Masuk社会人になって4年、順風満帆な人生を送ってきたつもりだった。
大学を卒業して大手と言われている狭間商事の情報・通信部門の営業職に就職し私はバリバリ働いている。 総合商社としてはかなり大手で国内だけでなく海外にも多くの事業を展開していた。 情報・通信部門の中も細かく事業が枝分かれされており、私、鈴宮乙葉はその中でのデジタルマーケティングをメインに仕事をしている。 出張なども多く仕事はとても忙しいがやりがいも感じ、それなりに楽しんでいた。 それなのに一夜の過ちで私の運命は、大きく変わってしまった。 自分の過ちのせいだと分かっているのに、私は盛大にやらかしてしまったんだ。 こんなことになるなんて誰が想像しただろうか。 「なぁにそんなブスっとして、可愛い顔が台無しだぞ」「⋯⋯」
「なんだよその目は。虫けら見るような目で俺を見るなよ」
休憩スペースでコーヒーを飲んでいるとスーツを着こなした1人の男が私の隣にやってきた。 クールそうに見える彼は高身長でスーツの上からでも筋肉質な肉体が分かり、整えた焦げ茶の髪の隙間から覗く綺麗な二重の瞳は私を映し出している。 筋肉質な肉体、私はこの男の身体の隅々まで見たことがあった。 だからこそより鮮明にスーツ越しでもこの男の筋肉質な肉体を想像することができるのだ。 耳元には複数のピアスの穴が空いており、仕事中はピアスをしていないが休日にはしているんだろう。 営業という職業の手前、見た目の第一印象を大切にしているのは私も同じだった。この男は私と同じ情報・通信部門の営業で働く同期の藍村真尋で、私のセフレだ。
類まれなるコミュニケーション能力は営業職では必要なスキルで、整った顔立ちは誰が見てもイケメンだと言うだろう。 「鈴宮、ブラック飲めたっけ?」「ぼーっとしてたら間違えただけ」
「何だそれ。ほら、これ飲めよ。俺もぼーっとしてたら間違えたから交換しようぜ」
そう言ってこの男は私にごく自然に買ったばかりの冷たいカフェオレを差し出す。 季節は4月中旬、徐々に気候は暖かくなり差し出された冷たいカフェオレが美味しく感じる季節が近づいてきていた。 当たり前のように私の隣に座るこの男からはほんのりムスクのような香りが漂う。 そのムスクの香りがもっと強く感じる距離感に私たちはいたというのに、何事もないように同期として話すことに背徳感を感じた。 「藍村、今日は外?」「ん、だな。打ち合わせが3件あってそのあと会食の予定だ」
「1日詰まってんだね、さすがエース」
「いやいや鈴宮も忙しいだろ。知ってんだぞ今日も仕事詰め込んでるって」
藍村からもらったカフェオレにそっと口付ける。 砂糖の甘さが口いっぱいに広がり、糖分が全身を駆け巡った。 私たちは同期で元々仲が良かったと思う。 切磋琢磨しながら時にはライバルのように、時には支え合う戦友のように今まで共に仕事に取り組んできた。「なぁ──乙葉」
「っ!」
「今日の会食さ8時には終わるから、その後、俺ん家来ねぇ?」
「⋯⋯⋯」
藍村が私の名前を呼ぶ時は決まって誘う時だ。 身体を重ねるとき、藍村はなぜか私のことを"鈴宮"ではなく"乙葉"と名前で呼ぶ。 会社とプライベートで名前を呼び替えて間違えない所が器用だななんて思うが、わざわざ変えなくてもいいのにとも不思議に思う。 だけどこうやって特別感をセフレに与えることで錯覚を起こさせ沼に引きずり込もうとしているのかもしれない。 蕩けてしまうかと思うほどに色っぽく妖艶に私の名前を呼ぶその声はまるで勘違いさせるように甘い。 ただのセフレにそんな態度を取っていては勘違いされるのも時間の問題だろう。 「なんか予定あった?」「別に⋯ないけど」
「なら来るだろ?」
