Share

第44話

Auteur: フカモリ
その様子を見て、真琴はベッドから起き上がると言う。

「顔を洗ってきます」

そう言うと、信行を一瞥もせず、スリッパを履いて洗面所へ向かう。

ドアが閉まる音を聞き、信行は「はっ」と鼻で笑うと、自分で手早くネクタイを結んでしまう。

しばらくして、真琴が支度を終えて出てきた時、信行はソファの上着を掴むと、無造作に羽織り、何気なく言う。

「下で朝食だ」

真琴は頷き、彼と一緒に出かける。

もともと出かけるつもりだった。

今日の服装は、通勤用のカジュアルなセットアップ。洗練されていながらも優雅さを失わず、その雰囲気はひときわ際立っている。

信行は両手をズボンのポケットに突っ込み、彼女の前を大股で歩いていく。

真琴の歩みも、それに合わせて少し速くなる。

その時、信行は不意に足を止め、振り返って彼女の方を見る。

急かされているのだと思い、真琴は歩みを速めて彼の元へ向かう。

信行の歩みが速すぎると文句を言うつもりはない。由美と歩いているのを見たことがあるから。由美なら、信行はとても気遣い、ゆっくりと歩き、彼女を待っていた。

できないわけではない。ただ、自分のことを気にかけていな
Continuez à lire ce livre gratuitement
Scanner le code pour télécharger l'application
Chapitre verrouillé

Latest chapter

  • 暴走する愛情、彼は必死に離婚を引き止める   第418話

    午後三時を回った頃、ようやく手術室の重い扉が開いた。それを見た拓真たちは、すぐさま駆け寄って医師に尋ねる。「信行の容態は!?」手術室の前でマスクを外し、医師は答えた。「命に別状はありません。ただ、肺に損傷があり、背部の肋骨を二本骨折しています。さらに後頭部にも外傷があるため、まずは集中治療室で経過を観察します。何か変化があれば、すぐにご家族にお知らせします」医師の説明が終わるのと同時に、美雲も駆けつけてきた。この件については紗友里たちも伏せていたのだが、どこからか耳に入り、居ても立ってもいられず飛んできたのだ。「紗友里、信行はどうなの!?」娘の腕を掴む美雲の手は小刻みに震え、その声もまた激しく震えていた。母の手を握り返し、紗友里は答える。「大丈夫よ。先生は、命に別状はないって。今手術が終わって、これから集中治療室で様子を見ることになったわ」命に別状はないと聞き、美雲はようやく安堵の息をついた。そして、切羽詰まった様子で畳み掛ける。「あの西脇家のお嬢さんは?真琴にそっくりだっていうあの子は、無事なの!?」母の手を握ったまま、紗友里は落ち着かせるように答える。「お母さん、西脇さんは脳震盪だけで済んだわ」西脇の令嬢も無事だと知り、美雲はようやく完全に胸を撫で下ろした。まだ西脇家の次女には会ったこともなく、ただ真琴に似ていると聞かされているだけだが、美雲の中ではすでに彼女に対して特別な感情が芽生えていた。その後、主治医から改めて詳細な説明があり、信行は看護師たちによって集中治療室へと運ばれていった。ガラス越しに、ベッドで身動き一つしない息子を見つめながら、この二年間彼が抱えてきた苦悩を思い、美雲は目頭を熱くして胸を痛めた。信行が真琴と結婚した当初から、真琴をもっと大切にし、夫婦で仲良く暮らすよう何度も諭してきた。由美と一緒になることだけは全力で阻止し、関わりを持たないようにと、あの手この手で説得を試みた。祖父母も同じ思いだったし、父親の健介もその態度は一貫していた。家族全員が心を一つにして説得したというのに、信行は誰の言葉にも耳を貸さず、あろうことか自らの手で幸せな結婚生活をぶち壊してしまった。あんなに良い嫁を、自分の手で失ってしまった。病室の前でしばらく立ち尽くしていたもの

