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last update Last Updated: 2025-10-15 11:25:24

 彼の言葉には一切の淀みがなく、感情の温度も感じられない。その明快な答えに、佐藤は気圧されながら「よく、分かりました。ありがとうございます」と着席した。

 次に、若い男性職員が不安そうな顔で立ち上がった。

「我々はコンピューターの専門家ではありません。そのような最新のシステムを、本当に使いこなせるようになるのでしょうか……」

 智輝の銀灰色の瞳が、かすかに細められた。まるで、あまりに初歩的な問いに呆れたかのようだった。

「あなたは、電話のかけ方を知っていますね?」

「は、はい」

「それと同じです。電話がなぜ繋がるか知らなくても、目的の相手の番号を押し、話す。それで十分に使いこなせます。図書館のシステムも目的の本の名前を入力し、検索ボタンを押す。プロセスは同じで、道具が違うだけです。もちろん、必要な研修はこちらで用意します。ボタンの押し方を覚えるのに、専門知識は不要です」

 完璧なまでに無駄のない論理に、質問した職員は返す言葉もなく、「失礼しました」と小さくなって座った。

 ホールは感嘆と畏怖が入り混じった空気で満たされる。彼の圧倒的な手腕と、人の心の機微など一切意に介さない冷徹さに、職員たちは圧倒されるばかりだった。

 説明会が終わり、智輝は館長や県知事と形式的な挨拶を交わしながらロビーを退出しようとした。

 彼は一刻も早くこの場を立ち去りたかった。結菜と同じ空気を吸うことすら、忘れかけていた痛みを抉るようだったからだ。

 その時、ロビーの隅から小さな影が駆け出してきた。保育園の送迎で図書館まで来ていた樹が、母親の元へ行こうと走り出したのだ。

 だが、ロビーにはいつもよりもたくさんの大人があふれている。樹は大勢の大人に紛れて母親を見失った。キョロキョロと辺りを見回す。

 そして、ちょうど目の前を通りかかった智輝の足に、こつんと頭をぶつけてしまった。

「あいたっ」

 突然の出来事に、智輝は反射的に眉をひそめる。子供は非合理的で、予測不能な存在。好きではなかった。
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