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第2話
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愛はゆっくり消えていく 第27話
彼女が去った後、月島南央はようやく柱の後ろからゆっくりと歩き出した。女性が去っていくのを目の当たりにし、月島の心はまるで刃物で刺されたように痛んだ。彼は本当に彼女を愛していて、彼女を忘れることなんてできなかった。でも、彼女は今、彼を嫌っている。もう会いたくないと言っている。月島は諦めることができなかった。彼は彼女が戻ってくるのを待つことを決意した。この一ヶ月で、月島は多くのことを変えた。ついに清水時佳が帰国し、月島はすぐに空港に向かったが、彼女の姿は見当たらなかった。一ヶ月も会っていなかったので、彼はとても彼女に会いたかった。清水が飛行機を降りた直後、彼女はまず病院に行った。月島はその情報を聞きつけ、車を走らせ病院に向かった。病院に着いたとき、彼は清水時佳と榊原北都が医者のオフィスから出てくるのを見た。榊原は彼女の手を支え、優しく注意していた。「先生が言ってたぞ、これからはそんなにアイスクリームを食べちゃダメだって、わかったか？」「わかってるって！ただ少し多く食べただけだよ、もう」清水は微笑みながら榊原を見上げ、手はお腹に触れていた。「ねえ、赤ちゃんが大きくなったら、パパに似るかな、それとも私に似るかな？」赤ちゃん！この言葉を聞いた瞬間、月島は立ちすくんだ。彼の頭は真っ白になり、思考能力を完全に失ってしまった。たった一ヶ月で、彼女は榊原との間に子供を作っていた！彼はまだチャンスがあると思っていたのに、どうして彼女が他の男と子供まで作ったんだ！彼女は痛みを恐れていなかったのか？早く子供を作らないって言っていなかったか？どうしてこんなことになったんだ？「男の子なら俺に似て、かっこいい！女の子なら時佳に似て、きれいだ！」「自己中心的ね！」清水は手を伸ばし、笑いながら彼の背中を軽く叩いた。「もちろんだよ」榊原は彼女の手を掴み、笑みを浮かべた。二人は幸せで、月島とすれ違ったことすら気づかなかった。清水は今、とても幸せだ。彼女はすでに榊原を愛しており、もう月島のことを考えることはなかった。月島は自分が清水と一緒になる可能性がもうないことを理解していた。彼は清水がかつて言った言葉を思い出した。「南央、もしも将来私たちに赤ちゃんができたら、盛大な花火を上げて、私たちの赤ちゃん
愛はゆっくり消えていく 第26話
「彼女に会わせてくれ、彼女を俺と一緒に家に帰らせろ」「ありえない」榊原北都は携帯を取り出した。「もう行かないなら、警察を呼ぶぞ」「警察を呼べ！呼べ！時佳は絶対に俺が警察署に連れて行かれるのを見過ごすわけがない、絶対にそうだ！」「いいだろう、じゃあ見てろ」榊原はためらうことなく警察を呼んだ。警察が月島南央を引きずりながら連れて行くとき、月島はまだ時佳の名前を叫んでいた。でも、清水時佳は全く聞こえていなかった。彼女は榊原の母親と一緒にソファに座りながらテレビを見ていた。二人はあるドロドロした恋愛ドラマを話題に盛り上がっていた。突然、彼女の携帯が鳴った。警察署からの電話だった。「清水さん、月島南央さんをご存知ですか？彼は酔っ払って騒いでおり、少しお越しいただけませんか？」清水は目を上げ、榊原を見た。榊原が警察を呼んだだろう。「すみません、刑事さん、知りません」彼女は無表情で電話を切り、榊原の母親との会話を続けた。警察署で、月島は清水が自分を見捨てることを信じられなかった。「ありえない、彼女が俺を見捨てるわけがない！彼女を呼んでくれ、会わせてくれ！」以前、彼がトラブルを起こしたとき、最初に心配してくれたのは必ず清水だった。彼が誰かとケンカして警察署に連れて行かれたことがあった。清水は真っ先に現場に駆けつけ、彼が怪我をしているのを見て、涙をぽろぽろと流しながら心配してくれた。彼女は言った、彼のことが心配だと、彼の安全が心配だと、彼女が一番大切に思っているのは自分だと。どうして彼女が自分を見捨てるなんてことがあるだろう？どうして「知らない」と言うんだ？「もういい、月島さん、騒ぐのはやめてくれ。誰もが知ってることだが、清水さんはもう榊原北都将補の妻だ。もうお前とは関係ない。彼女を呼んでも来るわけがない」警察は仕方なく彼を放免した。「もういいだろ、騒ぐのはやめろ。彼女はもうお前に関心がないんだ。どんなに騒いでも、もう意味がない」月島はぼんやりと椅子に座り込み、徐々に心が死んでいくのを感じた。そうだ、彼女はもう結婚していて、もはや自分の彼女ではなかった。どんなに騒いでも、彼女はもう自分を気にかけてはくれなかった。彼は清水時佳を失ってしまった。自分を一番愛してくれたその女の子を失った
