FAZER LOGIN大学受験に失敗して家に引こもるようになってしまった"桃瀬 美幸"(モモセ ヨシユキ)。ヒキニート化してしまった弟を見かねて、芸能プロダクションを営む姉はとあるアイドルグループの世話係を命じる。そのアイドルグループ"LUMINOUS"(ルミナス)は美幸が箱推ししているアイドルグループで、ひとつ屋根の下で彼らと過ごしていくうちに、メンバー達から様々な感情を向けられるようになりー 主人公 桃瀬 美幸(モモセ ヨシユキ) LUMINOUS 赤羽 翔汰(アカバネ ショウタ)オレ様系 青柳 理(アオヤナギ サトル)パワー系 黄田 晴(キダ ハル)王子様系 緑川 澪里(ミドリカワ ミオリ)あざとい系 紫藤 聖(シドウ キヨシ)おっとり系
Ver mais彼らを初めて見たのは高校生の頃。芸能プロダクションを営む姉に、バイトスタッフとして連れられて行ったライブであった。まだ小さな箱ではあったが、ステージ上で歌い踊る彼らはキラキラと輝いて見えた。
「凄い......。キラキラしてる......」
「まだまだ駆け出しだけどね。伸びるわよ、あの子達」
「将来はドーム公演も夢じゃないわ」そう言う姉にオレは小さく頷いた。
「オレ、このグループ好きだな......」
「あら。貴方も見る目があるわね。流石私の弟。あの子達は世の中の"光"になってほしいのよ。だから、"LUMINOUS"と名付けたわ」
「ルミナス......。ラテン語が語源で、英語で"光る"、"輝く"だね」
「よく知ってるじゃない」
姉はそう言うとオレの頭をくしゃりと撫でた。子供の頃から姉はオレを褒める時、こうして頭を撫でる癖があった。オレは恥ずかしくもそんな姉の愛情表現が好きだった。
「そう言えば受験勉強は進んでいるの?」
「ボチボチ、かな?でも模試はA判定だったよ」
「んー!私の弟は頭が良いわね!それになんでも出来ちゃう!お姉ちゃん鼻が高いわぁ!」
「ちょ、抱きつくのはやめてよ!ホラ、LUMINOUSの出番終わったよ?」
オレはドリンクとタオルの入った袋を持って姉と一緒に彼らがステージ袖にやって来るのを待った。そして彼らがステージから下がって来ると、オレは一人一人にドリンクとタオルを手渡していった。
「ありがとうございます。あれ?初めて見る顔ですね?」
「あ?ホントだ。なんだこのちんちくりん」
「ち、ちんちくりん?!」
「こらこら。私の可愛い弟になんてこと言うの」
「社長!......社長の弟さんなんですか?」
「そうよ?こう見えて高校3年生なんだからね!」
「......姉さん。こう見えてって何?初めまして。桃瀬 美幸です」
「よっしーかぁ。オレとタメじゃん」
「こら、聖。そう言ったあだ名は初対面の人にするものではありませんよ?」
......キラキラだ......。王子様が5人もいる。オレはその眩しさに目が眩みそうになった。
「お前髪邪魔じゃね?メガネももっさいし。取れよ」
「あ!ちょっと!」
「翔汰!ウチの美幸に何するの!」
「だってこんなオタク......ぽ、い......」
先程オレを"ちんちくりん"呼ばわりした"翔汰"と呼ばれたメンバーはオレのメガネを奪い前髪を上げると固まった。
「ちょ、社長!なんでコイツこんな勿体ない格好してるんだよ!」
「......ハァ......。この子、子供の頃から変なのに絡まれるから自衛としてわざとこう言う格好しているのよ」
「悪い......。その、美幸」
「いえ、大丈夫です。えっと......」
「翔汰。赤羽 翔汰だ。それでコイツがーー」
翔汰からLUMINOUSのメンバーを紹介してもらい、オレはライブに感動したという思いを伝えた。すると彼らは笑顔で「ありがとう」とお礼を言ってくれた。その眩しい笑顔に、先程のライブの光景が蘇ってきて、オレは決めた。彼らの、"LUMINOUS"の箱推しになろう、と。
