、鈍く痛んだ。同時に、言葉にしがたい喜びも湧いていた。

嵐のアイコンは、ただ一面の青。既読がついたきり、向こうからは何の返事も来ない。

読んだのなら、一言くらい……。いや、こちらが送りすぎたのだ。四通も並べられたら、誰だって返事に困る。

それでも、このまま黙っているのは落ち着かない。

『嵐、こんばんは。何度も送ってしまってすみません。今朝は本当にお世話になりました。できれば直接、きちんとお礼を……』

そこまで打って、十回以上読み返した。やはり堅すぎる気がする。消しては直し、直しては消し、とうとう全部消して、空白の入力欄をぼんやり見つめた。

堅すぎれば、よそよそしいと思われないか。くだけすぎれば、軽薄に見えそうで怖い。

さんざんためらったあげく、ため息をつき、携帯を置いてつぶやいた。

「いいや、明日にしよう」

だが画面を消したとたん、手がまた勝手に携帯を点け、トーク画面を開いてしまう。

『こんばん
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  • 愛した男は、嘘でできていた   chapter 19

    部屋に入るなり、十六夜薫は後ろから抱き上げられ、ベッドに放り出された。 我に返る間もなく、服をすっかり剥ぎ取られる。 「嵐! 何を……」 驚きの声は、伊藤嵐の唇に塞がれた。有無を言わさず、腕の中に閉じこめられる。 薫はとっさに、相手の襟元をつかんだ。 昨夜の疲れもまだ抜けないうちに、ふたたび強引な熱の中へ引きずりこまれていく。 「昨日だけじゃ足りなかった? ちゃんと休ませてあげるつもりだったのにな」 嵐が小声でからかう。頬の小さな黒子に口づけながら、わざと息をつく暇も与えない。 薫は顔をそむけた。言葉が、まともな形にならない。 一度も口にしたことのない恋しさが、いま、すべて相手の前にさらけ出されていた。 「私……あなたに、そばにいてほしい」 手を伸ばして、嵐を引き寄せる。恥ずかしさで、目も上げられなかった。 だが嵐は、すぐには応えなかった。ただ身をかがめ、値踏みするような目で見下ろしてくる。 わざとらしいその間に、薫はますますどうしていいかわからなくなった。 「そんなふうに、からかわないでください……」 シーツを握りしめ、枕に顔を埋める。それでも、相手の視線からは逃げられない。 「そばにいてほしいのは誰? あの悠先生? それとも俺?」 嵐は、乱れきったその姿を上から眺めおろした。朝倉悠は、この部屋に来たことがある。ひょっとすると、このベッドに薫と並んで寝転んだことさえあるかもしれない。そう思うと、体の奥から突き上げてくる凶暴なものを抑えきれなかった。 「嵐です……私は一度だって、悠先生とは……」 必死に弁解しようとしたが、言葉はかえって乱れていく。いわれのない疑いをかけられたのが情けなく、それでも、どうしても信じてほしかった。 その答えを聞いて、嵐はようやく表情をやわらげた。 「いい子だね、薫。俺を見て」 手を伸ばし、前髪をそっと払ってやる。 薫は嵐を見つめた。いつもの慎みは、もうどこにも残っていなかった。 「もう、そんなことは聞かないで……私は、あなたと一緒にいたいだけです」 嵐はあらためて、薫を抱き寄せた。 弁解の言葉は、抱き合ううちに、いつしか途切れて消えていった。 今日は何も着けないよ――耳元で、低い声がそう告げる。 そのまま、すべては嵐の望むままに続いていった。 「このままじゃ……妊娠、してしまい

  • 愛した男は、嘘でできていた   chapter 18

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  • 愛した男は、嘘でできていた   chapter 17

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  • 愛した男は、嘘でできていた   chapter 16

    「……したい……私は、嵐と……」十六夜薫は、浴槽の中で震えていた。水は凍えるほど冷たいのに、薬のせいで、体は少しずつ言うことをきかなくなっていく。ああ……どうして……こんなことに。わずかに残った理性で、口にできない言葉を必死に噛み殺すことしかできなかった。「何がしたいの?」伊藤嵐は、ばたつく両脚を片手で押さえつけると、浴槽の縁越しに耳元へ顔を寄せて笑った。「薫は、ほんとに口が堅いね」その姿を眺めているうちに、さらに意地の悪い考えが胸をよぎった。この人は、自分のためにどこまで譲るのだろう。それを、確かめてみたかった。嵐は薫の肩に手を置いた。掌の下の体は、明らかに熱を帯びすぎている。それでも、手は止めなかった。薬が回ってくる。抗う力はみるみる弱まり、薫は浴槽にもたれて喘ぐことしかできない。ずぶ濡れの服が重く肌に貼りつき、どこにも逃げ場がなかった。「お願いです……やめてください……」力なく懇願しても、嵐はバスブラシを手に取り、耐えがたい辱めを続けた。身をよじって逃れようにも、両手を縛られていて動けない。「薫は、ずっとここにいたいって言ったよね?」嵐は一瞬だけ手を止めたが、引きはしなかった。この責め苦の中から、ほしい答えを何としても引き出そうとするかのように。薫の声が、ふいに砕けた。体の自由を奪われ、屈辱と薬の熱が絡み合って、今にも壊れてしまいそうだった。違う、こんなはずじゃない……。思い描いていたのは、こんなものじゃない。人を愛するとは、こういうことなのか。「嵐……私のこと……好きですか?」力なく水に身を預けて、すすり泣く。目はまだ覆われたままだ。顔をそむけ、暗闇に向かって、すがるように問いかけた。ふいに、二本の腕に抱きすくめられた。水が大きく揺れ、濡れた体が背中にぴたりと寄り添う。「好きだよ……」背後から、かすれた声がした。深い疲れと、ためらいのにじむ声だった。「たぶん……好き、なんだと思う……」この独占欲を、好きと呼んでいいのか。薫の言う「好き」とは、別のものなのではないか。嵐自身にも、確信は持てなかった。薫は呆然とした。胸の奥で大切に抱えてきた期待が、無残に引き裂かれていく。痛みが押し寄せて、息ができない。漏れた吐息は、泣いているようにも、笑っているようにも聞こえた。「そんなに好きじゃないのなら……どうして、