この男は私が断るだなんて微塵も思っていないのだ。 確かに藍村に誘われて断るつもりはなかった。 静かに頷いた私を見た藍村は満足気に微笑んだ。 そのままスっと手を伸ばし私の頬に指先で優しく触れる。 その手つきはまるで夜を想像させるような甘く淫らなもので、仕事中だというのにキュンと子宮が疼いた。 自分の顔の良さを分かってやっているのがムカつくのに、この整った顔立ちのイケメンに見つめられてしまえば何もできなくなる。「ここ会社なんだけど⋯」
「いいじゃん別に。誰も見てないって」
「そういうとこが人を勘違いさせるんだよ」
「鈴宮も勘違いしてくれるってこと?」
「⋯⋯⋯まさか。それはないよ」
私は藍村にとってはただのセフレで、私にとってもそれだけの関係だ。 これ以上を望むことだってないし、そんなの望んだって幸せな未来なんて待っていないのは分かっている。 私たちの関係は半年ほど前に始まった。 始まりはよくあるお酒の勢い、というやつだ。 同期のため私たちはよく飲みに行っていた。 私はその時たまたま彼氏と別れた後で人肌が恋しいと思う時期だったのかもしれない。 お酒の勢いで私たちは一夜を共にした。 藍村との行為は驚くほど気持ちよくて、記憶が飛びそうになるほど蕩けさせられたのを今でも思い出せる。 身体の相性が最高にいいと思えたのは藍村が初めてだった。 それがきっかけで私たちはずるずるといわゆるセフレという関係を続けている。 寂しい時や人肌が恋しい時、欲求不満な時、身近に処理できる相手として私たちはお互い求め合っていた。 金曜日の夜、それは私たちが身体を重ね合うことが最も多い日だ。 土日が休みの私たちだからこそ、休みの前日である金曜日の夜はとびきり淫らで甘い。 今日は金曜日、私は今夜この同期のセフレに激しく抱かれる。立ち上がった悠ちゃんは手をヒラヒラとさせながら休憩スペースへと歩いていった。 藍村はそれと入れ替わるように悠ちゃんの席にどさっと腰をかける。 「なぁ鈴宮さ、悠太と距離近くね?」 「え、そう?今のはたまたまディスプレイ覗いてたりしてたからじゃない?」 「ふーん⋯⋯」 「てか急になに?」 「んや、別に。悪かった変なこと言って」 奥歯に物が挟まったような言い方に少しだけ違和感を感じる。 何か言いたげにも関わらずそれを隠すように笑顔を見せてはぐらかされた。 自分のパソコンのディスプレイを見つめていると隣からジーッと視線を感じる。 なぜか藍村に見つめられているようで視線が気になって仕事に集中できない。 「そんなじっと見て何か用?」 「鈴宮さ、ゴールデンウィークは予定あんの?」 「まぁ特にやることは決めてなかったよ。高校の友達と会う約束してるくらい」 「ふーんそっか」 (⋯もしかして⋯⋯) 予定を聞いてくるということはもしかしたらお誘いなのかもしれない。 私たちはセフレでお互いの欲を発散させるための都合のいい関係だ。 ゴールデンウィークだろうが私たちには特に関係ない。 彼氏彼女がいれば話は別かもしれないが、私たちには残念ながらそういう人たちはいなかった。 「いいよ、しよう」 「は?え、何を?」 「え、夜会おうってことじゃないの?そのままするってことだよね?」 「あ、いや、その⋯⋯そりゃシたいけど、俺が言いたいのは別のことで⋯」 「じゃあなに?」 あー、と言いながら頭を搔くその姿はどこか可愛らしく見えて、クールな見た目のいつもの藍村とはどこか違った一面で思わずクスッと笑ってしまう。 今日の藍村はなんだか様子がおかしい。 「鈴宮って甘いもの好きだよな」 「うん。好きだけど」 「前に行きたいって言ってたカフェ、一緒に行かね?」 「え⋯⋯?」 思いもよらないお誘いに呆気に取られる。 まさか藍村にカフェに誘われるだなんて誰が想像しただろうか。 キョトンとしたまま藍村を見つめていると先に視線を逸らしたのは藍村だった。 そっぽを向いた藍村の耳元はほんの少しだけ赤くなっているような気がする。 「え、あの、私と?」 「そ。鈴宮と一緒に行きたいんだけど」 「⋯⋯えーと、私と?誰かと間違えてるわけじゃない、よね?」 「はぁ