聖以外のメンバーは、美幸と聖のキスシーンを見てビックリしたのと同時に、なんだかもやりとしたものを感じた。いちはやく立ち直ったのは理だった。「聖がいいなら、オレがしても......構わないな?」「......え?」そう言うと、理は美幸を壁際に追いやって壁ドンをしてきた。美幸は心の中で「さ、理さんの壁ドンだー!!」と表には出さないではしゃいでいたが、次の瞬間、今度は顎クイをして目線を自分に向けさせた。そして静にキスをしてきた。唇を重ねた後、理は美幸の唇をべろりと舐め、満足げに美幸を抱きしめた。「他の奴には渡したくない......。いいから黙ってオレの物になれ」「さ、理さん?え、冗談......?」「冗談なんて心外だ。はじめて出会った時からお前だけを思っている」......もう頭がパンクしそうだ。この2人に想われるような事をしてきただろうか......?「理さん?オレ、貴方に何か想ってもらえるような事しましたか......?」「覚えてないのも無理がない。あの時はまだ子供だったからな。小学生の時、公園で揶揄われていた所を助けてくれたのはお前だった。その後しばらく公園で会うようになったが、オレの親の転勤で会うことがなくなってしまった」「......もしかして、さっ君?」......覚えている。忘れもしない。急に会えなくなったのを寂しく思っていたのだから。でも、記憶にあるさっ君とは随分と雰囲気が変わっていて気がつかなかった。「お前にまた会いたくて、見つけてほしくてアイドルになった。......でも、お前はオレの事を忘れているようだったし......」「ご、ごめん!!忘れてたわけじゃないんだ!......あまりにも記憶の中のさっ君と別人だったから...。」「それは......お前に見合う男になれるように鍛えたからな」「お前のため」そう言われて喜べないわけがない。最高のファンサだ。「でも、よくオレだって気がついたね?名前だってお互いあだ名で呼んでたのに......」そうだ。美幸は理の事を"さっ君"と呼んで、理は美幸の事を"よっちゃん"と呼んでいたのだ。けれど、理はどうして美幸の事に気がついたのだろうか?あの頃はまだメガネも何していなっかった。だから、謎で仕方がない。「......さっ君はどうしてオレに気づいたの?」そんな疑問に理は満面の笑みを
美幸はウキウキとした面持ちで玄関のドアを開けた。早くデモ曲が聴きたいからだ。重い買い物袋なんて苦に思わない。「ただいまー。聞いたよデモ曲出来た......んだ、よね?」喜々としてリビングに入った美幸を出迎えたのは......暗い雰囲気をまとった五人の姿だった。一体どうしたというのだろうか。「あ、あの......どうかした?デモ曲に何か問題でもあった?」「......問題なんてもんじゃねーよ!完全に社長の趣味だろう?!知ってんだぞ?社長含め女子社員全員が"腐女子"だって!」「......ふじょし?」翔汰が一体何にキレているのかまったく理解が追い付かない美幸だったが、澪里に差し出されたデモ曲の歌詞を見た。なんだ。普通のラブソングじゃないか。「これのどこが問題なの?ふつうのラブソングでしょ?」「普通じゃねーよ!意味を考えて、もう一回!読み直せ!」"結ばれることの許されない僕たち"、"同じじゃなければよかったのに"、"君と手を繋ぐ事すら許されない"...。身分さのあるラブソングの様に聞こえるが......。翔汰の言った"ふじょし"とやらが関係しているのだろう。「翔汰さん、"ふじょし"って何?」「知らなかったんかよ!"腐った女子"で"腐女子"!男同士の恋愛が好きな奴らの事!!」美幸は翔汰からの説明を聞き、眩暈を起こした。まさか喜子にそんな趣味があるなんて。そして......初めての映像作品になるであろうものに、なんていうものをぶつけてくるのだ......。「い、今は多様性の時代だからね!ま、まあそういう曲も悪くはないと思うよ!」「......お前、初の映像で男とキスできるんかよ?」「キ、キス?!」「ない話じゃないからな」と言う翔汰は少しげんなりしていた。その時だった。聖が美幸の元へと歩み寄ってきた。そして無言で見つめてきたかと思うと、美幸の顎をすくいあげた。「き、聖さん?!」「シー。......黙って?」次の瞬間だった。聖の唇が美幸のそれを塞いできた。美幸はもちろん、他の四人も固まって動けなくなり思考回路が停止した。「んン...!アッ聖さん!......ま、待って!!」「んー?もうギブ?可愛いねー」情報量が多すぎる......。え、これを撮影では何度もするってこと?!しかもLUMINOUSと?!ファンに殺されるんじゃ......。