  • 暴走する愛情、彼は必死に離婚を引き止める   第417話

    マイバッハの横を通り過ぎていく間、男は終始、射抜くような鋭い視線を真琴に向けていた。腕の中でぐったりとした信行に必死に呼びかけながら、真琴の脳裏には、ふと何年も前の記憶がフラッシュバックしていた。辻本家の旧宅が業火に包まれたあの日。彼が我が身を顧みず、火の海から自分を抱き上げて救い出してくれたあの光景だ。力なく自分の胸に寄りかかる信行を見つめ、真琴は震える声で呟く。「お願いだから、死なないで。このままじゃ、あなたに借りを返せなくなるじゃない……」どれほど待ち、どれほど不安に苛まれただろうか。ついに救急車のサイレンが近づいてきた。二人はようやく車内から救出された。救急隊員によってストレッチャーに乗せられた瞬間、真琴も視界が真っ暗になり、そのまま限界を迎えて意識を手放した。再び目を開けた時、時計の針はすでに正午を回っていた。病室には、光雅の姿があった。眉をひそめ、ゆっくりと視線を戻す彼女に向け、光雅はベッドに身をかがめてその顔を覗き込み、静かな声で尋ねた。「目が覚めたか……どこか痛むところは?」彼を見つめ、真琴はかすれた声で答える。「首と頭以外は、大丈夫」真琴は少し口籠もり、意を決したように尋ねた。「……信行は?」その言葉を聞き、光雅は静かに答える。「あいつはまだ手術中だ。お前は軽傷で、脳震盪を起こしただけで済んだ」まだ手術中だと聞き、真琴はさらに深く眉を寄せた。彼に借りなど作りたくなかった。もう二度と、彼に命を救われるような真似は避けたかったのだ。彼女の沈黙からその心中を見透かしたように、光雅は手を伸ばして彼女の髪を撫でた。「思い詰めるな。あいつも命に別状はないそうだ。これはただの事故だ、お前は誰に借りを感じる必要もない」その慰めの言葉に、真琴はふと何かを思い出したように顔を上げた。「車が衝突した後……外を、キャップを被った黒ずくめの男が歩いていくのを見た気がする」光雅が口を開く前に、彼女は続ける。「この事故、単なる偶然じゃないかもしれない。誰かが意図的に起こしたものよ」その言葉を聞き、光雅は険しい顔で頷いた。「警察が駆けつけた時、追突してきた車はもぬけの殻だった。ナンバーも偽造だ。すでに警察が本格的な捜査に乗り出している。必ず真相を突き止める。お前

  • 暴走する愛情、彼は必死に離婚を引き止める   第416話

    極限の駆け引きの中、二人は一歩一歩互いの腹を探り合っていた。ただ、今日目の前にいる信行は、先日会った時よりもずっと顔色が良く見えた。男というのは、やはり立ち直りが早い生き物らしい。その冷ややかな態度にもかかわらず、信行はまた笑みを浮かべて言った。「そうでしょうか。俺は西脇博士とかなりご縁があると感じているのですが、これからは友人としてお付き合いいただけませんか」その言葉に、真琴は思わず鼻で笑った。そして足を組み、静かな声で返す。「片桐社長、私たちはビジネスの提携と事業拡大のためにここへ来たのであって、お友達ごっこをするために来たわけではありません。それに、言うべきことはとうに申し上げておりますので、二度と同じことは申し上げません。片桐社長にはもう少し公私をわきまえていただき、私を誰かの身代わりにするようなことはおやめいただきたいですね」そう言い終えると、真琴はゆっくりと立ち上がり、冷静に告げた。「今日はお茶もいただきましたし、片桐社長の顔も立てて差し上げたはずです。用事がありますので、これでお暇いたします」オフィスビルの件に大規模な提携プロジェクト。今日は十分に義理を果たしたはずである。彼女が席を立とうとするのを見て、信行も慌てて立ち上がった。「送りましょう」真琴は短く答える。「では、お言葉に甘えます」そうして、二人は連れ立って店を出た。帰りの道中、信行の携帯が鳴ることもなく、真琴もまた沈黙を守っていた。かつては彼と一緒にいると、いつも話が尽きなかった。だが今となっては、言葉を交わす気すら起きない。車は滑らかに進んでいく。両手でハンドルを握りながら、信行が顔を向けて何か話題を振ろうとしたその瞬間、突然後方から強烈な衝撃が車体を襲った。次の瞬間、真琴の体は前方に投げ出され、凄まじい衝撃と慣性で頭の中が真っ白になった。激しいショックからまだ立ち直れないうちに、車はさらに容赦なく追突される。胸の奥に重苦しい痛みが走り、息が詰まって呼吸すらままならない。運転席の信行も、衝撃で意識が朦朧としていた。車が弾き飛ばされ、前の大型車に激突しようとしたその時、信行は何も考えず、瞬時に身を乗り出し、覆いかぶさるようにして自分の体で真琴を庇った。二人が乗る車は前後から挟み撃ちに

