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第1255話

Author: 金招き
彼は少しも驕らなかった。

謙虚さを忘れず、隙のない答え方をした。

智昭は、そういうところが気に入っていた。

──軽薄で浮ついた男は、大きなことを成せない。

「なあ、うちの娘のこと、どう思う?」智昭がふと問いかけた。

誠は少し考え、静かに答えた。「……とても、いい人です」

智昭はふっと笑った。「でもな、あの子はちょっとわがままでね」

そう言いながら指した一手で、誠の攻めをかわし、逆に王手をかけた。

誠は一手を誤れば敗北する局面に追い込まれた。

彼は盤面をじっと見つめた。

智昭は顔を上げ、誠を見た。

「うちの娘は、甘やかされて育ったから苦労知らずでな。性格に難はあるが、根は純粋で優しい子なんだ」

誠もそう感じていた。

──両親は仲睦まじく、家庭の空気は穏やかだ。

その中で育った悦奈は、多少気ままではあるが、決して悪意を持つような人間ではない。

きっと、大切に守られてきたからこそ、心の清らかさを失わずにいられるのだ。

「今の世の中じゃ、そういう子は少ないです」

──多くは社会の荒波にもまれ、心まで変わってしまっている。

智昭は深くうなずいた。

「そうだよ。彼女を守りすぎるのも良くない。死んでも彼女のことが心配でならない」

誠は思わず顔を上げた。

智昭はすぐに苦笑し、手を振った。「冗談だ、冗談」

誠は一手を指し、攻めをかわすが、別の駒を失ってしまった。

智昭は盤面を見つめながら、柔らかく言った。「……本当は、いい娘なんだよ」

「ええ。私もそう思います」誠は静かに答えた。

──確かに彼女には大きな欠点はない。

ただ、お互いの立場や環境があまりに違うため、深く考えたことはなかった。

「なら、真剣に考えてみないか?」

誠が顔を上げた。

智昭は意味ありげに笑った。

誠も小さく笑みを返した。

言葉にはしないまま、互いの思惑が確かに通じ合っていた。

智昭は、長年ビジネスの世界で渡り歩いてきた男だった。

娘の浅はかな小細工を、見抜けないはずがなかった。

それでもあえて口には出さなかった。

彼は誠を気に入っていた。

だからこそ、こうして婿としての可能性を示すような言葉を投げかけているのだ。

もし二人がうまくいけば、と願って。

誠は静かに言った。「私は社長のアシスタントとして働いていますが、それだけの存在です。もとも
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