LOGINカレー作りが終わり、夜になった。
キャンプファイヤーの炎がパチパチと音を立てる中、みんなで輪になってカレーを食べていた。
もちろん、俺の隣には――キャンプファイヤーの炎より暑苦しい、いや、情熱的な男・ヒロがいた。
「おい、奏」
「ん?」
ヒロが俺の肩を小突いてくる。
「香織ちゃん、さっきからちょっと落ち込んでる感じだったけど……なんかあった?」
「え? いや、特には。でも、ちょっと元気ないかもな……」
「にしても、このカレーうめぇな」
「特に“香織がといだ米”、最高すぎだろ」
「いや、俺も米担当だし」
「ヒロ、夢を壊すな……」
和やかな笑いがこぼれる中、香織は少し離れた場所で、静かにスプーンを動かしていた。
「はぁ……」
その小さなため息を聞きつけたのは、輪から少し離れた木陰に座っていたあんじゅだった。
「香織、どうしたの?」
あんじゅが声をかける。リーダーとしての気配りが自然とにじみ出る、穏やかな口調。
「……なんでもないよ」
香織はスプーンを止め、俯きがちに答える。
「また、アイドル辞めようとしてたときみたいに、自分で抱え込んでない?」
あんじゅの言葉に、香織はピクリと肩を揺らす。
「……」
火の粉がふわりと宙に舞う。沈黙が、ほんの少しだけ、場の空気を張りつめさせた。
ほのかが怪我をして、奏が救護室に付き添って行った。
私も心配で、少し時間を置いてから向かった。
ドアの前に立つと、中からかすかに話し声が聞こえた。
ほのかの声と――奏の声。
「香織ちゃんじゃなくて、私じゃダメですか?」
その瞬間、息が止まりそうになった。
「それって……推し変してほしいってこと?」
「そ、そうじゃなくて。アイドルとファンじゃなく、1人の女の子として……」
冗談だよね。そう思いたかった。
でも、耳に届く声は真剣だった。
「冗談じゃないです! 奏さんって、オタクとしてもすごいけど……1人の人として、素敵だなって思ってます」
胸がぎゅっと締めつけられた。
ほのかが奏くんを、そんなふうに見ていたなんて――。
私たちはアイドル。
ファンと恋なんて、許されるはずがない。
でも、1人の女の子として見たら、それはきっと自然な感情だ。
……それでも。
なんで、よりによって奏くんなの。
私のファンでいてくれて、どんなときも支えてくれて、あの笑顔で、私の全部を肯定してくれた、あの人を。
胸の奥がざわついた。
これは“推し”としての独占欲。
……そう思おうとした。
でも、違う。
それだけじゃない。
名前のない感情が、胸の中で暴れてる。
――ほのかに奏を取られるなんて、嫌だ。
その想いが喉までこみ上げたけれど、すぐにかき消した。
だって、奏はちゃんと断ってくれていた。
あの誠実な声で、まっすぐに。
なのに、このざわつきは止まらなかった。
ロッジに戻っても落ち着かなくて、私はひとり、バルコニーに出た。
夜風が頬を撫でる。
でも、冷たささえ、もやもやを晴らしてくれなかった。
「香織ちゃん」
ふと声がして、横を向くとほのかが立っていた。
夜風に揺れる髪。
いつもと同じ、やさしい声。
でも、今はその穏やかささえ、少しだけ痛かった。
「さっきから元気ないけど、大丈夫?」
「うん……別に」
嘘だった。 でも、平気なふりなんてすぐに見抜かれる。
「そういえば香織ちゃんのオタクの奏さんって、ほんといい人だよね〜」
どくん、と心臓が跳ねた。
「う、うん……」
「この前の生誕祭、感動しちゃって。あんな全力で想ってくれるファンって、なかなかいないよ。羨ましいなぁ」
「……きっと見つかるよ、ほのかにも」
それは本心。でも口にした瞬間、胸が苦しくなった。
「今日怪我したとき、真っ先に駆けつけてくれたのも奏さんだったんだ〜。やっぱり優しいなって思って」