あれから1週間、私たちは特になんの変化もない毎日を過ごしている。 現在抱えているクライアントに提出するための資料を作成したりデータを調べたりなど、仕事はありがたいことに毎日忙しい。 藍村とはセフレとして甘い夜を過ごしながらも昼間は何事もなくただの同期として過ごしている。 そのため誰も私と藍村がそういう関係だということには気づいてないだろう。 もちろん同じ同期である悠ちゃんでさえ知らないことだ。 私の向かい側には藍村のデスクがある。 デスクの上には資料やパソコンなどが広げられておりみんな作業に集中して取り組んでいた。 うちの会社は比較的自由なためみんな好きに時間を使って仕事をしている。 好きに休憩を取って好きにお昼ご飯を食べて、好きな時間に帰宅することが許されているのも大手の余裕なのだろうか。 そのため残業をした日はその分次の日に遅く出社するなどして皆時間を上手く調整している。 上司も皆、仕事をこなしていれば文句は言わないためある意味放任されており、逆に仕事をしなければついていくことはできない。 ゴールデンウィークは比較的皆が長期休暇を取る。 もちろん中には仕事の関係で出勤したりする者もいるが、休みの前だからか仕事を詰め込み休暇を楽しもうと必死だ。 私もまたゴールデンウィークは休みを取っており、開けてからの出張の準備を始める。 「おとちゃーん。このデータ見てくんない?」 「うん、いいよ。てか悠ちゃん、どうしたのそんな泣きそうな顔して」 「このデータのどこがバグってるか分かんなくて困ってるの。見てくれない?今日中に終わらせて気持ちよくゴールデンウィーク迎えたいんだよ。雅と旅行に行く予定なんだけど終わらないと出勤しないといけなくなりそうで⋯」 「それは大変。雅ちゃんのためにもひと肌脱ぎますか」 悠ちゃんと雅ちゃんは本当に仲良しだ。 長く付き合っていてもこうやって想い合える関係が羨ましいし、私にもそんな人がいたらいいのに、なんて思えるくらい憧れる。 私の隣のデスクでたまに唸り声が聞こえていたと思えばそのバグを探していたんだと辻褄があった。 悠ちゃんのパソコンを覗き込むように椅子を近づけてディスプレイを覗き込む。 肩が触れ合う距離感に近づくものの、悠ちゃん相手にときめくなんてことは全くなく、まるで
藍村はいじわるだ。 言わなくたって私がどうして欲しいか分かっているのに言わせようとしてくる。 ゆるゆると優しいストロークで肉棒を出し入れするだけで奥まで突き上げることさえしてくれない。 期待に満ちた私の秘部は蜜を垂らすほど藍村から与えられる快楽を熱望していたというのに。 「ほら、乙葉。どうして欲しいか教えて?」 「ぁっ⋯⋯あいむ、ら⋯動い、てっ⋯⋯」 「ん、おねだり上手だな。ほんと乙葉はベッドの上では素直で、すごく可愛い」 グッと腰を掴んだ藍村は一気に腰を引くとそのままばちゅばちゅと奥まで貫いた。 蜜が滴り落ちぐちゃぐちゃと卑猥な音を立てながら何度もナカを掻き混ぜられる。 待ち望んでいた快感を与えられぎゅうぎゅうとほぼ無意識のうちに藍村のモノを締め付けていた。 ざらざらとした肉壁を擦られ、子宮口に届くほど奥をごりゅごりゅと突き上げられる。 「や、ぁっーーあい、むら、はげっ、しっっ」 「むり⋯⋯気持ちよすぎて、ゆっくりなんてできない」 「っぁん、っあぁ、んっふぁっ!」 思わず藍村に腕を伸ばしハグを求めてしまう。 すると彼は耳元で可愛いやつ、と甘く吐息混じりに囁くと身体を私の方に倒しそのままぎゅっと密着してきた。 藍村の首元に腕を回しぎゅっと抱きつきながらも下半身は激しく打ち付けられる。 お尻の方まで愛液が垂れるのが分かるほど乱れ、ピンポイントで私の弱い所を刺激し続けた。 