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第4話

Auteur: シーシー
「離婚」という二文字は、冷たい水のように海斗の怒りを消し去った。

冷たい風が吹き抜け、彼は歯がガチガチ鳴るほどの寒さに襲われる。

何とも言えない感覚。

胸の痛みと怒りが入り混じっている。

二人は長年一緒に過ごし、最初は蜜のように甘く幸せだったのに、いつの間口論が絶えなくなった。

紆余曲折を経てきたこの数年、二人は互いに心の一線を守り、最後の一歩は越えなかった。

彼が手を上げたのは初めてで、彼女が離婚を口にしたのも初めてだった。

しかし、これが二人の結末であるはずがない。

何しろ、二人は学生時代から結婚まで、無名から事業の成功へと歩んできた。

一緒にトレンド入りし、新聞にも載り、誰もが認める理想の夫婦だ。

たとえどんな不愉快なことがあったとしても、長年積み重ねてきた思い出があるのだから、互いに一歩譲り合えば、まだやり直せるはずだ。

幼なじみで、結ばれた妻。

心美は海斗にとって、やはり特別な存在だ。

そう思うと、海斗は離婚協議書を奪い取り、まだ燃えさかる火の中に放り込む。

「わがままにも限度ってものがある。これ以上つきあう気力はない。

昨日の件は、確かに少しやりすぎた。欲しいものがあれば自分で買え。僕からの償いだ」

海斗はカードを一枚取り出し、心美に手渡す。

心美はそれを受け取らず、視線を優奈に向ける。

彼女が着ているオートクチュールのスーツ、身に着けているジュエリー、そして口に塗った新年限定リップですら。

全て海斗が選んで贈ったものだ。

かつては、海斗も同じように心を込めて心美に接していた。

なのに今、彼は金で昔の愛する人をあしらうだけ。

心美は知っている。海斗は愛する人には常に惜しみなく与えるのだと。これはもしかすると、ここ数年で彼が唯一変わらなかった点かもしれない。

ただ、時が経つにつれて、彼の心の中の人は、もはや心美ではなかった。

しかし心美に必要なのは、海斗の施しなどではない。

彼女が望むのは、六日後、二人が二度と会わなくなること。

だから彼女はカードを受け取らず、海斗を深く見つめた後、ひとり背を向けて去っていった。

黒いコートをまとった心美は、そうして真っ白な雪の中に消えていった。

まるで墨が一滴、水に溶けて跡形もなく消えるように。

海斗の胸はざわつき、無意識に追いかけようとした。

自分でも理由は分からない。

いつの間にか、心美と彼は別々の道を歩み始めていた。

二人はどんどん離れていき、絆は薄れていった。

海斗が考え込む間もなく、優奈が温かい焼き栗の入った袋を抱えて近づいてくる。

「海斗さん、おばさんに会いに行きましょう。焼き栗買ってきましたから、後で剥いてあげますね」

海斗は一瞬、ぼうっとした。

昔の心美が焼き栗が一番好きだったことを思い出した。

でも、目の前の愛らしい優奈と、さっき冷たい顔でわがままを言う心美を思い出すと。

彼は過去の思い出を頭の隅に追いやる。

海斗は笑顔で優奈の頭を撫で、彼女と肩を並べて、別の道へと歩き出す。

雪で道が滑りやすく、心美は転びそうになりながら家まで歩いて帰った。

家の見慣れた光景を見ると、こらえていた涙がとうとう溢れ落ちる。

この家には、彼女と海斗の思い出、そして彼女と母の思い出が詰まっている。

海斗の会社が軌道に乗った後、彼は全額自己資金でこの家を買った。

権利書を手にした彼は感激の涙を浮かべ、心美を抱きしめては泣き、笑った。

「心美、やっとできたよ。ようやく僕たちの家ができた。もうあの借家で暮さなくていい。安心して、これからの生活はどんどん良くなるから、誰も僕たちを引き離せない」

彼は心美の母が起業を助けてくれたことに感謝し、心美の母の体調が優れないと知ると、自ら家に招き、孝行した。

家族水入らずの幸せな日々だった。

でも今、海斗はどれくらい家に帰っていないのだろう?

心美はリビングの家族写真に視線を落とす。

彼女には思い出せなかった。

生活はどんどん豊かになるのに、側にいる人はどんどん減っていく。

最初に「永遠に離れない」と誓った人が、真っ先に心変わりして去っていった。

この大きな家にいた人々は、去り、散り散りになった。今では心美一人だけが取り残された。

広がる夜の闇の中で、より一層孤独さが際立っている。

でも構わない、心美は家族写真に向かってため息をつく。

あと数日もすれば、彼女もここを去り、二度とこの悲しい場所には戻らない。

心美は気を落ち着け、母の遺品と自分の荷物の整理を始める。

母は質素な生活に慣れていたので、彼女のものは多くなく、心美は麻痺したような平静を保っている。

しかし、ソファの隅で、母が編みかけだったセーターを見つけた時、彼女の平静は崩れる。

緻密な編み目、その上には小さく「結城」の文字が刺繍されていた。

しばらく呆然とし、突然、涙が抑えきれずに溢れ落ちる。

意識的に押さえつけてきた多くの思い出が、一気に押し寄せた。

父は早くに亡くなり、母は苦労を重ねて心美を育て上げた。

彼女はすべての典型的な母親のように、自分の人生を子供に捧げた。

彼女は心美を愛し、同じように海斗も愛していた。

小さい頃から、服や靴下、お菓子に至るまで、心美にあるものは、海斗にも必ず同じものがあった。

その後、彼らが起業すると、母は家事をこなしながら、アルバイトをして家計を助けた。

今考えれば、彼女の病気は、少なくとも半分は彼らのために無理をしたせいだった。

様々な感情が、手の中の毛糸のように心美の胸に絡みついた。

少しでも思い出すと、全身が引き裂かれるように痛む。

痛みは彼女の食欲を奪い、眠れなくさせた。

痛みは彼女に恨むことさえもできなくさせた。

心美は自分が、凍り縮んだ生ける屍のようだと感じる。一生分の涙を流し尽くし、もはやこの世の喜怒哀楽を感じることができない。

彼女はぼんやりと二日間を費やし、すべての荷物を整理した。

海斗に関わるものはすべて、ゴミ箱に捨てられた。

母の遺品は、丁寧に保管された。

この間、海斗は一度も帰ってこなかった。

心美は優奈の自慢げなインスタの投稿にも気にかけなかった。

彼女は日程を見ると、あと三日。

海斗に会わないのが一番だ。最後の時を静かに過ごせる。

しかしその日、海斗が疲れ切った様子で帰ってくる。

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