撮影スタジオから外に出て事務所へと向かう。事務所に着くや否や待ち構えていた喜子に「良くやった!」と背中をバシバシと叩かれた。「あのオレ様我儘王子を負かすなんて流石私の弟!いやぁ、黒川君から連絡がきたときはどうかしたのかしらと心配したのに、まさか美幸が自ら志願したって言うじゃないの!一体どういう風の吹き回し?」「......いや、見学してたらなんだかつまらない画だなって思ったのと......」「のと?」「LUMINOUSをバカにされたのが許せなくって!!」やはり美幸は美幸だった。推しがバカにされたのが黙っていられなかったらしい。「......それに、あの高飛車な鼻をへし折ったら面白そうだなって思って」「美幸...貴方黒くなったわね......。そうそう。LUMINOUSの新曲のMVについて明日会議を開くから、主演として貴方も参加して頂戴?」「......モデルは動かなくていいけど、演技ってなると不安が......」あぁ、また気弱さが出てしまう。けれど、喜子はそんな美幸に強い言葉をかけた。「"MIYUKI"。貴方はもうプロよ。大丈夫。カメラの視線を自分の物にする程の実力がある。その役になりきることができるわ。貴方はもう立派な演者よ。自身を持って」喜子の言葉に美幸はハッとする。あぁ、自分は評価されているのか。自分のやってることが"おままごと"になっていなかったのか、と安心することができた。「ありがとう、姉さん。オレ、自信持って挑戦してみるよ」「その勢いよ。うん。いい顔してるわ」「それで......今日皆は?」「今日はデモ曲のデータを渡して終わりよ。今頃家で聞いてるんじゃないかしら?」そうか。皆も前に進んでるんだ。後ろ向きになってる場合ではない。「貴方も帰ったら聞いておいて頂戴?曲の雰囲気を掴んでいたほうが撮影に臨みやすいわよ」それもそうだ。でも一ファンからすると世に出る前のデモ曲を聴くことができるなんて......。と興奮してしまう。美幸は楽しみで仕方なくなっていた。とりあえず、今日の芸能の仕事は終わり。これからの時間は"シェアハウスのお手伝いさん"だ。今日のご飯は何にしようかな。そう考えながら黒川の運転する車に乗り込んだ。
「こちらとしては願ってもない申し出です!話題のMIYUKIさんが出てくれるなら是非!」「......いいですよね?黒川さん。」「ハァ......仕方ありませんね。MIYUKI、思う存分暴れてきてください」そうして急遽撮影に参加する事になった美幸。それに対して面白くないのはGRAYだ。「なんでオレ様が新人と撮らなきゃなんねーんだよ」「ま、まぁまぁ。所詮GRAY君の引き立て役だよ」「フンッ。なら精々いい駒になってもらわねぇとな」美幸がヘアメイクをされている時、黒川の耳に入ってきたGRAYとそのマネージャーの会話である。これは面白い事になりそうだ。せいぜい今だけ可愛く吠えているがいい。黒川はそうほくそ笑んだ。「MIYUKIさん、準備完了でーす!」そうして出てきた美幸に言葉を失ったのはGRAYだけではない。それもそうだ。先程まで気弱そうな青年だったのが、自信に満ち溢れ、隠していた色気を全面に押し出しているのだから。「それじゃあGRAY君。よろしくね?」美幸はそう言うと不敵に笑う。GRAYは思わず見とれていた自分に気がつくと「そんなバカな」と呟く。「それじゃあまず、GRAY君、椅子に座って。MIYUKI君はその足に頭を乗せて目線をこっちに!」カメラマンの指示に従いポーズを次々に決めていく。その場にいる誰もかが息を飲んだ。カメラマンもシャッターを切る手が止まらない。「最後に一輪の花に二人で口づけるように......そう!いいよいいよ!......ハイ!以上で撮影は終わります!」その言葉でようやく皆が息をする事が出来るようになった。「凄いよあの新人......MIYUKI?だっけ?リテイク無しじゃん」「GRAY君も途中から引っ張られてたよね......」撮影が終わったので着替えに入ろうとした美幸だったが、その時、「あの!」と声をかけられた。声の主はGRAYだ。「さっきは生意気言ってすんませんでした。......途中から引っ張ってもらって......助かりました」「少しは役に立てたかな?」「役に立つなんて......!とんでもないっす」「そう?なら良かった。それじゃあ、最後にこれだけ」美幸はそう言うとGRAYにそっと耳打ちした。「今度LUMINOUSをバカにしたら......許さないからね?」