第2話

その悲鳴が、私の思考を現実へと引き戻した。

ドアの隙間から、彼女が階段から転げ落ちるのが見えた。

勢いよくドアを開けると、彼女は階段の下で倒れ、苦しそうにお腹を押さえていた。顔色は一瞬で、ありえないほど青ざめている。

人道的な精神から、私は救急車を呼び、一緒に病院へ向かった。

車中、私は彼女のわずかに膨らんだお腹をじっと見つめ、自業自得だと心の中で毒づき、流産して二度と子供を産めなくなればいいと呪った。

慌ただしい中、雄也も駆けつけてきた。彼の表情は複雑だった。

彼はまず私の体をくまなく見て回った。「裕香、大丈夫か？」

私は呆れてしまい、逆に問い返した。

「私が何かあるわけがないでしょう？階段から落ちたのはあの人よ」

雄也はそれを聞いてようやく安堵の息をついた。「無事でよかった。じゃあ、彼女は？命に別状は？」

私は首を振った。言葉を続ける間もなく、そばにいた看護師が近づいてきた。

「久保裕香さんですか？手続きをお願いします」

私はすぐに彼女について行き、書類にサインをすると、急いで病室へ戻った。

ドアの隙間から、雄也がベッドの足元に冷たい表情で立ち、声も冷ややかなのが見えた。

「俺の前で小賢しい真似はするなよ」

紗和子は見透かされると、もはや演じるのもやめたようで、口調は不満でいっぱいだった。

「でも、私、あなたの子供を妊娠してるのよ？」

雄也は私が想像したような動揺を見せず、むしろ顔をさらに険しくした。

「だから何だ？お前が仕組んだんだろう。俺はお前のことなんて愛してない。

よく聞け、裕香の立場を脅かせる者などいない。たとえお前が百人の子供を産んだとしても……無理なんだ！」

紗和子は雄也の冷酷な言葉に、顔を歪ませた。

「あの人に何がいいの？そんなに愛してるの？じゃあ、私の子供はどうなるの？あなたの実の子よ！私たち母子をほったらかしにするつもり？」

その時の雄也は、異様に冷静だった。

「子供？裕香は心優しいから、お前に手を出すことなんてない。それに今は、子供が無事かどうかもわからないんだ」

本来なら私の味方であるはずのこの言葉に、今は微塵も温かさを感じられなかった。

あるのは、骨の髄まで凍るような寒さだけだ。

コップを割ればひびが入る。心が完全に壊れてしまったら、そんなに簡単に元には戻らない。

雄也もよくわかって