愛はゆっくり消えていく 第25話
しかし、彼は自分を抑えて車を薬局の前に停めた。すぐに、彼は薬局から出てきて、助手席のドアを開け、清水時佳の靴下を脱がせた。清水は彼を見ながら理解できない顔をした。「何してるの？」「時佳の足を見る。足を捻挫したんじゃないかと思って、腫れてたら大変だから」「ありがとう」男性の細やかな動きに、清水の心は少し揺れ、下を向いて彼の頬に軽くキスをした。その軽いキスだけで、榊原の顔は耳の後ろまで真っ赤になった。彼はずっと彼女を挑発してきたけれど、実際に彼女にキスされると、やっぱり慌てて手をどうしていいかわからなくなる。彼の可愛い様子を見て、清水は軽く笑った。「まさか、榊原将補も顔を赤くするんだ」「誰が赤くなった？」榊原は彼女の足首を揉んであげながら、清水は小さく声を上げた。「痛っ！」榊原は驚いてすぐに手を放した。「痛いのか？」「痛くない」彼女は首を振ったが、心の中では月島の影が浮かんでいた。以前、足を捻ったとき、月島も薬を買ってきて揉んでくれた。痛みで思わず声を出すと、月島は慌てて手を放し、「痛いか？」と心配してくれた。昔のことが鮮明に思い出されたが、今はすでに物も人も変わってしまった。「彼のことを考えてるのか？」榊原は、清水が簡単に気持ちを切り替えられないことに気づいていた。五年間の感情、簡単に忘れることはできないだろう。「これからはもう彼のことを考えない」清水は榊原の顔を両手で包み込んで言った。「私は北都を愛するよ」男性は笑って言った。「愛さなきゃいけないんだろう、清水さん」「じゃあ、榊原さん、これからよろしくお願いします」「さあ、帰ろう」榊原は車を家に向けて走らせ、その夜、清水は榊原家の人々と一緒に初めて食事をした。皆、清水という嫁がとても気に入っていて、榊原に彼女を大切にし、絶対にいじめないようにと言っていた。「彼女をいじめるられないよ」榊原は笑いながら言った。「むしろ、彼女が俺をいじめるんじゃないかって心配したほうがいい」「時佳はそんなに良い子だもの。彼女があなたをいじめるなら、それを受け入れなさい」「母さん、あまりにも不公平だよ」榊原は不満げに言ったが、口元にはどうしても笑みが浮かんでいた。清水の心は温かくなった。彼女は榊原家の人々との雰
愛はゆっくり消えていく 第24話
この光景を見て、月島南央の胸は怒りで爆発しそうになった。「榊原北都、離して!彼女に触れるな！」彼は二人を引き離そうと駆け寄った。榊原は軽く身を引き、月島はバランスを崩して地面に倒れた。転がりながら、なんとか止まったが、その様子はとても見苦しかった。周りの人々はそれを見て、指さしながら話していた。「自業自得だな、清水さんを裏切っておいて、後悔しても遅いよ」「遅すぎる愛なんて、価値がないんだ!早く気づいていれば、こんなことにはならなかったのにね」榊原は冷ややかな笑みを浮かべながら月島を見た。「月島さん、最後に警告しておく。もう二度と俺と時佳を邪魔するな。彼女は今、俺の妻だ。これからもずっと俺の妻だ。お前が奪うことはできない」月島は辛うじて立ち上がった。「結婚しても離婚できるだろ!榊原北都、調子に乗るな、時佳は俺を愛してる！」「お前の今の行動は俺の妻に困らせてる」榊原は余裕な表情で言った。「それにしても、退院ばかりなのにここまで追いかけて来るなんて、生命力が強いね、ゴキブリか？」清水はその言葉を聞いて、思わず笑い出した。榊原は、本当に毒舌だったな。「時佳、俺に対して、ほんとうに一切の未練はないのか？」月島は榊原と話したくなくて、彼の目線は再び清水に向けられた。彼女が心を変えてくれることを望んでいた。「降ろして」清水はしっかりと地面に足をつけ、深呼吸をした後、冷静に言った。「月島南央、もう一度言うけど、私たちは終わった、完全に終わったの。高橋菫が帰ってきたその日から、あなたがこそこそ空港で彼女を迎えに行った日から、私たちの結婚式を延期して、彼女に膝をついてプロポーズした日から、そしてあなたがバーで彼女と抱き合ったキスしたその瞬間から、私たちの関係は完全に終わったの」月島は信じられない表情で彼女を見た。「全部、知ってたのか？」「うん、全部知ってる」清水は笑って言った。「月島南央、私は本当に幸運だった。五年で一人を見抜くことができたことが、一生を費やすよりも良かった。今、私は榊原北都と結婚した。これからずっと彼の妻として生きる。彼が私を裏切らなければ、私は一生彼だけを愛する」そう言うと、彼女はさらに付け加えた。「高橋菫が好きなんでしょう?彼女と結婚するつもりだったんでしょう?私たちはもう終わった
