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第142話

مؤلف: 結奈々
遥真は眉ひとつ動かさなかった。

感情を抑えきれずにいる彼女を見て、ほんの一瞬だけ、自分の選択が間違っていたのではないかと思った。約束のために柚香との関係を壊してしまうなんて。

しかし、もし自分までその約束を守らなかったら、あのとき両親が言ったことが正しかったということになる。

どれくらい時間が経ったのだろう。

柚香の荒れた感情は、ようやく落ち着いた。

遥真は抱き続けたまま、いつもの穏やかで優しい声で言った。「右の方はまだ噛んでないよ。噛まないと対称にならないだろ?」

柚香の瞳が急に赤く染まり、鼻の奥がツンとした。

――遥真は嫌なやつだ。二人の想いを裏切った。でも同時に、遥真はとても優しい人でもある。自分の気持ちも考え、求めることも理解してくれる。そして、ふたりの「遥真」は切り離せない。どちらも、目の前で自分を抱きしめているこの人なのだ。

遥真は彼女をそっと離し、指の腹で頬の涙を拭った。その動きはとても優しく、まるで珍しい宝石を扱うかのようだ。

以前と変わらず優しく、忍耐強い彼を目の前にして、柚香の胸はさらに苦しくなる。

しかし分かっている。もう二人の関係は戻らない。
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