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第18章

Author: ラクオン
布越しにもかかわらず、腰に触れる熱が耐えがたいほどだった。

まるで金縛りにあったように、体が動かない。それでも、頭は冷静だった。

「もう、はっきり話したはずよ。私は、結婚生活に第三者が入り込むのが嫌なの」

「……ごめん」

宏は額を私の背中に押し当て、くぐもった声で謝った。

――心が揺らぐか?

当然、揺らぐに決まっている。

何年もの想いを、一朝一夕で消し去ることなんてできるはずがない。

もう一度だけ、彼にチャンスを与えたい。

けれど――この数ヶ月の出来事が、頭の中で繰り返し再生された。

彼を選ぶか、自分を選ぶか。

私は息を吐き出し、静かに言った。

「宏、あなたはいつも、間違いに気づくけど、結局また同じことを繰り返す。そんなの、何の意味もないわ」

今度こそ、自分を選ぶ。

七年も彼を選び続けた。もう、十分でしょ。

宏は、長い沈黙の後、何も言わなかった。

「手を離して。私たちは、ここまでよ」かつての私は、こんな冷たい言葉を彼に投げかけたなんて、想像すらできなかった。

一方的な恋とは、ただの自己犠牲の祭り。

彼の何気ない視線一つ、ちょっと手招きされただけで、すぐに駆け寄ってしまう。

その度に、幸せを感じて、数日間も浮かれ続けていた。

――まさか、その私が、別れを決意する日が来るなんて。

どうやって帰ってきたのか、自分でもよく覚えていない。海絵マンションに戻った時も、まだぼんやりとしていた。

けれど、つわりのおかげで――

ベッドに横になった瞬間、意識が落ちていった。

余計なことを考える暇すら、与えてもらえなかった。

翌朝、インターホンの音で目が覚めた。

私の新しい住所を知っているのは、来依くらい。

でも、彼女ならパスワードを知っているから、そのまま入ってくるはず。

――きっと、誰かが部屋番号を間違えたんだろう。

私は布団を頭までかぶり、週末くらい自由に寝かせてほしいと願いながら、再び目を閉じた。

しかし、外の訪問者は異様に粘り強く、インターホンを鳴らし続けた。諦める気配がない。

仕方なく、寝起きの不機嫌さを引きずりながら、ドアを開けに行く。

すると――

ドアの前には、宏が立っていた。

長身の影が入口を塞ぎ、黒い瞳がじっと私を見つめた。

「ここに住むつもりか?」

「……他にどこがあるっていうの?」

――昨夜、全部話したはずなのに。

離婚の話を持ち出した以来、彼は、ついに取り繕うのをやめたらしい。今の彼は、冷静でも穏やかでもなく、むしろ無機質なほど淡々としていた。

「……帰るぞ」

それは、まるで命令のような口調だった。

完璧なルックスと相まって、まさに「傲慢な御曹司」の雰囲気をまとっている。

――残念ね。私は、そんな男には興味がないのよ。

「昨夜の話、もう忘れたの?」

「何のことだ?」

彼はまったく悪びれた様子もなく、平然とした顔で言った。

「酔ってたから、何も覚えてない」

「……昨日は、わりとハッキリしてたように見えたけど?」

私は疑わしげに目を細めた。

「さあな。とにかく、断片的にしか覚えてない」

「……もういいわ。別に重要じゃないし」

深く追及する気もなく、私は扉を閉めようとした。

しかし、彼がすかさず片手でドアを押さえた。

「お祖父ちゃんから電話があった。昼食を一緒に食べるって」

「……あっ、そう」

そのことを、すっかり忘れていた。

離婚手続きを済ませて、お祖父様には黙って別々の道を歩もうとしていた。でも、当然ながらお祖父様はそんなこと、許すはずがない。

私はドアを開けたまま、廊下のスリッパを指差した。

「適当に座ってて。20分で準備するから」

そう言い残し、そのまま洗面所へ向かった。

洗顔を済ませ、軽くメイクを整える。

最後に、ベージュのロングワンピースを選び、カーディガンを羽織る。

部屋を出ると、宏はすでにソファに腰掛けていた。彼は勝手にミネラルウォーターのボトルを開け、一口飲みながら、さりげなく話しかけてきた。

「この部屋、なかなかいいな。いつリフォームしたんだ?」

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Comments (4)
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中村佳代子
アナてやっぱり精神病院に行った方がいい(笑)
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佐藤真由美
続きが読みたいかな!
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増倉 育子
宏は一体誰が好きなんだろうな... 2人の女性の間を行ったり来たり...️ 両方の女性が不安になるのは当たり前だよ。
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