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愛の減点表、初恋を選ぶ夫を0点で捨てる
愛の減点表、初恋を選ぶ夫を0点で捨てる
مؤلف: ほねちゃん

第1話

مؤلف: ほねちゃん
結婚して3年、佐々木慎也(ささき しんや)は佐々木麻美(あおき あさみ)が付けていた減点表を見つけた。

慎也が書斎の引き出しから何気なくその減点表を取り出したとき、麻美の心臓は止まりそうになった。

そこには、こう書かれていた――

【私の誕生日に、慎也はS国の初恋の人のもとへ行った。マイナス5点】

【慎也が初恋の人を迎えに空港へ行くため、私を高速道路に置き去りにした。マイナス10点】

【初恋の人に料理を作ってやるため、慎也は結婚指輪をなくした。マイナス10点】

……

こうした内容が綴られ、一番下の行には小さくこう書かれていた。

【100点が0になったら、離婚しよう】

しかし、慎也の視線はその紙に留まることはなかった。

彼は一度も目を通すことすらなく、減点表を麻美に突き返した。「ここは大切なものを保管している場所だ。勝手に自分のものを置くな」

だが、本棚には和田莉子(わだ りこ)が学生時代に慎也に贈った本が並び、ガラスケースには莉子の手紙が収められている。さらにデスクの上に置かれている写真立てにも、彼らの高校の卒業記念写真が飾られているのだった。

それらこそが慎也にとっての「大切なもの」なのだ。

彼はそれらを丁寧に扱い、毎日何度も眺めていた。

一方で、麻美のものは全く眼中になかった。

だからこそ、麻美が去ろうとしていることも慎也は知らずにいた。

この時も麻美は緊張しながら減点表を握りしめ、うなずいた。彼女が立ち去ろうとしたその時、慎也のスマホが鳴った。それは彼の友人からの電話だった。

「慎也、大変だ!澄波ヶ丘が火事だ!莉子ちゃんもそこに住んでるだろ?」

その言葉を聞いた瞬間、慎也の顔色が変わり、車の鍵を奪うように取って飛び出した。

一方、慎也の後ろ姿を数秒見つめながら、麻美はタクシーを止めて後を追った。

道中、慎也は赤信号を何度も無視して走り続け、そのスピードはタクシーも追いつかないほどだった。

それから火災現場に着くと、麻美も燃え上がる黒煙を目の当たりにして、言葉を失った。

片や、莉子がまだ助け出されていないと知るや、慎也は死に物狂いで突入しようとした。

だが、消防士や彼の友人が必死に止めた。「これ以上の突入は命に関わります!」

「慎也、冷静になれ!お前のパイロットの夢はどうなるんだ?怪我でもしたら終わりだぞ!」

しかし、そう言われても慎也は彼らを振り切って叫んだ。

「夢なんて知るか!莉子が無事でいてくれるなら、パイロットなんかにならなくてもいい」

こうして、黒煙の中に消えていく慎也の後ろ姿を見て、友人たちは溜息をつき、お互いを責めた。

「教えるなと言っただろ!慎也は莉子ちゃんのことになると何をするかわからないんだ!」

「そうはいっても、莉子ちゃんに何かあると慎也が黙っているわけがないのはお決まりだろ。高校で莉子ちゃんが教師に絡まれた時だって彼は職員室に殴り込んだし、数年前に連絡がつかなかった時だって彼は血眼になって探し回ったじゃないか……」

その話を聞き、麻美はようやく気づいた。冷静沈着な慎也も、愛する人のためにはここまで理性を失うのだなと。

その事実に、彼女の胸の中に言いようのない痛みが広がった。

ほどなくして、友人たちは麻美に気づき、バツの悪そうな表情をした。

「麻美さん……ええと、これはその……慎也は友達を助けに行っただけだから、誤解しないで」

「そうそう!彼は莉子ちゃんと幼馴染で、兄弟みたいなものだからな」

彼らが言い繕っているのを聞きながら、麻美は唇を噛み締めると、口の中には血の味が広がった。どうやらいつの間にか自分の唇を噛み切っていたのだった。

30分後、意識のない莉子を抱えて慎也が出てきた。

慎也の顔は煤だらけで、シャツも焦げていたが、莉子は無傷で守られていた。

莉子を救急隊員に引き渡した瞬間、慎也はその場で意識を失った。

それから、救急車で病院に向かう道中、震える自分の手を見つめながら、麻美は初めて慎也に会った日のことを思い出していた。

あの時彼女はまだ大学2年生。慎也は教授である父・青木翔(あおき しょう)の愛弟子だった。その時彼は凛々しい制服姿で、笑顔が輝いていた。その教壇に立つ姿はまるで眩い光を纏っていたかのようだった。

そんな慎也に麻美は一目惚れして、いつも彼の後ろを追っていた。

彼に惹きつけられた女性は多くいたが、慎也は頑なに誰にも心を許さなかった。

しかし、卒業を目の前にして翔は重病になり、慎也に一人娘の麻美を託したのだった。

慎也もその頼みを承諾した。

葬儀の後、麻美は慎也からプロポーズされた。

その時麻美は言った。「お父さんとの約束で私と結婚してくれたの?そんなことしなくていいのに……」

だが、慎也は答えた。「違う、俺が君と結婚したいと思ったんだ」

それを聞いて、麻美は自分の思いが彼にようやく通じたのだと思った。

だが、ある夜、酔った慎也を迎えに行くために飲み会に駆けつけた時、麻美は彼の友人たちの会話を聞いてしまった。

「麻美さんって本当バカだな。慎也のやつにずっと仄めかされて、尽くしてきたのに、彼の初恋の相手が他の男と結婚しちゃったせいで、彼女を気持ちの拠り所として利用しているとも知らずに」

その瞬間、麻美は凍りついた。

慎也がずっと誰とも付き合わなかったのはクールな性格だからではなく、ただ初恋を忘れられなかっただけなのだ。

彼はずっとその過ぎ去った恋心を頑なに胸に閉じ込めたままにしていた。

かつてプライドの高い彼はその意固地な自尊心を守り、決してその想いを口にしてこなかった。

ただ、初恋の人が振り向くのをずっと待っていた。

だけど、待ち続けた結果が相手の結婚の知らせだった。

この時から、莉子という名前が、麻美の胸に消えない棘として突き刺さった。

それでも慎也が好きで、麻美は諦めきれなかった。

だから、減点表を作り、100点が0になったら立ち去ろうと誓った。

そして、これまで少しずつ、記録を溜めてきた。

たとえば、誕生日に、莉子のインスタを見て慎也が飛び出したこと。

結婚記念日に慎也が莉子と朝まで電話していたこと。

そして莉子が離婚して帰国してからは……

減点の記録もそれによってどんどん増えていった。

そして、麻美の気持ちも、次第に冷え切っていった。

そんな風に思い耽っていたら、処置を終えた医師が出てきた。

「男性の方は広範囲の火傷で痕が残るでしょう。でも女性の方は意識障害だけで無事です。安心してください」

すると友人たちがホッとして言葉を並べた。

「命が助かっただけでも十分ですよ、麻美さん。パイロットになれなくても、佐々木家は家業がありますので生活には困らないはずです。さあ、まず慎也に会いにいきましょう」

それを聞いて、麻美は目を伏せ、込み上げる切なさを隠して言った。

「私、まだ用事があるから、あなた達が先に会ってきてください」

そして家に帰ると、麻美は減点表を手に取った。

そこからまた5点を引くと、残りの点数を見て苦笑いを浮かべた。

あと20点、これでもう残りわずか、いよいよ決着が付きそうだ。
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