思い出したくない記憶が、また蘇る。
「実はね、LUMINAに入る前も、奏さんに助けられたことがあるの。偶然だったけど、忘れられなくて……」
――そんな話、聞いてない。
「だから今日、お礼言えてよかったなって。ふふ、香織ちゃんには感謝だね。奏さんと出会わせてくれて」
無邪気な笑顔。
それが、余計に胸に刺さる。
この苦しさの正体が、まだ自分でもわからなかった。
キャンプイベントが終わり、LUMINAは10月の大型フェスに向けて練習を本格化させていた。
あの日の会話が、ずっと胸に残っている。
振り付けに集中できない。何度やっても足がもつれる。
「香織ちゃん、どうしたの? 全然集中できてないよ」
「……すみません」
悔しい。こんな自分じゃなかったのに。
レッスン後、るなが声をかけてくれた。
「香織ちゃん、大丈夫?」
「うん、大丈夫。ただの考えごと」
「香織がこんなふうなの、珍しいから心配になっちゃうよ」
「ありがとう、でも本当に平気」
……嘘だった。でも、今はそれしか言えなかった。
――久々の現場の日。
今日はちゃんと笑顔でいようって決めてた。ファンの前では、いつもの私で。
でも、どこかで表情がこわばってる気がして、ずっと気にしてた。
そのころ、電車でスマホをいじっていた奏。
画面には、香織と撮ったチェキ。
「ふふ……」
「奏、キモッ。なんだそのニヤニヤ」
「うるせぇよ……てかさ、ヒロ。キャンプのとき言ってたろ。香織、マジで元気なかったっぽい」
思い出すのは、チェキ会でのあの一言。
「……奏くん、推し変しないでね」
「何言ってんだよ、俺がどれだけ一途か、伝わってるだろ」
「……変なこと言ってごめん。いつもありがとう」
あのときの香織の笑顔は、ぎこちなかった。
そして迎えた今日のライブ。
最前列、香織の立ち位置。俺は、いつも通り香織だけを見ていた。
――けど。
(……今、振り間違えた?)
一瞬。でも俺にはわかった。
香織の動きに、キレがなかった。
その後、ステージで新しい告知が始まる。
「Noxのみんな〜! 10月の大型フェス、知ってるよね?」
「知ってる〜〜〜!!」
「それに向けて、センター決めの人気投票を開催します!投票締め切りは9月21日23:59、結果発表は9月28日に新宿のライブハウスで発表します。」
どよめきが広がる。
「そして、新しいCDもリリース!1枚につき投票券がついてくるよ〜!」
(人気投票……か)
あのときの香織の言葉が蘇る。
「……奏くん、推し変しないでね」
(大丈夫。俺がどれだけ好きか、見せてやる)
そう拳を握った矢先、通知が鳴る。
《LUMINA 白咲香織 活動休止のお知らせ》
――体調不良のため、しばらくの間、休養に入ることになりました。
「このタイミングで……!」
人気投票で大事なのは、現場でどれだけ名前を呼ばせるかだ。
でも香織は、そこにいない。
……それでも。
俺はあきらめない。
香織を、センターにする。
絶対に。
「ゴホッ、ゴホッ……」「香織ちゃん、大丈夫?」「るい……お見舞い、ありがとう」「親友でしょ。そんなの当たり前だよ」今、LUMINAは大型フェスに向けたセンター&立ち位置を決める人気投票の真っ最中。……そんなタイミングで、私はまさかの夏風邪を引いてしまった。明らかに不利。推しが出ない現場に来るオタクなんて、ほとんどいないのに。「ねえ、香織ちゃん、聞いてる?」「ん? なに?」「いやだから、奏っちがさ……」「え、どうしたの? 奏くんが? ゴホゴホッ」「風邪引いてるのに、大声出しちゃダメ〜!」「いやさ、奏っち。香織ちゃんいないのに、ライブ毎回来てるんだよ」「えっ、奏くんが……?」