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第84話

Author: フカモリ
何しろ、真琴が辞表を目の前にまで持って来たのだから。

二人がやっていけるかどうか、あとどれくらいやっていけるか、それはもう信行の今後の行い次第だろう。

会長の署名が入った辞表を手に、車を運転して会社に戻る時、胸に詰まっていた塊が、すっと消えたように感じる。

会社に戻り、報告書と引き継ぎ資料を人事部長の前島(まえじま)に渡すと、中年男性は受け取る勇気がなく、どもりながら言う。

「副社長、これは、その……わ、私は……」

相手が困っているのを見て、真琴は直接書類を彼の胸に押し付け、笑顔で言う。

「前島さん、ご安心ください。手続きは全て整っています。会長が署名なさいましたし、仕事も全て武井さんに引き継ぎ済みです」

辞表を手に、前島は何度か何かを言おうとするが、言葉を飲み込む。

順調なのに、どうして辞めてしまうのか……?

そのどうしようもない気持ちを察し、真琴は笑顔で言う。

「この数年間、お世話になりました。それでは、先にオフィスに戻ります」

前島はようやく慌てて口を開き、見送る。

「それでは、お気をつけて」

真琴が去っていくのを見送り、中年男性は彼女にひどく同情してい
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