愛はゆっくり消えていく 第23話
乗馬クラブの空気は新鮮で、周りの景色は広々としており、清水時佳の気分もだいぶ良くなった。「こっちへ」遠くから男性が手を振って彼女を呼んだ。清水は一瞬、目の前がぼんやりとした。そのイケメンの男性は、手足の動きから高貴な雰囲気を漂わせていた。彼は乗馬服を着て、体高の低い馬を手に引いており、口元に笑みを浮かべていた。その姿は周りの若い女性たちをすっかり魅了していた。彼女たちは次々とスマホを取り出し、榊原北都に向かってシャッターを押し続けた。それに、近づいてきて、電話番号を聞いたり、ラインを交換しようとする人もいた。清水は眉をひそめ、すぐに顔色が険しくなった。彼女は急いで歩いて近づき、その女性の手からスマホを取り、番号を入力した。「番号だ」「ありがとう！」その女性は嬉しそうに離れた。榊原は好奇心から尋ねた。「本当に彼女にあげたの？」「うん、あげたよ、私の」清水は眉を上げて言った。「どう?あなたのもあげたい？」「ふふ、やきもち焼いてる？」榊原は清水の反応に満足そうに微笑み、彼女を優しく見つめた。そして、隣にいる馬を指差して言った。「好きか？」「好き」清水は馬のたてがみを撫で、馬も気持ちよさそうに首を揺らした。「名前を付けよう」「ちょっとそれは......」乗馬クラブの馬に勝手に名前をつけていいのか？「俺の馬だよ、時佳にあげる」「本当に？」清水は驚いて言った。「それなら『時流』って名前にしよう、弟みたいな存在にしていい？」「でもあの子、雌馬だよ」「じゃあ妹にしよう」「好きにして」榊原は清水を馬に乗せ、さらに半日かけて教えた。彼女はなんとか乗馬を学び終わった。「楽しい？」「楽しい」「じゃあ、もっと高いのに乗ろう」彼は再び彼女を自分の馬に乗せたが、馬が高すぎて性格も少し荒かった。清水が乗って数歩進んだところで、馬が暴れて彼女は危うく落ちそうになった。「わっ！」彼女は恐怖で叫んだが、榊原は素早く彼女をしっかりと支えた。「大丈夫か？」彼は心配そうに彼女を見守り、清水は顔が赤くなった。「大丈夫、ただ足を少し捻ったみたい」「じゃあ、休ませよう」榊原は彼女を抱えて離れようとしたその時、月島がやってきた。「時佳」月島南央の姿を見た瞬
愛はゆっくり消えていく 第22話
高橋菫が目を覚ました時、彼女はすでに普通の病室に運ばれていた。お腹はすっかり平らになっていて、何も残っていなかった。月島南央の手下は彼女に一枚の銀行カードを渡した。「中には一億円が入ってます。月島さんからのお見舞いです」そのカードを見た高橋は、心の中が冷え切るのを感じた。一億?以前は二千万だったのに、子供を堕ろしてから、彼女の価値は急上昇した。「それと、月島さんが航空券も買ってあげました。今日の午後の便です」「今日の午後？」高橋は冷笑した。月島がここまで彼女を憎んでいるとは思わなかった。手術が終わったばかりなのに、彼は彼女が完全に消えることを望んでいた。「彼に会いたい」「すみませんが、月島さんはお会いしないと言いました」そう言うと、男は病室の扉の鍵をかけ、続けて言った。「時間になったら、空港まで送ります」高橋はそのカードを握りしめ、突然狂ったように笑い出した。けれども、笑っているうちに、涙があふれ出した。「私は戻るべきじゃなかった!戻るべきじゃなかった！」月島は高橋の件を片付けた後、痛みを抱えながら家に帰った。家の中はひっそりとしていて、冷たい空気が漂っていた。清水時佳はいないし、彼女のものはすべて消えていた。月島の胸が痛むと同時に、彼は五周年の記念日にもらった清水のプレゼントを思い出した。急いで階段を駆け上がり、あの箱を見つけた。テープを引き裂き、月島は急いで箱を開けた。しかし中には「ギフト」ではなく、静かに横たわっている結婚式の招待状だけが入っていた。震える手で招待状を開き、月島はその文字を見た。そこにははっきりと書かれていた。10月1日、彼女は結婚する。新郎の名前は彼ではなく、榊原北都だった。月島は招待状を握りしめ、崩れ落ちるように床に座り込んだ。彼女はすでに彼と高橋のことを知っていた。彼女はとっくに自分と結婚しないことを決めていた。それはいつからだったのか？あの日、何の前触れもなく泣き出した日から？彼が頬に二発平手打ちをされた日から？あの日病院で彼女が言った「来月1日、結婚する」という言葉、あれは冗談じゃなかった。本気だった!彼女はすでに決心していた、彼から離れることを！「時佳！」月島の目が徐々に赤くなり、涙が溢れ出した。男
