تسجيل الدخول月城優雅(つきしろ ゆあ)と婚姻届を出す約束をして、七度目にまたすっぽかされた日、俺は彼女との関わりをすべて断つことにした。 俺たちの関係はますます悪くなり、友人同士の集まりに彼女が来るなら、俺は行かない。 彼女が招かれて母校の記念式典に出ると知れば、俺は始まる前に席を立つ。 会社が彼女との提携を決めたときも、俺はすぐに退職届を出して去った。 大晦日、彼女が新年の挨拶に家まで来たときでさえ、友人を訪ねると言って外へ出た。 電話は着信拒否、連絡先も削除。とにかく、きっぱりと縁を切ることにしたのだ。 俺が連絡しなければ、彼女は俺に会うこともできない。 これまでの三十年、俺は人生の大半を彼女に費やし、夢中で愛し、彼女のためなら何でもしてきた。 けれど、婚姻届を出す約束を七度もすっぽかされて、ようやく目が覚めた。 もう、こんな日々を続けたくない。たとえ独りぼっちになったとしても、毎日毎晩、誰もいない部屋で彼女を待ち続けるよりは、ずっと心穏やかでいられる。
عرض المزيدあの日以来、俺は実家へ帰っていた。年末ということもあり、集まりは思った以上に多かった。俺が帰省したと知った同級生たちは、次々と会おうと誘ってきた。それから数日、俺はいくつかの同窓会に顔を出した。最後の同窓会の日、俺は三十分ほど遅れて店に着いた。個室の扉の前まで来たところで、ふいに中から優雅の名前が聞こえた。「優雅、あなたと恒輝って、あの頃はいつも一緒だったよね。幼なじみでもあるし、まだ結婚してないの?」「そうそう。当時は、二人は大学を卒業したらすぐ結婚するんだと思ってたよ」ドアノブにかけていた手が、そこで止まった。中では、優雅がしばらく黙り込んでいた。やがて、口ごもりながら「もうすぐ」「近いうちに」と曖昧に答えた。すると同級生たちは、すぐに冷やかし始めた。俺はその場を離れようとした。そのとき、以前のクラス委員が扉を開け、俺を見るなり、彼は嬉しそうな顔をした。「恒輝、来たんだな。ちょうど今、お前の話をしてたところだよ。しかも今回は、幼なじみの優雅もいるぞ」「彼女がいるなら、やめておく。用事があるから帰るよ」俺はすぐに断り、迷わず背を向けてその場を離れた。ホテルを出ると、背後から慌ただしい足音が聞こえ、俺は通り沿いの路地に身を隠した。優雅が焦った様子で、走ってくる。走りながら、彼女は俺の名前を呼んでいた。「恒輝、出てきて!どうして私から逃げるの!もう三か月も私を避けてるじゃない。どうして会ってくれないの!恒輝、出てきてよ。お願い!」そのとき、たまたま通りかかった男が、俺と同じ色の服を着ていた。優雅は見間違えたのだろう。勢いよく駆け寄り、その通行人に抱きついた。結果、彼女は激しく突き飛ばされ、人だかりに取り囲まれて近所迷惑だと騒ぎ立てられることになった。人だかりが混乱している隙に、俺は路地から出た。優雅のことなど気にも留めず、そのまま家へ帰った。取り囲まれていた優雅は、俺が立ち去る背中を見つけると、また俺の名前を叫び始めた。「恒輝、行かないで!待って!」彼女は俺のほうへ駆け出そうとしたが、人垣に阻まれて、一歩も動けなかった。その後、彼女がどうなったのかは知らない。知りたいとも思わなかった。家に帰ると、母に小言を言われた。帰ってきてから毎日外で集まりに出てばかりで、家で一
案の定、翌朝早く、母からまた電話がかかってきた。優雅の具合がかなり悪いらしい。しかも彼女の両親は仕事で忙しく、付き添いに行けないという。だから、小さい頃から彼女の面倒を見てきた幼なじみの俺に頼むしかない、という話だった。もちろん、俺はその場できっぱり断った。「母さん、余計な心配はしなくていいよ。優雅には彼氏がいるんだから、入院したなら彼氏が看病するだろ。俺が行ったら、かえって迷惑になる。今ちょっと忙しいから、切るね」母の返事も待たずに、俺は電話を切った。これでこの件は終わると思っていた。けれど優雅は、本当に使える人間をすべて使って、俺を自分の前に引きずり出すつもりらしい。母との電話を切ってから、ほどなくして病院から電話がかかってきた。かけてきたのは優雅の主治医で、通話がつながるなり、俺が優雅の家族かどうかを確認してきた。俺は何度も違うと否定し、彼女とは親しくないとまで伝えた。それでも電話の向こうでは、優雅の弱々しい声が、必死に俺へすがっていた。「恒輝、あなただってわかってるのよ。どうして私と親しくないなんて言うの?私たち、もうすぐ婚姻届を出すはずだったじゃない。あなたのせいで、私はこんなに具合が悪くなったのよ。少しくらい心配してくれてもいいでしょう?」そう言ううちに、彼女の声はかすれ、すすり泣き混じりになった。「これから手術なの。せめて一度だけでも会いに来てくれない?もし私が手術中に何かがあったら……」その先は、医師や看護師が優雅をなだめる声にかき消された。ただの小さな手術だ。手術中に死ぬかもしれないなどと騒ぐようなものではない。俺は何も言わず、ただ黙っていた。やがて医師が電話に戻り、家族として同意書に署名してほしいと言った瞬間、俺ははっきり拒否した。「まず、俺は家族ではありません。次に、彼女の手術は俺とは何の関係もありません。最後に、彼女には彼氏がいます。そちらに連絡してください」その言葉は、優雅にも聞こえたらしい。電話の向こうで彼女は取り乱し、諦めきれないように俺の名前を叫んだ。「違う!私の彼氏はあなたよ!この前だって、私たち婚姻届を出しに行くところだったじゃない!恒輝、忘れたの?」忘れるはずがない。七回も弄ばれたことを、どうして忘れられるだろう。俺はそのまま電話を切