  • 暴走する愛情、彼は必死に離婚を引き止める   第415話

    今回東都に戻ってきたのも、上層部からの強い要請があったからに過ぎない。だからこそ、光雅は真琴に無理をさせず、自分の一存で決着をつけた。「提携はしない」と光雅が迷いなく言い切ったのを見て、真琴はハッとして彼を見た。しばらく彼の横顔を見つめ、少し胸を熱くして言った。「光雅さん……ありがとう」その穏やかな眼差しを受け止め、光雅は平然と返す。「このプロジェクトは元々お前のものだ。お前の気持ちを最優先にするのは当然だろう」真琴の瞳には、やはり深い感謝の色が浮かんでいた。こうして、二人はあっさりとこの件に結論を出した。その後数日間、光雅はオフィスの内装工事や人員配置に追われ、真琴もかつてのように技術開発に没頭し、アークライトの研究所や市の研究施設で過ごす時間が増えた。貴博は時間が空くと、彼女を食事や散歩に誘い出した。二人はとても良い関係を築いていた。……ある日の午前中。朝食を終えた真琴がアークライトへ向かおうとホテルを出た直後、ホテルの入り口で信行の車に待ち伏せされているのが目に入った。信行の姿を見た瞬間、真琴は無意識に眉をひそめた。最近、彼が接触してくる頻度が少し高すぎる。ふうっと軽く息を吐き、眉を寄せながらあのマイバッハを見つめていると、すでに信行がドアを開けて降りてくるところだった。真琴の前まで歩み寄り、何事もなかったかのように言う。「博士、少し場所を変えてお話ししませんか」今日の彼が何のために来たのかは分かっている。真琴は少しの間彼を見上げていたが、最終的には車に乗り込むことにした。そうしなければ、このしつこい男のことだ、いつまでも食い下がってくるだろう。早いうちにきっちり話を片付けておいた方がいい。車が走り出して間もなく、信行のスマホが鳴った。そのため、道中彼はひっきりなしに電話の応対に追われることになった。真琴は黙って横に座り、顔を逸らして窓の外の景色を眺めていた。信行の電話が終わる頃、車はあるティーサロンの前に到着した。先に車を降りた信行は、ごく自然に回り込んで真琴側のドアを開けた。真琴は彼を見上げ、静かな声で言った。「ありがとう」その後、二人は車を降りて茶館の中へと入った。スタッフが入ってきてお茶の用意をしようとしたが、信行は彼らを下がらせ、自

