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第2話

Auteur: 春日山奈
結局、弘道は一度だけ心を動かしたのか、私の居場所をメッセージで尋ねてきた。

私は少しの希望を抱き、彼が迎えに来てくれるのかと思った。

しかし、来たのは彼の友人、鈴木義弘(すずき よしひろ)だった。

車の中で、彼は私にやたらと気を使い、話のあちこちで弘道が私たちをくっつけようとしていることが伝わってきた。

私は笑顔を作りながら、心が引き裂かれるように痛んだ。

この四年間、弘道は私を厳しく見守っていた。

私の周りに男の影が見えるたびに、彼はあらゆる手段で相手のことを徹底的に調べ上げた。

最後には真剣に「成人前は恋愛をやめて」と言って、私に注意していた。

義弘が私を好きだということも、弘道は知っていた。

以前の彼は強硬に反対し、義弘に対して「彼女はまだ若い、手を出すな。さもないと友達も辞めるぞ!」と警告したほどだ。

しかし今、彼は自ら私をその義弘の元へ押しやろうとしている。

そう考えると、私はまたしても涙を抑えきれそうになかった。

彼はいったい何を心配しているというのか。私はしつこく絡んだりしない。

それに、そんな機会さえもないのだから。

何しろ、私はもうすぐ死ぬのだ。

信号待ちの間、義弘は一緒に夕食をとらないかと誘ってきた。

私はその期待と不安の入り混じった目を見つめて、昔弘道に告白した自分を思い出し、何も考えずに即答で断った。

私の青ざめた顔や弱々しい声を気遣ってか、彼は失望した笑顔を浮かべ、それ以上は何も言わなかった。

道が渋滞して、家に着いたのは夜になった。家の中は静まり返っていて、弘道はまだ帰っていなかった。

今夜も、彼は帰ってこないだろう。

ため息をつき、私は廊下へ歩み寄り、腰を下ろした、そして庭に咲く白い椿をぼんやりと見つめていた。

この椿の木は、彼と三年前に一緒に植えたものだ。

その時、私は映画『きっと、星のせいじゃない』を観たばかりで、その中の台詞『その人こそが虹のようで、出会ってみて初めてわかるのだ』に、私は深く心を打たれていた。

映画の主人公たちがプラタナスを一緒に植えたように、私は彼と一緒に一株の椿を植えたかった。

その理由は、私自身もよくわからなかった。

たぶん最初に彼を見たとき、公園で椿の花が満開で、その白いシャツを着てそこに立つ姿は、まさにその純白無垢の花のようだった。

私が椿を植えたいと言い出したとき、彼は少し驚いた様子だったが、いつも私を甘やかしていた彼は、特に深くは尋ねなかった。

そしてある穏やかな朝、私たちはそれを植えた。

同時に植えたのは、少女の淡い想いでもあった。

ゴロロッ——

耳をつんざくような雷の音が私を現実に引き戻した。

耳をつんざくような雷鳴が私を現実に引き戻した。私は手の中でくしゃくしゃに丸められた診断書をじっと見つめ、弘道に打ち明けるべきかどうか心が揺れた。

いつの間にか、私は眠りに落ちていた。

ぼんやりとした意識の中で、私はふわりと温かさを感じた。誰かがため息をつきながら、私を抱き上げたのだ。

私は力の限り目を開けようとし、ちょうど弘道の冷たく峻烈な瞳と見つめ合った。

それは錯覚だったのだろうか。一瞬、彼の墨のように暗い瞳の中に、深い悲しみが浮かんでいるように見えた。

「お兄ちゃん……」

一晩中風に当たったせいで、私の声はかすれていた。

彼は私が目を覚ましたのを見て、一切の憐れみもなく私をソファに放り投げ、冷たく言い放った。

「由美、これで俺がお前に同情するとでも思ってるのか?」

胸が痛んだ。私は目を伏せ、自嘲の笑みを浮かべた。

「ただ、うっかり寝てしまっただけ」

彼の瞳はさらに冷たさを増した。

「あの日、はっきり言ったはずだ。血は繋がっていなくとも、俺たちは兄妹だ!これ以上俺に嫌われたくなければ、これ以上小賢しい真似はするな!」

彼の言葉は鋭い刃のように、私の心を血だらけに切り裂いた。私はハッと、自分が手のひらに握りしめていた診断書を思い出した。慌てて手をぎゅっと握り締め、背後に隠した。

彼は私の動作に気づき、眉をひそめた。

「何を隠している?」

「何でもない」

私は慌てて首を振った。彼は疑いの目を向けながら、身をかがめて私の手を掴もうとした。しかし、次の瞬間、彼の表情が一変した。

その時、私も鼻の中に温かい流れが込み上げてくるのを感じた。また鼻血が出たのだ。

弘道は急いでティッシュを持ってきてくれた。血が止まらないのを見て、「どうしたんだ?」と詰め寄りながら、かかりつけの医師に電話をかけようとした。

私は慌てて止めた。

「最近、ちょっと疲れてるだけ。すぐに止まるから」

すると彼は突然激怒した。

「由美!君、一体何をやっているんだ!」

その一言で、私の心は完全に凍りついた。

口元に、思わず自虐的な笑みが浮かんだ。

病気を必死に隠すこの行為は、確かに「やってる感」が満載だった。

自分の口調が強すぎたことに気づいたのか、彼はイライラと眉間を揉んだ。そして、感情を必死に抑え込んでいるように、口調を和らげて言った。

「病院に連れて行く。突然鼻血が出るのは、小さなことじゃない」

久しぶりの彼の優しい口調に、私は鼻の奥がツンと熱くなった。握りしめていた手が、少しだけ緩んだ。

「お兄ちゃん、実は私……」

打ち明けようとしたまさにその時、玄関のドアが突然開き、根雪が入ってきた。

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