ざっと確認すると、電話もメッセージも、ほとんどは親友たちからのものだった。ほかに、見知らぬ番号からの着信もいくつかあったが、メッセージの内容を見ただけで、優雅がどこかから借りてきた番号だとわかった。その番号も着信拒否にしてから、俺はSNSを開いた。画面いっぱいに、未読を示す通知が並んでいた。友人たちの多くが、俺に何かあったのかと心配してくれていた。俺も少し困って、いっそ近況を投稿することにした。【俺は元気です。ただ、過去のある人や出来事とは、もう一切関わらないことにしました】投稿した直後、洋平が真っ先にいいねを押した。そしてすぐに電話をかけてきて、文句を言い始めた。「恒輝、やっと起きたのね。知らないだろう、優雅、もうおかしくなったみたい!」洋平の声は、すっかり疲れ切っており、俺は思わず首をかしげた。だが事情を聞いて、こらえきれずに笑ってしまった。優雅は、俺を知っている友人たち全員に片っ端から連絡していたらしい。それでも俺の居場所がわからなかったため、最後には洋平にしつこく連絡を続けたという。昨夜の深夜から今朝にかけて、ずっと洋平に電話をかけ続けていたらしい。電話に出なければ、今度は直接家まで押しかけて来たという。「恒輝、あの人、本当におかしくなったんだろう?お前はうちにいないって何度も言ってるのに、絶対うちに隠れてるって決めつけて、ドアを開けろって。俺が魔法でも使って、お前をもう一人出せるのかよ!」俺も呆れて笑ってしまった。どうりで、朝から友人たちがこぞって俺に何かあったのかと聞いてきたわけだ。ホテルの部屋はまだチェックアウトせず、その日は様子を見ることにした。昨日の優雅の様子からして、今日も俺のアパートの前で待ち伏せしているに違いない。夜になってから、俺はマンションの警備員に頼んで様子を見てもらった。案の定、優雅はエレベーターの前で待ち構えていた。しかも危うく警備員を俺と間違え、いきなり抱きつきかけたらしい。本当は警備員に、そのまま優雅を追い払ってもらうつもりだった。だが優雅は、そこで情に訴えるという手を使った。あとで警備員から電話が来たときには、逆に俺のほうが説得されてしまった。「相原さん、彼女さんも今回は反省しているみたいですし、一度くらい許してあげてもいいんじゃないですか
優雅の怒鳴り声が聞こえて、俺は思わず階段を上がる足を止めた。ホテルのフロントが、うっかり俺の情報を漏らすのではないかと不安になったのだ。幸い、高級ホテルのフロントとして最低限の対応はきちんとしていた。フロントスタッフは丁寧に断った。「申し訳ございません。お客様の個人情報に関わることですので、お答えできません」ところが、いつもは上品で落ち着いた振る舞いをしている優雅が、その日は珍しく人目もはばからず声を荒らした。普段の冷静さなど、少しも残っていなかった。「個人情報とか、そんなこと言わないで。私は彼の彼女なの。彼がここに泊まっているかどうかを知る権利があるわ」その言葉を聞いて、俺は思わず皮肉な笑みを浮かべた。彼女?なんて、聞き慣れない言葉だろう。彼女どころか、この何年もの間、優雅は俺に一度だって、まともに「好き」と言ってくれたことさえなかった。「お客様でしたら、直接ご本人にお電話でご確認ください。もし当ホテルにご宿泊中でしたら、お部屋番号をお聞きになったうえで、こちらで確認いたします。確認が取れましたら、ご案内いたします」フロントスタッフのきちんとした返答に、優雅はその場で固まった。しばらく呆然としたまま、一言も返せなかった。俺はとっくに彼女の番号を着信拒否にしていた。SNSの連絡先も削除している。彼女が俺に連絡できるはずがない。そのあとのやり取りは聞かず、俺は音を立てないように気をつけながら部屋へ向かった。ベッドに横になったばかりのとき、洋平から電話がかかってきた。彼は興奮した様子で、俺が優雅に何をしたのか、どうしてあんなに焦っているのかと聞いてきた。「知らないだろう。さっき優雅から電話が来たんだけど、声を聞いた瞬間に様子がおかしいってわかったぞ。しかも、恒輝が俺と一緒にいるかどうかまで聞いてきたんだからな。あんな最低な女には、少しくらい痛い目を見せたほうがいいぞ。恒輝、今回は絶対に情に流されちゃいけないんだ!」俺は少し呆れた。まさか彼女が、ここまでしつこくなるとは思わなかった。この何年もの間、彼女が俺にここまで執着したのは初めてだった。俺と連絡が取れないからといって、親友にまで探りを入れるとは。「安心してくれ。今回はもう、戻らない。俺は何もしてないよ。ただ、彼女が俺の