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第30話

Author: 霧乃吟
征司はそのまま書斎に向かい、何かを取りに入った。

ほんのわずかな時間で、紗耶を喜ばせるためだけに、四十億円という破格の金額を支払うことを決めたのだ。

――俺を待つ必要もない。

その言葉を思い出し、澪は思わず笑いそうになった。

待つ?

何を言っているのだろう。

自分はもう何日も前にこの家を出ている。

それすら征司は知らないらしい。

どれほど無関心なら、そんなことになるのだろう。

澪はもう彼のことを考える気にもなれなかった。

写真を大事にバッグにしまうと、そのまま屋敷を後にした。

そして古い愛車に乗り込む。

だがエンジンをかけようとした瞬間、彼女の表情が曇った。

また故障だ。

何度キーを回しても反応しない。

どうやら完全に動かなくなっていた。

ついていない時は何もかもがうまくいかない。

澪は時計を確認した。

まだ八時を少し過ぎたばかり。

仕方なく車を降りて確認する。

しかし素人に分かる問題ではなかった。

その時、屋敷から出てきた征司がその様子に気づく。

その車は覚えている。

結婚した頃から澪がずっと乗っていた車だ。

征司は自分の車に乗り込み、
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