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第300話

Author: 結奈々
「やってみろよ」遥真の目がすっと冷たくなる。

柚香は唇をわずかに開き、言い返そうとした。

その瞬間、彼は無言の圧を含んだ言葉を投げてきた。「出て行くつもりなら、真帆と怜人に手を出す。俺はもともと、善人じゃない」

「そんなこと、できるわけないでしょ」柚香は気迫で押し返そうとする。

「できるって、君はわかってる」

柚香は両脇に垂らしていた手をぎゅっと握りしめた。怒りで関節が白くなり、爪が手のひらに食い込む。

「君は誰にでも優しくできるくせに」遥真は彼女を見つめたまま、胸の奥が鈍く痛んだ。「俺にだけは、やけに冷たい」

「それは自業自得でしょ」柚香は本気で怒ると、言葉も容赦がない。

「そうだな。俺のせいだ。

でもな、夫婦は一つだ。俺が苦しいなら、君だけ逃げるなんて許さない。京原市は君の家だし、柚苑は君の居場所だ。百年後、土に還る時だって……君は俺と一緒に眠るしかない」

「少しは筋の通ったこと言えないの?」柚香は本気で怖くなった。

もし本当に真帆や怜人を使って脅してきたら、見捨てるなんてできない。

けれど、彼と一緒にいながら別の誰かを気にしているのを見過ごすこともできない
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