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第348話

Author: 楽恩
「うん!」

私は真剣に頷いて言った。「今、鹿兒島に帰るの?」

「うん、あなたが無事だって見ないと、安心できないから」

「先輩、そんな必要ないのに......」

彼は淡々と答えた。「友達なんだから、心配しないでいいの?」

「......」

私はほっと息をつき、感謝の気持ちで笑ったが、それ以上は言わなかった。

「何かあったら、いつでも電話してきてね」

山田時雄はその一言を伝えた後、服部花を見て言った。「服部さん、車で来たの?送っていこうか?」

「私は......」

服部花は目をキラキラさせて、素直に首を振った。「車で来てないよ。運転手に送ってもらったんだけど、後ですぐ帰っちゃった。山田社長、ありがとうございます!」

部屋に戻る途中、河崎来依は私におしゃべりを始めた。

「服部花、山田時雄のことが好きなんじゃない?」

「多分そうだろうね」

私は笑いながら答えた。

服部花はおとなしくて元気な性格だし、山田時雄は優しくて思いやりがあるし、もし彼らが一緒になったら、素晴らしいカップルだろう。

さらに、服部花は家柄も良いし、兄の服部鷹がちょっとやんちゃなところもあるし、山田家も彼女をいじめることはないだろう。

しかし、河崎来依はあまり好ましく思っていない様子だった。「私はあまりうまくいかないと思う。山田時雄は完璧な人だけど、頑固すぎる」

「どういうこと?」

「あなたが言ったように、もう彼とは友達だけど」

河崎来依は眉をひそめた。「でも、彼は本当に手を放したわけじゃないと思う。こんな状態で、服部花が追いかけるのは、遅かれ早かれ自分が苦しむだけだと思う」

私が少し心配そうに見ていると、彼女は続けて言った。「でも、服部花は純粋だけど、服部家の子供だから、バカじゃない。大きな損はしないと思うよ」

......

あと2日で南希年後の仕事が始まるので、私はもう大阪に長くとどまりたくなかった。

河崎来依は3人の奥様たちと午後の予定を組んで、測定に出かけた。

服部家と藤原家の紹介があったので、すべてうまくいった。

最後の家を出た時、私は携帯を取り出し、いくつかの着信があることに気づいた。

着信表示は、服部鷹だった。

その時、私は昨晩寝る前に設定したサイレントモードをそのままにしていて、昼間は忘れていたことに気づいた。午後はずっとお客様のことで
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