  • 愛した男は、嘘でできていた   chapter 15

    午後、家に帰り着いた十六夜薫は、誰もいない部屋で、ようやくすべての仮面を外した。濃い緑のスーツの上着をクリーニング用の籠に放りこみ、疲れきった体をベッドに投げ出す。嵐とのトーク画面を開いたまま、指先で額を強く押さえた。伊藤嵐の冷ややかな眼差しが、何度も頭によみがえる。冷たくて、突き放すようで、そして、どこか……嫌悪さえにじんでいた。「嵐……」掌に顔を埋める。押し殺した嗚咽は、悔恨のようでもあり、祈りのようでもあった。私が悪いんだ。嵐に心を奪われておきながら、悠先生とあんなに親しくして。どうして、こんなに愚かなのだろう。忠臣は二君に仕えず、貞女は両夫にまみえず。自分は男だが、とうに嵐を恋人だと思っていた。今日の悠とのやりとりを見た嵐は、きっと、誰にでも色目を使う尻軽だと思ったに違いない。恥を知れ、十六夜薫。死んでしまえ。十六夜家の先祖に顔向けできないどころか、嵐まで裏切ったのだ。悔やんでも、悔やみきれなかった。自分を罵りながら、涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにする。芽生えたばかりの恋は、こうしてあっけなく終わってしまったのだ。声を上げて泣いていたそのとき、澄んだ着信音が泣き声を遮った。画面に浮かんだのは、「嵐」の名前。息が急に苦しくなる。嵐だ。跳ね上がる鼓動を押さえつけ、画面の上で指が一瞬ためらう。震える指で応答をなぞったものの、先に口を開く勇気はなく、何を言えばいいのかもわからなかった。しばらく、どちらも黙っていた。気まずい沈黙が流れはじめた頃、受話口の向こうから、気のない声がゆるりと届いた。「薫~。今、時間ある?」その声が穏やかであればあるほど、血のついた棘のように胸に刺さる。薫は黙って涙を流し、ひどい鼻声で答えた。「……大丈夫です。嵐……何か、ご用ですか」「ああ……大したことじゃないんだけど……」嵐は少し間を置いた。その声からは、何の感情も読み取れない。「話したいことがあってね。今から、うちに来られる?」言葉を失った。胸がざわついて、居ても立ってもいられない。責められるのか。それとも、言い訳を聞いてくれるのか。あるいは……別れを告げられるのか。どれでもいい。今すぐ会いたい。「はい、一時間で着きます」ほとんど迷わず、即答した。相手の気が変わるのが怖かった。電話を切ると、すぐに浴室へ駆けこんで身なりを整え、慌ただしく

  • 愛した男は、嘘でできていた   chapter 14

    食堂の扉を押し開けたとたん、伊藤嵐の目に飛びこんできたのは、窓際で品のいい優男と昼食をとっている、彼のお菓子ちゃんの姿だった。ふん、こいつが朝倉悠か。書架越しに、無表情で二人を見やる。その眼差しは、研ぎ澄まされた氷の刃のように冷たかった。十六夜薫の経歴は、すべて調べ上げてある。当然、その糸をたどって、この友人のことも洗ってあった。朝倉悠、二十九歳。十六夜薫の大学の後輩で、二人そろってオスロ大学に招かれた。現在は人文学部で日本思想史を教える講師であり、ユネスコの委員も務めている。この若さで、これだけの肩書きか。確かに、そうそういる男ではない。嵐は、その癪に障る顔を見据えたまま、何食わぬ顔で指を握りこんだ。かつての学友で、志を同じくする仲間。道理で、あれほど話が弾むわけだ……。今朝、薫に電話をかけたとき、話し中だったのも……。あのとき、きっとこの悠先生と話していたのだろう。眼差しが鋭くなる。かつて伊藤彦の殺し屋をしていた頃、耳と目は徹底的に鍛え上げられた。松永晃に片目を奪われた今でも、テーブルのナイフ一本で、悠の心臓を正確に射抜くことができる。ただ、そんなことはしない。少なくとも、今はまだ。「南越財団が今回ノルウェーを選んだのは、東アジア文化交流センターを作るためだそうですね。私は賛成しかねますが、長い目で見れば、悪い話ではないのでしょう」薫は熱いコーヒーをひと口飲み、淡々とそう言った。まるで、自分には関わりのない公務の話でもしているかのようだ。「いい話だけど、厄介でもあるよね……」悠はサーモンをひと切れ切り分け、向かいの薫にちらりと目を上げた。ひどく困ったような口ぶりだった。「特にこの景気だと、プロジェクトをまとめるのは簡単じゃない。午前中にメールが来て、財団の総帥が来週こっちに着くって。うちの学部が受け入れ側だから、これからは嫌でも向こうと一緒に仕事をすることになる……」嵐はブラックコーヒーを頼み、二人の会話に黙って耳を傾けていた。南越財団……。眉がわずかに寄る。思い出したくもない過去が、胸の底でうごめいた。もともと今日ここへ来たのは、薫と偶然を装って出くわすためだった。日々の行動はすっかり把握している。週末になると、薫はいつもひとりでここへ昼食をとりに来るのだ。ところが今日に限って、悠まで一緒にいた。しかも二人は親しげに、自

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