「こないだ全員握手会もあったんだけど……」そう――とある握手会の日。「うわぁ、香織ちゃんいないのに参加って……まさか浮気?」「ははっ、まさか〜」(でも……奏っち、目が笑ってなかった)「人気投票、今香織休んでるだろ? 俺1人が頑張ってもどうにもならないのかもしれないけど……。香織の悲しい顔、もう見たくないんだ」るいの言葉が、頭の中で繰り返された。(そんなこと……言ってくれる人、他にいないよ……)胸の奥が、熱くなる。嬉しいのか、苦しいのか、自分でもわからなかった。「……って話なんだけど、香織ちゃん、顔すごい赤いけど大丈夫?」「な、なんでもないよ。熱ぶり返したかな」「えっ、じゃあ私、帰ったほうが――」「…&helli
カレー作りが終わり、夜になった。キャンプファイヤーの炎がパチパチと音を立てる中、みんなで輪になってカレーを食べていた。もちろん、俺の隣には――キャンプファイヤーの炎より暑苦しい、いや、情熱的な男・ヒロがいた。「おい、奏」「ん?」ヒロが俺の肩を小突いてくる。「香織ちゃん、さっきからちょっと落ち込んでる感じだったけど……なんかあった?」「え? いや、特には。でも、ちょっと元気ないかもな……」「にしても、このカレーうめぇな」「特に“香織がといだ米”、最高すぎだろ」「いや、俺も米担当だし」「ヒロ、夢を壊すな……」和やかな笑いがこぼれる中、香織は少し離れた場所で、静かにスプーンを動かしていた。「はぁ……」その小さなため息を聞きつけたのは、輪から少し離れた木陰に座っていたあんじゅだった。「香織、どうしたの?」あんじゅが声をかける。リーダーとしての気配りが自然とにじみ出る、穏やかな口調。「……なんでもないよ」香織はスプーンを止め、俯きがちに答える。「また、アイドル辞めようとしてたときみたいに、自分で抱え込んでない?」あんじゅの言葉に、香織はピクリと肩を揺らす。「……」火の粉がふわりと宙に舞う。沈黙が、ほんの少しだけ、場の空気を張りつめさせた。ほのかが怪我をして、奏が救護室に付き添って行った。私も心配で、少し時間を置いてから向かった。ドアの前に立つと、中からかすかに話し声が聞こえた。ほのかの声と――奏の声。「香織ちゃんじゃなくて、私じゃダメですか?」その瞬間、息が止まりそうになった。「それって……推し変してほしいってこと?」「そ、そうじゃなくて。アイドルとファンじゃなく、1人の女の子として……」冗談だよね。そう思いたかった。でも、耳に届く声は真剣だった。「冗談じゃないです! 奏さんって、オタクとしてもすごいけど……1人の人として、素敵だなって思ってます」胸がぎゅっと締めつけられた。ほのかが奏くんを、そんなふうに見ていたなんて――。私たちはアイドル。ファンと恋なんて、許されるはずがない。でも、1人の女の子として見たら、それはきっと自然な感情だ。……それでも。なんで、よりによって奏くんなの。私のファンでいてくれて、どんなときも支えてくれて、あの笑顔で、私の全部を肯定してくれた、あの人を。胸の奥がざわつい
私は、アイドルが大好きだった。小さな頃からテレビの前で踊って、笑っていた。アイドルが歌って、笑って、誰かの心を照らすたび、「私もいつか、あんなふうになりたい」って──ずっと思ってた。夢が大きくなったのは、中学の頃。私も、誰かを笑顔にしたい。その想いは、自分の中で揺るぎないものになっていた。私は幼い頃からクラシックバレエを習っていて、ダンスには少しだけ自信があった。だからきっと、夢を叶えられるはずって信じてた。でも。いざ親に話したときの反応は、あまりにも冷たかった。「アイドル?そんなもの、将来性がないだろ。もっと現実を見なさい」──父の言葉は、まるで冷水みたいだった。