  • 暴走する愛情、彼は必死に離婚を引き止める   第414話

    真琴は生きていた。こうしてしっかりと生きて、目の前にいる。……しばらくして。会場に戻った真琴を見つけると、貴博が手招きして彼女を呼んだ。その気さくな呼びかけに、真琴も何事もなかったかのように歩み寄る。彼女が近づくと、貴博はごく自然に隣に立ち、その肩を軽く抱き寄せて周囲に紹介した。「諸先輩方、こちらが東央システムズの西脇茉琴博士です。産業テクノロジー界が注目する新星ですよ。この機会に、ぜひ諸先輩方のご指導を賜りたく存じます」その紹介を受け、重鎮たちは満面の笑みで彼女に挨拶を返した。皆、茉琴の名は耳にしており、彼女が持つ二つの特許が海外の有名企業と提携していることも知っていた。今後ぜひ協力し合い、互いに利益を生み出せればと口々に語る。大御所たちからの温かい言葉に、真琴はにこやかに礼を言い、堂々と貴博の隣に寄り添っていた。紹介を終える頃には、貴博はすでにスタッフに指示して自分の隣に椅子を追加させており、そこに真琴を座らせた。その細やかな配慮を、真琴も変に遠慮したりもじもじしたりすることなく、ごく自然に受け入れる。二人の親密な様子を遠巻きに見ていた光雅は、胸の奥で微かな寂しさを覚えつつも、彼女が笑顔で幸せに過ごせるのならそれでいいと、すべてを受け入れていた。隣のテーブルでは、拓真や司たちが二人の様子を見つつも、何より信行の反応を気に留めていた。真実を知る拓真は、なおさら気が気でなかった。だが当の信行は淡々とした様子で、周囲の視線を気にするでもなく、親しげな二人に対しても過剰に気にする素振りは見せなかった。かつては自分が表にいて、貴博が暗がりにいた。しかし今や、真琴は茉琴として生きている。自分に堂々と口出しする資格などないのだと、彼自身が一番よく分かっていた。だからこそ、今は暗がりに身を潜め、少しずつ彼女との距離を縮めていくしかない。夜十時過ぎ、懇親会はお開きとなった。真琴は光雅の車に同乗してホテルへと戻った。帰りの車中、真琴が切り出す。「さっきホテルで信行に会ったわ。次世代情報操作技術のプロジェクト、東央と提携する気はないかって聞かれた」それを聞き、光雅はふっと笑う。「完全にお前狙いだな……それにしても、ずいぶんと太っ腹だな」そう言って真琴を見る。「で、お前の意見はどうなんだ

  • 暴走する愛情、彼は必死に離婚を引き止める   第413話

    目の前にいるのが、真琴なのだと。視線がぶつかり、信行はまたしても彼女と過ごした過去を思い出した。うつ病が重かったあの頃のこと、そして、あの火事に乗じて自分の元から去っていったこと。自分がいかに真琴を誤解し、酷い仕打ちをしてきたかということも。それを思うと、目頭がじんわりと熱くなった。今この瞬間、信行は無性に真琴に近づき、その体を抱きしめたかった。あの数年間、ずっとお前を誤解していたのだと伝えたかった。ただ、きちんと謝りたかった。だが……彼女が漂わせるあからさまなよそよそしさと距離感のせいで、一歩も近づくことができない。胸の内に溢れる千の言葉を、どこから口にすればいいのかすら分からなかった。その奥深い眼差しから、真琴も何かを読み取ったようだった。彼がすでに自分の正体を知っているのだということを。落ち着き払った態度のまま、真琴は淡々と声をかけた。「片桐社長」その他人行儀な呼び声に、信行は胸が詰まった。まさか自分と真琴が、ここまで冷え切った関係になる日が来るとは思いもしなかった。自分から逃れるために、死を偽装してまで……信行が真琴の正体を突き止めたことについて、智昭は彼女に教えていなかった。あえて口にしないのが一番だと思ったのだ。あえて波風を立てて、これ以上事態をややこしくする必要はない。信行が身動き一つせず、無言のままじっと見つめてくるので、真琴は歩みを進め、宴会場の方へ向かおうとした。横を通り過ぎようとしたその時、不意に信行が手を伸ばし、彼女の腕を掴んだ。その力に引き留められ、振り返って彼を見上げる。「何か御用ですか?」「ま……」うっかり口走りそうになり、ハッと我に返って、信行は穏やかな声で言った。「西脇博士。興衆実業が最近立ち上げたプロジェクトが、博士の研究の方向性とぴったり合致していましてね。よろしければ、少し意見交換でもいかがかと」真っ向から拒絶されるのを恐れ、相手が口を開くより早く言葉を継ぐ。「次世代の遠隔操作技術です。東央システムズにとっても、大いに興味を惹かれる分野だと思いますが」その言葉に、真琴は思わず顔を上げ、彼を見た。彼が口にしたのは、興衆実業が去年立ち上げたばかりの新規事業であり、確かに東央も目下研究を進めている分野だった。両社にはそれぞれの

