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第3話

مؤلف: 黄瀬あまね
この凄惨な事実から立ち直る猶予すら与えられないまま、室内から真未の呟くような問いかけが漏れ聞こえてきた。

「詩央里さんが悲しむと思って、ずっと隠してあげてたの?」

京志郎は一瞬、間を置いた。

「まさか。ちょうど洋上風力発電のフェーズ移行で忙しい時期と重なっただけだよ。

詩央里はシステム管理の中核だからな。葬儀のために本土へ帰らせたら、往復で少なく見積もっても半月は穴が空く。

工期が遅れるのはもちろん、戻ってきてから慰めるのも面倒極まりないだろ」

その瞬間、私の心は完全に崩れ去った。

両親が亡くなったことを私に黙ったまま、最後に顔を合わせる機会すら、この男は残酷に奪い去った。

そればかりか、私が悲しむことを案じたわけではない。

ただ私が離れることで、プロジェクトの進捗に支障が出ることを嫌っただけだった。

あの年、私は高額な年俸のオファーを蹴ってまで、家族の猛反対を押し切り、彼と共にこの離島へ来ることを選んだ。

そのせいで両親とは大喧嘩になり、絶縁状態にまで陥ってしまったというのに。

家を出て一年目、母からは何度もメッセージが届いていた。

【詩央里、そっちは寒くない?最近冷え込んできたから、暖かくしてね】

【詩央里、今年のお正月は帰ってこられそう?大好物を作って待ってるから。お父さんとお母さんのこと、もう許してね】

【お父さんは口に出さないけど、本当はすごく会いたがってるよ】

1件、また1件と。

すべてに目を通していたのに、返信しなかった。

あの時はただ意地を張っていただけだった。

返事なんてしなくていいと思い込んでいた。

どうせ京志郎のいる場所が、私の家なのだからと。

その後、メッセージは次第に途絶えた。

いざ両親と連絡を取ろうと自ら電話をかけた時には、すでに使われていない番号となっていた。

長い間連絡を絶っていたせいで、両親が本気で怒り、私を娘として認めるのをやめたのだと思っていた。

それからの長い間、私は落ち込み、誰もいない場所で隠れて涙を流す日々が続いた。

それを見つけた京志郎は私を抱き寄せ、優しい声で慰めてくれた。

「詩央里、ほら、泣かないで。プロジェクトも軌道に乗ってきたし、仕事が落ち着いたら一緒に帰って、ご両親にちゃんと謝ろう。

親子の縁は切れないって言うだろ。何だかんだ言っても実の娘なんだから、きっと分かってくれるよ」

彼の肩に寄りかかりながら、私は心強さと同時に深い罪悪感を抱いていた。

今の仕事が落ち着いたら本土へ帰省して、絶対に親孝行をしようと心に誓っていた。

まさか、両親がすでにこの世を去っていたなどと……

あんなにも愛した男が、人の心すら持たない化け物だっただなんて、思いもしなかった。

私は震える手を伸ばし、ドアノブに手をかけた。

だが、最後の瞬間に力が抜けた。

すべてを悟った今となっては、これ以上何を問い詰める必要があるだろうか。

ましてやドアの向こうにいるのは、この先一生、二度と顔も見たくない人間たちだ。

結局、私はドアノブから手を離した。

スーツケースを引いて、そのままオフィス棟を後にする。

建物の外に出る。

最終バスを逃し途方に暮れていると、背後から不意に名前を呼ばれた。

振り返ると、医務室の看護師、美紗子が立っていた。

私がスーツケースを持っているのを見て、彼女は目を丸くした。

「詩央里さん、どこか行くんですか?」

ひどく掠れた声が口を突いて出る。

「ええ、しばらく休むことにしたの。フェリーも取れたし、少し気晴らししてくるわ」

それを聞いた美紗子は、少し離れたバス停に目をやり、口元をへの字に曲げた。

「今日の最終バスはもう出ちゃいましたよ。フェリーの出航時間、間に合いますか?」

私は諦めの溜息を漏らした。

「そうね、たぶん無理かも。チケットを変更するしかないわ」

そう言うと、美紗子は歩み寄り、私の肩をポンポンと叩いた。

「港町に住んでる私の彼氏が、ちょうど生鮮食品の配達を終えて帰るところなんですよ。今ならまだ駐車場にいるはずだから、ついでに送ってもらいましょうか?」

願ってもないこの幸運を、無下に断るはずがなかった。

十分後。

軽トラックが一台、目の前に停まった。

美紗子の恋人が窓から顔を覗かせる。

「小西主任、早く乗ってください。今から出れば、フェリーの出港に間に合いますよ」

まもなく、便乗させてもらった車は建設拠点のゲートを通り抜けた。

五年間も過ごしたこの場所を静かに見つめる。

去り際だというのに、心にはもう一欠片の未練も残っていなかった。

車窓の外では相変わらず海風が吹き荒れている。

だが頬を撫でる風は、不思議とそれほど冷たくは感じられなかった。

シートに深く背を預け、窓越しに遠ざかっていく拠点の灯りの群れを見つめる。

思わず口角が上がった。

京志郎。

私たちはもう二度と、顔を合わせることはない。

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