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性格の悪い妻に憑依したので、迷わず離婚します

Author: Kaya
last update Last Updated: 2025-06-16 18:26:30

 確か終戦直前にローランドに破婚されたアデリナは、まだ少年だったヴァレンティンの死を知り、絶望しながら孤独に死んだはず。

 つまり……このままだと私は死ぬ……!!

 そんなの絶っ対嫌だ!!

 地獄の様なバッドエンドを思い出し、一人ガックリと肩を落とすと、侍女がまた物珍し気に私を見つめていた。

 「駄目…駄目だわ。

 いくらアデリナがローランドを愛していたとしても、このままだとあの最低で最悪の結末は避けられない……」

 「あ、アデリナ様……?」

 「ねえ、あなた名前は……?」

 「わ、私ですか?アデリナ様?

 私はアデリナ様付きの侍女で、名前はホイットニーです……」

 「そう。ホイットニー……」

 ああ。確かそんな名前の王妃付きの侍女がいたよね。

 アデリナのお気に入りだっけ?

 「ねえ。聞いて。ホイットニー。

 私、ローランドと離婚したいのよ。

 だけど彼は全く相手にしてくれない。

 …どうしたら別れられると思う?」

 「わ、別れ?ですか?アデリナ様が?

 どうして………こんなにもローランド様を愛しておられるのに?

 それに……いくらローランド様に別れたいと離婚を切り出されても、許可はされないと思われます。

 この国は、アデリナ様の母国であるマレハユガ第三帝国によって加護されています。

 その国の皇女様であったアデリナ様を受け入れるというのが条件で、お二人は成婚なされたのですから…ローランド様がアデリナ様と離婚なされるというのは、現実的にありえません。」

 そうだ。このクブルクという国は周囲を大きな大国に囲まれた小国。

 隙あらば侵略しようと狙う国が多い。

 それを地図上で見ればすぐ真上のアデリナの母国、マレハユガ第三帝国によって守られているのだ。

 ローランドはそのためにアデリナと結婚する選択をした。

 どれだけアデリナの性格が悪くても、ローランドは戦争に発展するまで離婚はしなかった。

 「なるほど……パワーバランスというやつか。

 だとしたら今は、ローランドに何を言っても無駄なのね。」

 「ぱわ…ばら?」

 不思議な言葉だとホイットニーは首を捻る。

 もしも、物語の強制力というやつがこの世界にも存在してるのだとしたら。

 私がこのままローランドに浮気されて、戦争を引き起こしてしまう?

 だとしたら、やっぱり早めに何か手を打たないと、最推しのヴァレンティンまでも失う事に。

 いや………それだけは断固阻止!

 あんなに母親思いの優しいヴァレンティンを失うという、最悪の未来だけは必ず避けなければ……!

 ん………?ちょっと待って。

 「あ……!そうよね!そうよ。

 とにかく私があの男と子供を作らなきゃいいのよ……!!

 今はローランドと離婚の交渉をしつつ、彼に近づかないようにする。そしたら子供もできないでしょ!うん!それに限る!」

 置いてけぼりを食らってるホイットニーには悪いけど、私は自分の両拳をグッと握った。

 アデリナには悪いけど、母親の為に戦争で父親と敵対するヴァレンティンをこの世に生み出さなければいいんだ。

 最推しの心優しきヴァレンティンの死を回避するためにも…………

 要はローランドとや、ヤらなきゃいいのよ!

 これでバッドエンド問題は一つ解決する…!

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     ◇ 「か、体が持たない………」 散々ローランドに求められるのは幸せなんだけれど、とにかく容赦がない。 というより回数と時間が半端ない。何であんなに元気なの?あれが王の資質!? いや、関係ないか。 「ええ?うふふ。アデリナ様ってば。 愛されていて本当にお幸せそうですね。」 今日もホイットニーは可愛くうふふ〜と笑ってティータイムの為のお茶菓子セットを用意してくれている。 「だから言っただろ。 今ベタベタしたら逆効果だって! ローランド王はお前にベタ惚れなんだ。 煽ってどーする」 ブツブツと文句を言いながら、今日もレェーヴは私の向かいの席で焼きたてのクッキーをつまみ食いしている。 「アデリナ様。いくらあの時子供が産まれたら消えると約束したからって、まさか本当に消えるだなんて。 ……全く。陛下には貴方しかいないんですから。 今後は勝手に消えたりしないで下さいね。 分かりましたか?」 その隣でイグナイトが説教を垂れ、チョコレートケーキを上品に味わっている。 明らかに方向性が違う気がする。 もうローランドの事は諦めたのかな? そう言えばイグナイトの持っていたローランドのあの写真集、今度こっそり見せて貰おうかな。 特にNo.6の、ローランドの肉体美のやつ… 「いや、アデリナ様。 もしローランド王と離婚したくなったら、その時はぜひ我がサディーク国へ! 貴方ならば聖女として、皆から大歓迎されるでしょう。」 さらにその隣にはオディロン王太子。 なぜいる? そして—————— 「アデリナ様……ヴァレンティン様、すっごく可愛いです! もし彼が少し大きくなったら、僕が剣術を教えても良いでしょうか?」

  • 愛のために我が子を失った悲劇の王妃に憑依したみたいです。推しの息子と二人で幸せに暮らすため、夫はヒロインに差しあげます!   そして始まるイチャイチャ!馬鹿夫婦と言われて……

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