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第3話

Author: チビッコ
週末、勲は渚を友人たちとの集まりに連れて行こうとしていた。

出かける前に、勲はソファで本を読んでいた彩葉に声をかける。「彩葉も一緒に行こう。いつもの仲間だし、君も知ってる人たちだからさ」

彩葉は断ろうと思ったが、ふと考え直した。これが勲の妻として、彼の友人たちの中に足を踏み入れる最後の機会かもしれない。そう思い、彩葉は頷く。「わかった」

集まりは、会員制バーの個室で行われた。

照明は落とされ、静かな音楽が流れている。勲が渚と彩葉を連れて入ると、それまで賑やかだった部屋が一瞬、静まり返った。

親しい友人たちが、渚の顔を少し見てから、さっと彩葉に視線を移すと、お互いに何かを察したように目配せした。彼らは小声で話し始める。

「おい、そっくりすぎるだろ……」

「勲のやつ、ついに『最終版』を見つけたってわけかよ?」

「しーっ、静かにしろって」

彼らの会話が聞こえてきた勲だったが、気づかないふりをし、渚の肩を自然に抱き寄せ、友人たちに紹介する。「山口渚だ」その口調は気心の知れたもので、ふとした瞬間にこぼれる、さりげない親しさがにじんでいた。

渚は恥ずかしさと不安が入り混じったような表情を浮かべながらも、勲に寄り添い、彼の服の裾を軽く握っていた。

勲が渚に何かささやくと、彼女はすぐに顔を上げて甘く微笑む。

彩葉はそれを見ているだけで、胸がえぐられるような痛みを感じた。

場のノリで、誰かが『真実か挑戦か』を提案した。最初に、ジャンケンで負けたのは彩葉だった。

「真実か挑戦、どっちにする?」と、誰かが囃し立てる。

彩葉は唇をきゅっと結んで答えた。「真実」

そして、質問者は渚だった。

「彩葉さんのお姉さんって、彩葉さんを助けようとして事故に遭ったと伺いました。それに、お姉さんのものだったはずの人生と恋人を横取りして、もう何年も経つそうですが、今はどんな気持ちなんですか?」

その言葉が響いた瞬間、部屋は水を打ったように静まり返る。

彩葉は全身を激しく震わせ、信じられないという顔で渚を見つめた後、すぐさま勲に顔を向けた。

このことは、彼女の心の奥底にある最も深く、最も痛ましい傷跡だった。そして、幾度となく夜中に夢から覚めるたび、罪悪感に呑み込まれる、そのすべての根源でもあった。

そしてこれは、どうしようもなく苦しくて辛かった日に、勲にだけ打ち明けた話だった。二人の関係が少しは良くなるかもしれない、そんな哀れな希望を抱き、自分のすべてを理解してほしいと願って……

だからこれは、二人だけの秘密のはずだった。

だが今、その傷は、生々しく引き裂かれ、皆の前にさらされてしまった。

彩葉は考えずにはいられなかった。勲がいったいどんな状況で、この出来事を……物語のように、あるいは新しい恋人をあやすための話の種のようにして、渚にそっと語って聞かせたのかを。

それは、肌を寄せ合って、甘い時間を過ごしている時だったのか。

それとも、渚が些細なことで機嫌を損ね、彼女をなだめるために、自分の悲しい過去を話して笑わせでもしたのだろうか?

彩葉の唇は震え、顔からは血の気が引いていく。彼女は勲を見つめながら、彼が否定してくれることを待った。もし否定してくれなくとも、せめてこの場を何とかしてくれることを必死に願った。

渚の隣に座っていた勲は、顔をこわばらせ、眉を顰めている。

だが、何も言わなかった。

ただ、複雑で何を考えているのか分からない目つきで彩葉を見ていた。その瞳の奥には緊張の色も浮かんでいるようで、まるでこの質問にどう答えるのが正解なのか、見極めようとしているかのようだ。

彩葉は全身が冷え切り、指先の感覚がなくなるのを感じた。

何か言おうと口を開くが、彩葉は声が出せなかった。

「ちょっと、さすがにその質問はあれなんじゃないか……」雰囲気の悪さに気づいた友人の一人が、ようやく場を何とか和ませようと口を開く。

しかし、その隣にいた女性がにやにやしながら口を挟んだ。「ただのゲームじゃん。まっ、答えられなかったんだから、罰ゲーム受けなきゃだよね?ショット3杯!」

彩葉は考える間もなく、テーブルに並ぶショットグラスに手を伸ばす。

ここに一秒でもいるくらいなら、酔いつぶれたほうがましだった。

だが、彩葉がショットグラスに口をつける前に、大きな手によって力強く掴まれた。

勲が、いつの間にか立ち上がっていたのだ。彩葉の手から強引にグラスを奪い取ると、彩葉を見て、苛立ちを声に滲ませた声で言った。「君はアルコールアレルギーだってこと、自分で分かってないのか?ふざけるのもいい加減にしろ」

そして、勲は彩葉から視線を外すと、近くにいた店員らしき人に声をかける。「悪いけど、ホットミルクを一杯もらえるかな?」

再び彩葉に向き直った勲は言った。「あっちのカウンターで待ってろ」

彩葉はうつむいたまま、誰の顔も見ずに黙って向きを変え、部屋の隅にある小さなカウンターへと歩いていった。

牛乳を受け取りに行った彩葉が個室に戻ろうとすると、半開きのドアの向こうから、またゲームが始まったらしい声がはっきりと聞こえてきた。

「勲さん!勲さんの番よ。本当のことを言ってよね?」それは、渚の甘えたような声。

「分かった。質問は?」勲の声にも、渚を甘やかすような響きが含まれている。

少し黙って考えていた渚だったが、ふとドアの外にいる彩葉に気づくと、わざと声のボリュームを上げた。「勲さん。彩葉さんのこと、愛したことはある?ほんの少しでも……」

ドアの外で、彩葉は思わず息を止め、冷たい壁に強く指を這わせる。

ほんの少しでもいい。ほんの一瞬でもいい。夫としての責任とは別に、自分という個人に向けられた、ほんのわずかな温情が欲しかった。

彩葉はまるで、最後の審判を待つ囚人のように、その心臓は静寂の中で狂ったように波打っていた。

個室の中が数秒静まり返る。

そして、ついに勲が口を開いた。

「ない」

たった二文字。しかし、そこにはきっぱりとした、有無を言わせぬ響きがあった。

ドアの外に立っていた彩葉の頭の中で、ずっと張り詰めていた糸が、ぷつりと音を立てて切れた。
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