「そうやって俺にちゃんと抱き着いてて。離れないように⋯⋯」 耳元で囁いたと思えば藍村の腰を打ち付けるスピードを上げ、容赦なく快楽の世界へと誘う。 何も考えられなくなるほどの快感に酔いしれ、ひたすら藍村の激しく突き上げるソレを受け入れることしかできない。 身体の芯から湧き出るような感覚に陥り、自分の絶頂が近いことが分かる。 それは藍村にも伝わっているようで、的確に弱い部分をひたすら突き上げられ、あまりの気持ちよさに目尻には涙が滲んだ。 「ぁ、んんっぁや、イ、クっっっうぁん、っっ!!」 「俺も⋯⋯っ」 まるで子宮口に亀頭がキスするようにどちゅどちゅと打ち付けられ、私が達すると同時にゴム越しにも分かるほど熱い白濁とした液が吐き出された。 膣は収縮を繰り返し最後の1滴まで搾り取ろうときつく締め付けてしまう。 「可愛いよ乙葉」 肩で息をする藍村は耳元でま
「んっ、はぁっ⋯ちょ、ま、って⋯⋯」 「ん⋯⋯なに?」 「なに?じゃ、ない⋯まだここ玄関なんだけど」 「言ったろ?早く抱きたいって」 藍村の部屋に入った途端、壁に身体を押し付けられそのまま噛み付くように深く唇を奪われる。 呼吸さえ全て奪うような激しい口付けに頭がぼーっとする中で必死に彼の身体を押し返した。 手首を掴んで壁に押し付けたまま吐息がかかる距離で見つめられ息をするのさえはばかれる。 藍村の視線からも表情からも全てから早く抱きたいと訴えられているようだ。 「まだ俺に"待て"させるの?」 「っ⋯⋯」 「もう待てないよ。早く乙葉のナカに挿れさせて」 そんな熱を孕んだ瞳で見られてしまえば首を横になんて振れない。 半ば無意識のうちに私は藍村の首元に腕を回していた。 それが私が受け入れた合図だと認識した藍村は再び私の後頭部に手を回しそのまま引き寄せる。 口内を犯すように激しく舌を絡ませ合い、くちゅくちゅと唾液が混ざり合う音で下腹部がきゅんと疼いた。 「んっ、はっ⋯⋯っんぁっ」 「もっと舌出して⋯」 「んあ⋯⋯っ」 「ふっ⋯⋯素直に突き出して、ほんと可愛いーやつ⋯」 行為の間に囁かれる甘いセリフは全て場を盛り上げるためのものだと分かっているのに、何度も聞かされると勘違いしてしまいそうになる。 セフレの扱いを心得ているところがこの男の食えない部分だ。 突き出した舌にそのまま吸い付くようにちゅぱっと吸われ舌先がジンジンと痺れていく。 舌が絡み合うだけで気持ちよくてじゅわっと蜜が秘部から溢れた。 「ベッド、行くか⋯⋯」 「わ、ちょ、っ⋯」 「ちゃんと掴まってろ。絶対落とさないから」 抱きかかえられたまま私はあっという間に寝室に連れていかれ、そのままベッドに押し倒された。 何度も来たことのある藍村の寝室は彼と同じくムスクの香りが漂い、全身が包み込まれるような感覚に陥る。 藍村の瞳の奥はギラついており、興奮に濡れた吐息が漏れるだけでドキドキと心臓が暴れ回った。 自分の着ていたスーツをバサッと脱ぎ捨て、ネクタイを解きワイシャツを脱ぎ捨てると綺麗に割れた腹筋があらわになる。 胸元に2つ並ぶホクロが色っぽくて、素肌になると余計に藍村の整った筋肉が際立ち、その肌に触れる
ゆっくりと食べ進めていくと隣に1人の男性が座ってきた。 流れるように座り込んだその動きは今までも同じように繰り返し女の子を引っ掛けてきたんだろう。 「お姉さん、1人?」 「⋯⋯⋯」 「1人なら俺に1杯奢らせてよ」 「遠慮しときます。待ち合わせまで時間潰してるだけなんで」 「待ち合わせまでとはいえこんなに可愛いお姉さんを1人にしておくなんて信じられないなぁ」 こんな誘い文句に誰が引っかかるんだろう。 そこまで軽い女じゃない、と言いたいところだが私も人のことは言えない。 実際にお酒の勢いで同期と関係を持ち、そのままずるずると続けてしまっているのだから。 