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第18話

Auteur: もちこ
会場は騒然となり、参列者たちは驚きの声を上げた。

「神崎家の社長じゃないか?なぜ彼がここに?」

「霧島家と神崎家は代々敵同士だ。霧島家が彼を招待するはずがない」

「見てみろ、霧島会長の顔が真っ青だ」

拓也は周囲の視線を無視し、壇上へ上がると、若菜だけを見つめ、彼女の前に立ち、声を詰まらせた。「若菜、迎えに来た。俺と一緒に帰ろう」

若菜は驚きで言葉が出なかった。頭の中は「なぜ拓也がここにいるの?」という疑問でいっぱいだった。

どうやって自分がF国にいると知ったのだろう?

それに、「帰ろう」……まさか、自分のことを追いかけてここまで来たのだろうか?

いや、そんなはずはない。彼は今頃、澪と仲良く一緒にいるはずだ。わざわざ自分を探しに来る必要なんてない。

自分がいなくなったのは、彼にとって願ったり叶ったりのはずだ。

若菜は一歩後ずさりし、本能的に健也の隣に移動すると、冷淡な声で拓也を拒絶した。「神崎社長、何を言っているのか分かりません。私たちの間に接点はありません。私の婚約パーティーを邪魔しないでください」

拓也の目に動揺が走った。

彼は今まで、若菜の顔にこんなにも冷た
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