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第4話

مؤلف: ほねちゃん
それから、莉子は慎也を案内しながら、店の中をあちこち連れまわした。

「ねえ、覚えてる?中学の頃、私がずっと言ってた夢。自分のお店を開くこと」

「ああ。リゾート風の内装で、壁には印象派の絵を飾って、テーブルや椅子は黒と白に揃えるんだろ?アロマにもこだわって、毎日違う花の香りを漂わせるんだって言ってたよな」

慎也が当時の言葉をひとつも間違えず語るのを聞いて、莉子は言葉を失った。

「どうしてそんなに細かく覚えてるの?それじゃ、あれも覚えてるかな……」

「当然だろ。『お店の株の3割をやるから、慎也がバーテンダーをしてよ』っていうあの約束、それは今でも有効だよね?」

すると、莉子の瞳が喜びで揺れ、恥ずかしそうに頬を赤らめた。

「昔の冗談を、本気にしちゃだめよ。それに慎也、これからは会社を継ぐんでしょ?私の店でバーテンダーなんてさせたら、そんなの恐れ多いわよ」

すると、慎也の表情が一瞬暗くなり、何か言いたそうに唇を動かしたが、やがて黙り込んだ。

一方、そのやり取りをただ見つめていた麻美は、胸の奥に黒い影がどんどん広がっていくかのように、息が詰まりそうになった。

麻美にはわかっていた。慎也の言葉には偽りがないことが。

彼は本当に、いつでもどこでも莉子のそばにいたい、たとえバーテンダーとして、遠くから見つめるだけで十分だと思っているのだ。

かつて失った痛みを知っているからこそ、慎也にとってもう一度手に入れるチャンスをなによりも大切にしたいはず。

こうしている今も、慎也の視線は莉子に釘付けで、一度も振り向くことがなかった。

そんな中、麻美だけが一人、誰にも気づかれることなく、取り残されていた。

個室に入ると、慎也は当たり前のようにメニューに手を伸ばした。

すると隣に座った莉子が、彼が注文した料理を聞いて、わざとらしく口を開いた。

「慎也、どうして私の好物ばっかり頼むのよ?奥さんは何が好き?彼女にも聞いてあげなきゃ」

それを聞いて、慎也は手を止めた。一瞬、麻美に目をやると、平然とした様子でメニューを差し出した。

「君の好みがわからないから、適当に頼んだんだ。食べたいものは自分で頼んでくれ」

そんな慎也の無関心な態度と、莉子の誇らしげな笑みを目の当たりにして、麻美は息が詰まりそうになりながらも、掌に跡が残るほどギュッと強く握りしめた。

もともと慎也はすべてにおいて冷淡な人だとわかっていた。結婚記念日を忘れても、ロマンチックな演出がなくとも、自分の気持ちを気遣ってもらえなくても、すべて我慢できた。

しかし、目の前で莉子への情愛を見せつけられ、それと対照的な自分の扱われ方を比べると、やはりどうしようもない惨めな気持ちがこみ上げてきた。

麻美はメニューを受け取らず、青ざめた顔で立ち上がると、洗面所へ行くと言って部屋を出た。

案の定、莉子が道案内を口実についてきた。そして、連絡先を交換したいと言いながら、莉子はたびたび棘を帯びた言葉を投げかけてきた。

「麻美さん、気を悪くしないでくださいね。慎也とはもう十何年もの付き合いなんです。私の体のことだって、彼は全部わかってくれてるんです。

少し前もね、私の体調を気にして隣の市までわざわざ専門医を探して紹介してくれたのですよ。昔もよく、海外にいる私にクリスマスプレゼントを贈ってくれたりして……」

そんな単なる釈明に見せかけた自慢話に、麻美は胸が押しつぶされそうなほどの苦しさを感じた。

ついに足を止め、莉子に向き直ると、麻美は震える声で尋ねた。

「それで?結局何が言いたいのですか?」

すると、莉子は表情を一変させて、口角に冷ややかな笑みを浮かべた。

「隠す必要なんてないですよね。あなたが彼の奥さんであろうと、慎也にとって私は唯一無二の存在よ。彼は近いうちに必ず私の元へ戻ります。あなたも分別があるなら、自分から身を引くことね。そのほうがお互いうまくいくでしょう?」

確かに莉子の言うことはすべて否定しようのない真実だと、麻美も分かっていた。

だから、麻美は視線を落として一度深く息を吸い込んで、何か言おうとしたその時、頭上のきらびやかなシャンデリアが突如ぐらつき、二人が立つ場所へと一気に崩れ落ちてきた。

その瞬間客たちの悲鳴が響き渡り、店内が瞬時に恐怖で満ちていった。

一方、何が起きたか理解する間もなく、空から降ってくる巨大な黒い影に二人は戦慄した。

そして、シャンデリアの破片が降り注ぐ中、数メートル離れた場所から走り寄った慎也は、真っ先に莉子を引き寄せ、安全な場所へと連れ出した。

だが、取り残された麻美の体は、無残にもシャンデリアの直撃を受け、血の海に倒れ込んだ。

全身を駆け巡る激痛が、脳の神経を容赦なく切り裂いていく。

額を流れる血で視界が真っ赤になる中、薄れゆく意識で麻美が見た光景。それは、取り乱す莉子を守ろうと群がる客たちの中心で、ただ莉子のことだけを気に掛ける慎也の姿だった。

彼はまるで守護者のように寄り添い、店長である莉子をすべての非難やパニックから隠すように守り抜いていた。

どんどん遠ざかる二人の影を最後に、麻美は力尽き、意識が闇の中へと消えていった……

目を覚ますと、麻美は病院のベッドに横たわっていた。

全身を包帯で巻かれ、少し動かすだけでも鋭い痛みが走った。

だが、病室はガランとしていて、誰一人として付き添いがいなかった。

しばらく天井を眺めていた麻美は、痛みをこらえ、テーブルに置かれたカバンから例の減点表を取り出すと、10点の減点を記入した。

ペンの置き所を探していると、指先から滑り落ちた減点表を、ちょうど巡回に訪れた看護師に拾われてしまった。

減点表の内容を一瞥した看護師が、好奇心を隠そうともせず言った。

「これ何ですか?ずいぶん点が減ってますけど……最後はどうなるんですか?」

麻美は小さく視線を動かし、看護師の手から減点表を受け取ると、静かな声で告げた。

「婚姻減点表です。満点から始まって、0点になったらすべてが終わるんです」

「終わるって……離婚ってことですか?あと10点しかないじゃないですか?」

看護師の驚いた声が上がると同時に、病室のドアが力強く開かれた。

眉を寄せた慎也が入ってくると、鋭い眼差しで麻美を見つめた。

「10点って何の話だ?」
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