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last update Dernière mise à jour: 2025-12-06 11:24:24

 その日の夕食は、ダイニングルームで一家全員で食卓を囲んだ。以前のような息が詰まるほどの重苦しさは、もうどこにもない。代わりに、穏やかで温かい空気が流れていた。

 テーブルには桐生家専属のシェフが腕を振るった、見た目にも美しい料理が並ぶ。大人たちの前には、繊細なガラスの器に盛られた季節の前菜や、透き通ったコンソメスープ。一方、樹の目の前には、星形の人参が飾られたハンバーグステーキや、小さなクマの形をしたポテトフライなど、子供が喜ぶように工夫されたプレートが置かれていた。

「わあっ! ママ、見て、おほしさまだよ!」

 樹は大喜びだ。彼は人参が苦手なはずなのに、可愛らしく盛り付けられているために気にしていない。ハンバーグと一緒に美味しそうに食べている。

「おいしー! パパとママにもあげる」

 そう言って皿を寄せてくるので、結菜はハラハラした。食べ物をシェアするのは、結菜の家では当たり前だ。でもこの立派な桐生の家では、マナー違反にならないだろうか。

「お星さまか。よし、もらおう」

 ところ

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    「……さて。今日はここまで」 話の区切りをつけてエドワードが言うと、樹は急に現実に引き戻された気持ちになった。 車椅子の曽祖父の顔を見上げて、首をかしげる。「ひいおじいちゃん、もう終わりなの? それからイツキはどうなったの? もっと聞きたいよ」「終わりではないよ。続きはまた明日にしよう。さあ、そろそろ夕食の時間だ。しっかり食べて、大きくならないとね。お母さんを迎えにいってあげなさい」「ん、分かった! お話、明日また聞かせてね!」 樹は勢いよく立ち上がると、弾むような足取りでリビングを出ていった。「……お父様があんなにお話が上手とは、知りませんでしたわ」 残された鏡子がぽつりと言う。エドワードは苦笑した。「お前にも話したはずなんだが、もっとたくさん聞かせてやればよかったね。当時は仕事が忙しくて、お前のための時間をあまり取ってやれなかった。後悔先に立たずとはこのことだ」 若い頃のエドワードは単身で戦後の日本に渡り、KIRYUホールディングスを立ち上げた。 結婚した後も多忙を極めて、家族との時間が少なかったのは事実だ。 鏡子は首を振った。「もう50年以上前のことです。私も大人どころか、高齢になりました。お父様に感謝以外はありません」「そうかい? いくつになっても、親にとっては可愛い娘だ。樹のお話の次は鏡子の話をしようじゃないか」「またそのようなことを……」 鏡子は呆れ顔だが、少しだけ嬉しそうでもある。長年を仕事の責務に費やしてきた彼女にとって、今の家族の団らんは新鮮で、心が温まるものでもあった。「不思議の国のアリスの続編は、鏡の国のアリス。鏡子の鏡の字だよ。ぴったりじゃないか。どんなお話にしようか、今から腕が鳴るね」 楽しげなエドワードに、鏡子も少しだけ笑った。「……そうですね。では樹くんと一緒に聞かせてください」「ああ、そうしてくれ。可愛い娘と孫とひ孫に囲まれて、私は幸せ者だ」 エドワードはひざ掛けの下の手を握り直した。そこには1つの古びた鍵がある。 この屋敷の地下にある、エドワードの書庫の鍵だ。 普段は鍵がかけられているそこは、エドワードにとっての不思議の国。長年かけて収集した貴重な本が山ほど収められている。(鏡子は読書に興味を示さない子だった。智輝は本が好きだったようだが、途中で心を閉ざしてしまった。樹はまっすぐな目で

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