それでも私は、諦めきれなかった。誰かの夢を照らす存在に、どうしてもなりたかった。高校に入り、バイトをいくつも掛け持ちした。制服のままコンビニへ直行して、帰るころには日付が変わっていた。自分で貯めたお金で、養成所に通いはじめた。ダンスはずっと得意だったけど、歌はどうしても弱かった。何度もオーディションを受けた。書類で落ちて、一次審査で落ちて、最終審査で落ちて。何度、もう無理かもって思ったか、分からない。でも──“誰かの希望になりたい”という気持ちだけは、誰にも、負けてないと思ってた。とある日の午後、公園の広場で、私はひとりダンスの練習をしていた。何度も何度も、同じ振り付けを繰り返す。バイトを掛け持ちしながら、わずかな時間をぬって練習して。ボーカルトレーニングにも通って。それでも、オーディションにはなかなか受からない。努力は、すぐには報われないってわかってるけど──それでも。足が止まった瞬間、視界がぼやけた。気づけば、涙が頬をつたっていた。
生誕祭のあとも、変わらず香織のオタクとして、LUMINAの現場に通い続けていた。今日はショッピングモールでの外部イベント。イベントの最後には、メンバー全員との握手会が行われることになっていた。香織以外のメンバーには、まだ顔を覚えられていない気がして、ちょっと緊張する。最初に現れたのは、黒髪ロングでスタイル抜群、落ち着いた雰囲気のリーダー・黒瀬あんじゅ。まさに“頼れるお姉さん”という言葉がぴったりだ。「こないだの生誕祭はありがとな」と声をかけると、あんじゅは優しく笑った。「香織のためだし、ヒロくんに頼まれちゃったしね。素敵な生誕祭だったよ。……これからも、香織のことよろしくね」「こちらこそ、香織を支えてやってくれ。あと、ヒロもな」「あら、ヒロくんの扱いが軽くない?」と、くすっと笑う彼女にちょっと救われた気がした。続いて現れたのは、小柄で内気な雰囲気の風花ほのか。ステージ上では力強いダンスを見せる、メインダンサーだ。「こんにちは」と声をかけると、彼女はしばらく黙っていた。戸惑っていると、小さな声で「奏さん……」とつぶやく。「僕のこと知ってくれてたんだ、ありがとう」「そ、それは……」と言いかけた瞬間、スタッフが声を飛ばす。「お時間でーす!」「またね」と手を振ると、彼女は「あ……」と何か言いかけたまま、視線を落とした。次に現れたのは、金髪が目を引く元気な美少女・秋庭るい。LUMINAのメインボーカルだ。「あー!奏っちだー!香織からよく聞いてるよ!」「えっ、まじか。どんな話されてるか気になるな……」「それはヒミツ♪」と、いたずらっぽく笑う。「でもね、香織が言ってたよ。『奏くんって頼りになるオタクなんだよ』って。一緒に香織を支えていこうね、奏っち」「頼りになる……か。う
私は、地下アイドルLUMINAのセンター、白咲香織。昔よく一緒に遊んでいた男の子に、男の子だと勘違いされたのが悔しくて──それがきっかけで、小中学生の頃はモデルをしていた。でも、成長するにつれて需要は減り、仕事も激減。ちょうどその頃、両親が離婚して、私と妹・弟の3人は母に引き取られた。そんなある日、当時所属していたモデル事務所の社長が言った。「知り合いが地下アイドルの事務所を始めるんだけど、やってみないか? 興味があったら連絡してほしい」迷いはあったけれど、新しいことを始めたい気持ちが勝った。アイドルなんて自分にできるのか、わからなかったけど……勇気を出して電話をかけた。初めて事務所に足を運んだ日、社長の隣には一人の女の子がいた。「この子は黒瀬あんじゅ。香織ちゃんと同い年で、グループのリーダーをやってもらおうと思ってる」「香織ちゃん、よろしくね。黒瀬あんじゅです!」