冷たく返しているはずなのに懲りないこの男に嫌気が差していると聞こえるはずのない声が私の耳元から聞こえてきた。 「───お待たせ、乙葉」 背中から私を抱き締めるように腕を胸元に回し、まるで牽制するように耳元で甘く囁く。 そんな声だけで身体がビクッと反応してしまうくらいには、私の身体はこの男に染められているようだ。 「この男、誰?この子は俺のなんだけど、さっさとどいてくんねぇ?そこ、俺の席なんだわ」 「チッ⋯⋯もう来たのかよ」 「早く消えろよ。俺ら今から2人の時間過ごすんだからさ」 そう低く藍村が呟いたと思えば名前も知らない男はもう1度舌打ちをして去っていった。 そのまま不機嫌そうに眉をひそめ唇を尖らせた藍村はいなくなった男と入れ替わるように隣のカウンター席に着く。 「終わるの早かったね」 「なんでそんな悠長なわけ?てか、変なやつにナンパされてんなよ」 「藍村が終わるまで暇だったんだもん」 「だからって1人で呑むなよ。危ねぇじゃん」 肩で息をする藍村はどうやら急いでここまで来てくれたみたいだ。 藍村は注文を聞きに来てくれた店員さんに私と同じシャンパンを注文した。 「会食終わるの早くない?」 「早く鈴宮に会いたくて」 「またそんなこと言って⋯」 「鈴宮こそ俺に位置情報送ってくるのはここに来いってことだろ?ダッシュで来て正解だった」 これから行く場所は決まっている。 だけど1人で藍村の住んでいる家に行けるほど天然な女を演じることはできなかった。 いつも藍村の家に行く時は2人揃って一緒にだ。 彼が先に帰
今日のタスクは全て順調に終えることができ、思いのほか早く仕事を終えることができた。藍村は外で打ち合わせの後にそのまま会食に直行したらしい。スマートフォンのメッセージには藍村から連絡が来ていた。ただのセフレの私に律儀に連絡してくるところが真面目というか誠実というか。(いや誠実な人にはセフレなんていないか⋯⋯)「おとちゃんおつかれ〜」「悠ちゃんおつかれ」オフィスの自分のデスクに座っていると隣の席に腰を掛けたのは私と藍村のもう1人の同期である箕浦悠太くんだ。黒髪をしっかり整えたこの男性はクールな見た目の藍村とは違って人懐こい笑みを浮かべてふわりと微笑む。藍村と悠ちゃんはイケメンコンビだなんて言われているらしく、2人並ぶと確かに人目を集める。悠ちゃんも藍村に負けず劣らず整った顔立ちのイケメンだ。「あれ今日、真尋は?」「外で打ち合わせのあと会食に直行って言ってたよ」「へぇ〜あいつも大変だねぇ」「悠ちゃんももう終わり?」「いや、これから打ち合わせ兼ねてご飯」「げ、これからまだあるんだ。時間外労働じゃん」営業職のためお客さんやクライアントに合わせた時間調整をすることはよくある。だからこそ私たちにとって勤務時間はあまり意味がないのだ。同期として初めて会った時はその人懐こい性格に驚かされた。適度な距離感を保ちつつまずは様子を伺う藍村とは正反対で、いきなり0距離にまで距離を詰めてくるような人だ。初対面でいきなり自分のことは悠ちゃん、と呼んで欲しいと自分で言ってきた。それから私は彼のことを悠ちゃんと呼ぶようにしている。「おとちゃんはもう帰るの?」「うん。1人でちょっと呑んでから帰ろうかなと思って」「1人呑みいいじゃん。けど変な虫には気をつけるんだよ」「変な虫?寄ってこないよ」「分かってないな〜。おとちゃんってモテるって自覚ない?」「えーと⋯そう、かな?」悠ちゃんはどちらかと言うと同性の友達の感覚に近い。あまり異性としての感覚がないくらい気軽に話せるというか、そういう人柄の持ち主だ。それに悠ちゃんには大学の頃から付き合っている年下の可愛い彼女ちゃんがいる。そのため会社ではファンは多いものの彼の心を射止められる女性はいない。「だから1人で呑むなら気をつけなよ?変な男近づいてきたら俺でもいいし真尋でもいいから連絡しておいで」







