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第7話

Author: チビッコ
ついに大晦日の夜がやってきた。

夏美が入院していた個室の窓からも、煌めくネオンで宝石のように輝く街が見えた。そして、時折遠くから子供がはしゃぐような声が聞こえてきていた。

テレビからは小さな音で、賑やかな年越し番組が流れていた。

そんな中スマホが光り、薄暗い病室で眩しく輝いた。

湊からのビデオ通話だ。

夏美はその通知をじっと見つめ続けた。

結局、彼女は最後の力を振り絞って、震える手で応答ボタンを押した。

すると、画面越しに、湊の顔が映し出された。

「夏美!」湊の弾んだ声が聞こえる。「年越しそばは食べた?テレビ見てる?」

夏美は自分を映すことはせず、枕にスマホを立てかけ、カメラを天井の方へ向けた。

「うん、すこし食べたよ」彼女の声はとても小さく、テレビの音にかき消されそうだった。「テレビも見ているよ」

「どうして顔を見せてくれないんだ?」湊がいつものような甘えた声で尋ねてきた。「また痩せたのか?ちゃんと食べなきゃダメだって言っただろ」

「大丈夫だから」夏美はそれでもカメラを自分に向けることなく答えた。

その時、電話越しに香織の楽しそうな声が聞こえた。どうやら彼女たちもそばにいるらしい。「湊、夏美とビデオ通話中?顔を見せてもらうように言って、挨拶くらいしなきゃ!」

そしてそれと共に背景で美優の笑い声も重なった。

これらを聞いて、夏美の胸は締め付けられたようだった。

「お母さんが会いたがってるよ」湊がスマホを二人に向けた。

画面には、果物やスナックを広げたソファに座り、テレビを楽しんでいる香織と美優の姿があった。

華やかな柄の服を着た美優の肌は白く輝いていて、甘い笑顔を見せている。香織も新しい服を着て、心底嬉しそうに笑っていた。

「夏美、ほら!お母さんたちとも何か話して!」香織が画面越しに笑いかけた。

夏美は指を小さく動かしたが、画面の位置は動かさなかった。

鏡に映る自分は、見る影もなくやせ細り、顔色も悪い。帽子をかぶっていても病気の影は隠せないでいたから。

家族みんなが幸せそうに過ごすこのひと時をぶち壊すような、自分のみすぼらしい姿を見せたくはなかった。

「少し具合が悪くて、動けないんだ」そう言い訳をすると、彼女の声はよりか細くなった。

すると、画面の向こうが一瞬静まり返った。

続いて香織が声を強め、苛立ちを隠さずに言った。「まだ拗ねているの?私たちが遊びに行っているのに連れて行かなかったから?夏美、あなたは姉なんだから。いつまでも美優と比べてばかりいるのはダメでしょ?大人げないわよ」

「お母さん、夏美をそんなふうに言わないでください」湊が割って入った。「彼女の体調が悪いのは知ってるでしょう」

湊は夏美を安心させるように微笑むと、席を立った。それから彼はベランダへ移動したのか、周囲の音が静かになり、遠くで街の賑わう音だけが少し明瞭になった。

「夏美、ここから見える景色はなかなかいいよ」

彼はカメラを外へ向けた。

すると画面の向こうでは、夜空を埋め尽くすほどキラキラと輝くネオンが夜景を彩っていた。

とてもきれいだ。

その眩い光を見つめる夏美の視界は、徐々にぼやけていった。

そしてテレビの騒がしい音に混じって、湊は屈託のない声で美優の愛犬の調子が良くなったことや、美味しかった料理など、旅先の様子を話していた。

これらあらゆる音が、次第に遠ざかっていった。

「夏美?聞いてる?」湊が夏美の沈黙に気づいたようだ。

「うん……」夏美はかろうじて反応を返すのが精一杯だった。

そんな中、テレビではゆく年くる年のカウントダウンが始まっていた。

「10!

9!

8!」

カウントダウンの音は次第に大きくなっていき、テレビ越しに伝わってくるようだった。

「7!

6!

5!」

そして湊の弾んだ声と、テレビのカウントダウンが重なった。「夏美!もうすぐ新しい一年がやってくるね……」

「4!

3!

2!」

しかし、最後の1秒になった瞬間、病室のモニターが鋭い音を響かせた。

ピーッ――

必死に画面を隠そうとしていた夏美の手が、ついに力が抜けたようにそのまま白シーツの上へと落ちていった。

そしてそれと共にスマホも手から滑り落ち、枕の脇へ転がった。

一方、電話の向こうで、湊がまだ興奮から覚めない様子で言った。「あけましておめでとう!夏美、もうすぐ帰るよ」
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