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第112話:スランプと支え①

Penulis: 花柳響
last update Terakhir Diperbarui: 2026-01-23 18:01:10

 世界からふいに色が剥がれ落ちていく感覚を、私はこの時初めて知ったような気がする。

 一月の朝のことだった。

 カーテンの隙間から、冬特有の鋭利で白い光が差し込んでいる。暖房の風が唸り声を上げているのに、部屋の空気はちっとも温まらない。私は部屋の隅で、スマートフォンを握りしめたまま、まるで石像になったみたいに動けなくなっていた。

 液晶画面に浮かんでいるのは、たった一通のメールだ。

 件名は『選考結果のご連絡』。

 差出人の欄には、『株式会社アルカディア・ワークス 採用担当』の文字が並んでいる。

 そこは私の夢そのものだった。私が憧れ焦がれ、そして氷室奏くんと一緒に目指そうと誓い合った、第一志望の場所。

『拝啓 月詠栞様

この度は、弊社の新卒採用選考にご応募いただき、誠にありがとうございます。

慎重なる選考の結果、誠に残念ながら今回はご希望に添いかねる結果となりました。

末筆ながら、月詠様の今後のご健闘をお祈り申し上げます』

「……あ」

 喉の奥から、カサついた音が漏れた。

 文字を目で追ってはいるけれど、意味が脳に染み込んでこない。

 嘘だ、と思った。何かの間違いで、システムの誤作動じゃないかと疑って、何度も何度も瞬きをして読み返した。

 けれど、無機質な明朝体の文字配列はびくともしない。

『残念ながら』。

 そのたった五文字が、私という人間の全てを否定していた。

「……落ち、た」

 事実を口に乗せた瞬間、心臓を氷のように冷たい手でぎりぎりと握り潰されるような痛みが走った。滑り止めの企業が全滅した時とは比べ物にならない。魂をごっそりと削り取られるような、底の抜けた喪失感。

 あんなに頑張ったのに。

 あの文化祭の「執事喫茶」の時のように、自分の持てる熱量のすべてを注ぎ込んで企画書を書き上げたのに。面接官の目を見て、物語への愛を、想いの丈をあんなに熱く語ったのに。

 それでも、届かなかった。

 私には、才能がなかったのだ。

 奏くんのような煌めく知性も、輝くんのような人
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