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芍薬の花

Auteur: 雫石しま
last update Date de publication: 2026-04-14 09:53:11

瑞希は朝の光がまだ柔らかい時間に、街角の小さなフラワーショップへ足を運んだ。

白い芍薬の八重咲きを一束、丁寧にラッピングしてもらった。

花びらは重なり合い、ふんわりと膨らんで、まるで恥じらうように首を傾げている。

店主が「今日は特別に良い香りですよ」と笑ったが、瑞希は無言で代金を払い、ショップの紙袋を抱えた。

花言葉は「はにかみ」。

もう一つは「恥じらい」。

……恥じらい?瑞希の口元が、冷たく歪んだ。真希にぴったりではないか。

大人しいふりをした山猫。

柔らかい毛並みと、大きな瞳で旅人を誘い、

頭から丸呑みにしてしまう、静かな捕食者。旅人は陸斗。

もうとっくに、山猫の牙に絡め取られ、逃げられない虜になっている。

薬指の結婚指輪が、重く虚しく光った。

昨夜、陸斗がはめたはずの指輪は、

今も瑞希の手に嵌まったまま、まるで他人のもののように冷たい。

瑞希は大学病院のエントランスを横切り、自動ドアをくぐった。

消毒薬の匂いが鼻腔を刺す。

白い壁の廊下を進むたび、足音がやけに大きく響いた。

真希の病室は、最上階の特別個室。

一泊六万円もする部屋だ。

陸斗の医師としての地位と、両親のコネで用意さ
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