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第4話

Autor: 秋月静葉
「中島課長、お呼びですか?」

怪訝な顔をしていた浩平は、瑞樹の姿を見ると声を弾ませた。「ああ、宮本先生。お二人のための新居が準備できそうなんです!今年こそ、お二人の晴れ姿にお目にかかれそうですね」

瑞樹の顔が一瞬こわばったが、すぐに何事もなかったかのように答える。

「ありがとうございます、中島課長。招待状は必ず送りますから」

瑞樹は直美の手を引いて事務室を出た。

「直美、新居の問題は解決できたけど、今年は昇進のためにかなり忙しくなるんだ。だから、結婚の話は……」

「わかってる。急がなくても大丈夫だから」

直美は瑞樹が言う前に、彼の本音を先に口にしてあげた。

住まいなんてただの口実だ。瑞樹には最初から自分と結婚するつもりなんてなかったのだから。

ちょうどいい。こっちも、もう瑞樹と結婚する気なんて微塵もない。

瑞樹は直美がこうもあっさり受け入れたことに驚いた。以前のように自分に縋り付いて結婚を迫る直美の姿はそこにはなかった。

瑞樹は気まずさを紛らわせるように言った。「直美、誤解しないでくれ。結婚する気がないわけじゃない。ただ、今キャリアアップして、君にもっといい暮らしをさせてやりたいだけなんだよ」

直美は心の中で笑った。昔の自分は、瑞樹には色々な苦労があるのだと信じ、自分の身を削ってでも力になろうとしていた。

しかし、その問題を解決する度に、次から次へと新しい言い訳が出てくる。

以前は住まいの問題、今は昇進だ。

昇進の件が終われば、また別の問題を持ち出すのだろう。

だが、そもそも「問題」などというものは存在しない。すべてが瑞樹の都合の良い言い訳なのだから。

ただ、もうそのどれもが自分には関係ない。

「そうかもね。じゃあ、お互い仕事に集中しよう。それがこれからのために一番いいと思うし」

直美の声には迷いがなかった。

それは瑞樹への言葉であり、同時に自分自身に言い聞かせる言葉でもあった。

恋愛は淡くて脆い。確かなのは、自分自身のキャリアだけだ。

肩の荷が下りたようで、瑞樹が直美に向ける視線に少しばかりの温かみが宿る。「直美……そう言ってくれるなんて、本当に嬉しいよ」

瑞樹と別れた後、直美は再び総務課の事務室へ戻った。

「中島課長。先ほどの話の続きですが、例の新居は私の名義で割り当てられるんですよね?なら、今回の申請は取り下げていただけますか?他にも、院内結婚の先生方はいらっしゃいますし、そちらに回してあげてください」

自分が住まない以上、結香も瑞樹もここに住まわせるわけにはいかない。

それからというもの、直美は仕事とダンスの練習に明け暮れ、充実した日々を過ごしていた。

ある日の昼休み、若い看護師たちに取り囲まれた直美。

「松浦さん!新居の申請が通ったそうですね!結婚式、いつ挙げるんですか?」

「ようやく結婚ですね!おめでとうございます!」

直美が否定しようと口を開きかけた時、一人の新人看護師が慌てて駆け込んできた。

「大変です松浦さん!宮本先生が、あの白石さんを松浦さん達の新居に!」

胸がキュッと締め付けられた。公舎の件が決まるやいなや、瑞樹はこんなにも早く結香を連れ込んだというのか?

急いで見にいくと、寝室は結香親子によって完全に占領され、荷物で溢れかえっていた。

元々そこまで広くない部屋は、足の踏み場もない。

直美は冷ややかな声で言った。「ここはあなたの住む家じゃないので、出ていってください」

しかし、結香は反発した。「これは宮本先生の家よ。先生が来て良いって言ってくれたんだもの。松浦さんには関係ないでしょ?」

直美は呆れた。「誰が彼の家だと言ったんですか?とにかく、5分以内にここから出ていってください」

「嫌よ。宮本先生が追い出さない限り、ここに居座ってやるんだから」

開き直った結香に話は通じなかった。

直美は結香を無視し、目の前にあった荷物を力任せに部屋から投げ捨てた。

結香も投げられまいと荷物にしがみつき、室内は修羅場と化した。

慎也まで泣き出す始末。「松浦さん。追い出さないで、お願いだから……」

噂を聞きつけた野次馬たちが、あっという間にドアの外を埋め尽くしていた。

掃除用品を買いに行っていた瑞樹がちょうど戻ってきた。騒ぎを見るなり、急いで家の中に入る。悲惨な現場を目にすると、バケツを放り投げ、乱暴に直美の手を掴んだ。

「直美!何をしてるんだ!」

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