  • 暴走する愛情、彼は必死に離婚を引き止める   第84話

    何しろ、真琴が辞表を目の前にまで持って来たのだから。二人がやっていけるかどうか、あとどれくらいやっていけるか、それはもう信行の器量次第だろう。会長の署名が入った辞表を手に、車を運転して会社に戻る時、胸に詰まっていた塊が、すっと消えたように感じる。会社に戻り、報告書と引き継ぎ資料を人事部長の前島(まえじま)に渡すと、中年男性は受け取る勇気がなく、どもりながら言う。「副社長、これは、その……わ、私は……」相手が困っているのを見て、真琴は直接書類を彼の胸に押し付け、笑顔で言う。「前島さん、ご安心ください。手続きは全て整っています。会長が署名なさいましたし、仕事も全て武井さんに

  • 暴走する愛情、彼は必死に離婚を引き止める   第80話

    高速道路へ向かう窓の外の景色が、飛ぶように過ぎ去っていく。それを見つめているうちに、真琴の目頭が赤くなる。ドアハンドルを握りしめ、もう彼とこれ以上、揉めたくないと強く思う。しかし、祖父が実家で自分を待っていること、帰って一緒に将棋を指すと約束したことを思い出し、真琴はまたそっと手をドアハンドルから離した。もう彼と交渉する気はない。声を荒げることもしない。ただ振り返り、ぼんやりとした視線で彼を見つめ、静かに尋ねた。「信行さん、私がこの三年間、幸せに暮らしてきたとでも思いますか?」その言葉に、信行はハンドルから右手を離し、そっと真琴の後ろ首を揉み、穏やかな声で言う。「最近は

  • 暴走する愛情、彼は必死に離婚を引き止める   第58話

    顔を上げて信行を見つめると、その瞳の中に自分の影が映っているのが見えた。とても、はっきりとした姿が。視線を下に落とし、数回まばたきをすると、また横を向き、彼の視線を避ける。もし好きでなければ、もし愛していなければ、一体何のために……?再び信行に視線を向ける。どう答えるべきか考えていると、ふと、彼の肩に目が留まる。口紅の跡。その肩についた口紅の跡をじっと見つめ、真琴はそれが由美の色だと気づく。視線を戻し、再び彼の目を見つめた時、過去の思い出が蘇ってくる。三年間、来る日も来る日も、誰もいない部屋を守り、彼に「好きではない」と言われ、「価値がない」と言われ続けた日々が

  • 暴走する愛情、彼は必死に離婚を引き止める   第59話

    すぐには目を開けず、ただ頭がひどく痛む。「起きたなら、さっさと起きろ。少し熱があるな。まず解熱剤を飲め。下がらなければ明日、病院へ行くぞ」その言葉を聞き、真琴は重い体をなんとか起こす。信行を見上げ、手を伸ばして水と薬を受け取り、「ありがとう」と囁いた。まさか喧嘩の後だというのに、彼がまだ自分が薬を飲む時間を気にかけてくれるとは。昨夜、あれほど怒っていたのだから、今夜はもう帰ってこないだろうと思っていた。薬を飲み終え、真琴は空のコップをベッドサイドのテーブルに置く。部屋には常夜灯が二つ灯り、光は柔らかく、とても静かだ。雰囲気もどこか気まずい。コップをデスクに置

Plus de chapitres
Découvrez et lisez de bons romans gratuitement
Accédez gratuitement à un grand nombre de bons romans sur GoodNovel. Téléchargez les livres que vous aimez et lisez où et quand vous voulez.
Lisez des livres gratuitement sur l'APP
Scanner le code pour lire sur l'application
DMCA.com Protection Status