「もう、誰も信じられない――」そう呟いて、俺は幾度も自分の心を閉ざしてきた。過去の恋愛で深く傷つき、女性という存在にさえ距離を置いてしまった。数年ぶりの“現場”。オタク仲間の誘いで足を運んだ地下アイドルグループ「LUMINA」のライブ会場は、薄暗くも活気に満ちていた。ステージのスポットライトに照らされた彼女の姿。白咲香織――歌声は透き通り、ダンスはしなやかで、その目は何かを訴えていた。一瞬で俺の心を鷲掴みにした。こんなにも誰かに惹かれるのは久しぶりだった。そして、終演後の特典会で彼女が見せた優しい笑顔が、俺の壊れかけた心に少しずつ灯をともしていく。「こんにちは、今日はありがとう。…あの、初めましてですね、僕は奏です」香織は明るく応えた。「こんにちは! わあ、初めまして! 来てくれてありがとう、奏くん」僕は少し照れくさそうに言葉を続けた。「香織さんの歌、すごく良かったです。今日、友達に誘われてきたけど、一目惚れしました」彼女は嬉しそうに微笑んだ。「嬉しいなあ、そんなふうに言ってもらえると頑張れるよ!」俺は心の奥が少しだけ温かくなるのを感じた。「これからも応援します。無理しすぎないでね」「ありがとう、奏くん。あなたの応援が、何よりの力になるよ。次のライブも待ってるね。」その優しい対応に、俺の壊れかけていた心が少しずつ救われていった。
Huling Na-update : 2025-08-07 Magbasa pa