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ローランドの怒り

Author: Kaya
last update Last Updated: 2025-06-26 19:10:00

 「今……アデリナは何してる?」

 怒りのまま、壁際に立つランドルフを問い詰めれば。

 「王妃陛下は体調を崩して、寝込んでおられるそうです。」

 困惑した様子のランドルフ。

 怒りが収まらない。

 「どうせ仮病だろう。」

 あの性悪妻はついに、一大行事を欠席してまで私を貶める気か?

 母国の加護を盾にやりたい放題か。

 本当に許せない……アデリナ!

 ◇

 それ以降、廊下ですれ違えば互いに睨みつけ合う。

 あの日以降真っ直ぐに私を睨むアデリナ。

 腹が立って仕方ない。

 しかも……「フッ」と私を馬鹿にしたように鼻で笑う始末。

 腹立たしい気持ちを抑える努力も忘れ、私はアデリナとは逆方向へズカズカと歩いた。

 「行くぞ、ランドルフ!」

 「は、はい、陛下……」

 何だその目は、その態度は。

 まだ私を貶め足りないのか?

 何がしたい?

 一体あの女は何がしたいんだ?

 「離婚しましょう。」

 あの日の言葉。あの日の真剣な眼差しがあれ以降何度もフラッシュバックする。

 一人の夜。一人の食事。

 政務を邪魔される事も、無理矢理買い物や演劇、オペラに付き合わされる事もない。

 何者にも煩わされない時間。

 穏やかな時間のはずだ。

 性悪妻が私の側にいないのだから。

 まるで私への興味をごっそり失ったみたいに。

 ………私への興味……だと?

 あの女が?いや…あの女は私に興味など。

 ただ便利で金蔓《かねづる》のような私を都合よく使っていただけのはず。

 それ故に私を振り回していたはずだ。

 ……なのに、近頃は本

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