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第3話

Author: チビッコ
玲奈は家に帰り、リビングの中央に立った。

背後でドアが閉まる。

悠真の顔がまだ頭から離れない。

玲奈はスマートフォンを手に取り、家政婦の田中に電話をかけた。

「田中さん、ちょっと来てちょうだい」

30分後。ソファに座った玲奈は、田中が寝室から悠真の私物を一つずつ運び出してくるのを見ていた。

服、靴、本、そしてナイトテーブルに置かれていた彼の手作りのオルゴール。最初の記念日に彼が贈ってくれたもの。蓋を開けると、マジックをする彼と隣で笑う彼女のミニチュアが入っている。

「捨てて」と彼女は言った。

田中は荷物を抱えたまま何か言いたげだったが、結局何も言わずに部屋を出て行った。

玲奈は立ち上がり、リビングの壁の前に歩み寄った。

そこには結婚写真が飾られている。悠真が彼女の前に片膝をつき、指輪を掲げている。その瞬間の写真だ。

玲奈は椅子を持ってきてその上に立ち、写真立てを外した。それを抱えて中庭に出る。写真立てを地面に置き、家の中からライターを持ってきた。

炎が燃え上がるのを見つめながら、彼女はその傍らにしゃがみ込んでいた。

写真の中の彼は徐々に丸まり、黒く焦げ、灰になっていく。

背後から足音が聞こえ、そして怒鳴り声が響いた。

「玲奈!」

悠真は血相を変えて駆け寄り、肩を激しくぶつけて玲奈を突き飛ばした。

彼女はわずかに身をかわした。体の横に下ろした手の指先が、微かに丸まった。

火の中に飛び込む彼の背中を淡々とした眼差しで見下ろす。彼は手のひらで狂ったように炎を叩き消そうとしていた。火が消えた後、彼の手のひらは赤く腫れ、水ぶくれができていた。しかし彼はそれを気にも留めず、床に膝をつき、灰の中をあさった。

焦ったように探すたびに灰が舞い上がり、彼の髪や服に降りかかる。

彼は写真立ての裏に隠されていた一枚の写真を引きずり出した。悠真と結衣が顔を寄せ合い、目を細めて笑っている写真だ。彼は袖でそれを丁寧に拭き、まるで宝物を手に入れたかのように大切に扱った。

玲奈の視線は、彼の足元にある結婚写真の灰に落ちた。風が燃えカスを巻き上げ、靴の上を通り過ぎる。

心の奥底にあったかすかな揺らぎは、湖面に投げ入れられた小石のように波紋を広げる前に、彼のその姿によって跡形もなく消し去られた。

それは2年間飾っていた結婚写真だ。結婚式の日に撮ったものだ。

彼女は毎日その下を通り過ぎていたが、裏返して見ようなどと考えたこともなかった。

まさかその裏に、他の女の写真が隠されていたとは。

悠真が向き直って家の中に入っていくと、玲奈もその後を追った。

クローゼットの奥から鉄の箱を取り出す。ベッドの下から黄色く変色したメモ用紙を引っ張り出す。本棚の本の間に挟まれた、古いヘアピンを取る。

すべて結衣に関係するものだった。

玲奈が贈ったプレゼント、限定物のマジック道具、オーダーメイドのカフスボタン、手縫いのスーツ。彼は見向きもせず、床に放り投げた。

玲奈はドアの前に立ち、彼が最後の隅まで探し終え、それらの物をバックパックに詰め込むのを見ていた。

彼がバッグを提げてドアへ向かうと、玲奈は一歩前に出て彼の行く手を遮った。

悠真は立ち止まり、彼女を見上げた。その目には苛立ちが浮かんでいた。

「どけ」

「玲奈、これは全部君が自分で招いた結果だ」

彼は言った。

「今更引き止めてどうするつもりだ」

玲奈は何も言わなかった。

悠真は一歩前に出て、彼女に詰め寄った。

「言っておくが、引き止められても俺は残らない。ただし――」

彼は言葉を切った。

「君が結衣に謝りに行くなら、話は別だが」

玲奈は彼を見ようともせず、離婚協議書と事前に役所から取った離婚届を取り出し、それぞれ最後のページを開いて彼の目の前に突き出した。

「貸し借りなしって言ったわよね」

彼女の声は低く、何の感情もこもっていなかった。

「ここにサインすれば、本当に貸し借りなしよ」

悠真は書類に目を落とした。彼女が自分を屈服させるための手段だとしか思わず、それを受け取ると横にあったペンを手に取り、乱暴に自分の名前を書き殴った。そして書類を彼女に投げ返した。

「俺は頭なんて下げない」

彼の目は冷たく、確信に満ちていた。

「玲奈、こんな紙切れで脅したって、君の思い通りに戻ってくるつもりはない」

玲奈はその協議書と離婚届を受け取って視線を落とした。

「結城悠真」という文字が、乱雑に書かれている。

彼女は顔を上げ、彼を見た。その瞳はとても静かだった。

「言い終わった?」

悠真は一瞬呆気に取られた。

玲奈は身をかわし、出口の方向へ道を空けた。

「行って」

悠真は動かなかった。玲奈の顔には何の表情も浮かんでいない。

縋ることも、引き止めることもない。かつてのような、手段を選ばない執着は完全に消え去っていた。

悠真の心の中で、何かが音を立てて崩れ落ちた。

「玲奈、君は……」

「悠真さん!」

ドアの外から結衣の声がした。

悠真が振り返ったが、玲奈は彼を見ることもなく、すでに家の中へ向かって歩き出していた。

悠真はバッグを持ったままその場に立ち尽くした。何か言いたかったが、何を言えばいいのかわからなかった。

「悠真さん?」

結衣が再び呼ぶ。

悠真は歯を食いしばり、背を向けて外へ歩き出した。

ドアが閉まる。

玲奈は窓際に立ち、下の道路を歩く二人の人影が遠ざかっていくのを見ていた。悠真が前を歩き、結衣が小走りで後を追っている。

彼女は視線を戻し、スマートフォンを手に取ると、その書類の写真を撮り、長谷川弁護士に送信した。

【手続きを進めて】

そしてベッドに横になり、目を閉じて深い眠りに落ちた。

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