──これが、あんじゅとの出会いだった。そのあと、秋庭るい、風花ほのか、南雲つむぎが加入。最初は、観客が数人しかいないような、底辺地下アイドルだった。それでも、がむしゃらにレッスンして、必死で歌って、笑って、時には泣いた。気づけば、仲間と過ごす日々が宝物のようになっていた。そんなある日、ライブ後の特典会で、彼に出会った。「こんにちは。今日はありがとう……初めましてですね、僕は奏です」(あのとき、ずっと私を見てくれてた子……奏くん、なんだか懐かしい雰囲気を持ってる)「こんにちは! 来てくれてありがとう、奏くん!」「香織さんの歌、すごく良かったです。今日、友達に誘われて来たんですが……一目惚れしました」(えっ……そんなこと、初めて言われた……)「嬉しいなあ。そんなふうに言ってもらえると、すごく励みになるよ!」「これからも応援します。無理しないでくださいね」(やさしい……また来てくれたら嬉しいな)「ありがとう、奏くん。あなたの応援が何よりの力になるよ。次のライブも、待ってるね」──そして次のライブにも、彼は来てくれた。「こんにちは、香織さん! また来ちゃいました。あの日のパフォーマンスが忘れられなくて……。それに、“待ってるね”って言ってくれたのが、すごく嬉しくて」(パフォーマンスを褒めてくれて嬉しい。私は努力を見てもらえたんだ……)彼は、ライブのたび
香織の生誕祭が終わり、LUMINAの現場もしばらくお休み。仕事も夏季休暇に入ったので、俺は久しぶりに実家のある八王子へ帰省することにした。同じ都内といっても、帰るのは半年ぶりだ。「母さん、ただいまー」「おかえり奏。ごはん作って待ってたわよ」「ありがと。ちょうど腹減ってたし、助かる。荷物置いて着替えたら食べるわ」「はーい、ゆっくりしていってね」いつもの会話。少し懐かしい、実家の空気。自室がある2階に上がり、押し入れをがさごそと探る。「そういえば、この辺に……あった、あった」引っ張り出したのは、幼少期のアルバムだった。ページをめくると、記憶の中で引っかかっていたあの一枚が目に飛び込んできた。「あー……この子だ。俺のこと“かなくん”って呼んでた……あの“男の子”」手にした写真を持って、リビングに降りる。「ねえ母さん、この男の子って誰だったっけ?」「うん? ああ、この子ね……男の子じゃないのよ。女の子。髪短くて活発だったから、あんたが勘違いしてたのも無理ないけどね」「えっ……じゃあ、名前は?」「うーん……相当昔のことだし、ちょっと待ってね……」「しっかりしてくれよ、母さん」「言うじゃないの。でも、なんで急にこの子のこと思い出したの?」なんて答えようかと考えていると、母がふと思い出したように口を開く。「……あっ、思い出した。香織ちゃんよ。その子。白咲香織ちゃん」(──やっぱり……香織だったのか)「その子がどうかしたの?」「いや、なんでもない。ただの偶然。……せっかく作ってくれたごはん、冷めちゃう前に食べよ。いただきます」食後、久しぶりにのんびりと実家の空気に身を任せていたら、スマホにLINEの通知が入った。──ヒロ:「奏、今なにしてる?」俺:「実家だけど」ヒロ:「じゃあ新宿で飲まね? 八王子だろ? 中央線一本じゃん」(……めんどくせぇ。でも、生誕祭で世話になったしな)俺:「わかった。今から出る。アルタ前18時な」ヒロ:「了解!」────ということで、中央線に揺られて、新宿まで向かうことに。アルタ前で待っていると、「奏ー!」「ヒロ。誘ったくせに来るの遅いな」「すまんすまん。じゃ、いつものとこ行こうぜ」居酒屋までの道中、ヒロの“最近調子いい”っていう自慢話を聞き流しながら、俺の頭の中は、あのアルバムに







