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愛した君とここから-06

Penulis: あさの紅茶
last update Terakhir Diperbarui: 2025-02-15 04:16:18

無事に親への挨拶も済み、二人は結婚に向けて歩き出した。

海斗のこと、紗良の母親のこと、お互いの仕事のこと、考える事は山ほどある。

けれどひとつも大変だとは思わなかった。

この先に待っている新しい生活に思いを馳せながら、日々できることをこなしている。

季節は秋から冬に移り変わるところ。

延びていた母の入院生活もようやく終わり、紗良たちはアパートに引っ越していた。

それは母の老後悠々自適生活のためのアパートではなく、紗良たちの一時的な住居だ。

紗良と杏介は悩みに悩んだ末、紗良の実家を建て替えて二世帯住宅として住むことを母に提案したのだ。

母は渋ったものの、左手足の回復が思ったより上手くいかず、近くに住んだ方が安心だと説得されて了承した。

海斗は家が新しくなることと、家が出来たら杏介と一緒に住めることを喜んで心待ちにしている。

いつものように海斗をプールに送り出して、ママ友の弓香と一緒に観覧席に座る。

と、弓香が声を潜めて紗良に迫る。

「ちょっと紗良ちゃん、滝本先生と結婚するってほんと?」

「えっ! 弓香さん、なぜそれを……」

ドキリとした紗良は思わず目が泳ぐ。

「海ちゃんが保育園で言いふらしてたみたいよ。うちの子が聞いたって。もー、いつの間にそんなことになってたの?」

「いや、いろいろあって。っていうか、ちゃんと弓香さんには伝えるつもりでいたんだけど、まさか海斗から伝わるとは……」

「やだもう、馴れ初めとか聞きたい聞きたい!」

「お、落ち着いて弓香さんっ! さすがにここでは話せないし……。今度お茶したときにでも! ねっ?」

「絶対よ。約束だからね!」

こんなプール教室に通う子どもの親たちがひしめく観覧席で、まさかガラス越しのプールにいる杏介と結婚する、という話題は避けたい。

紗良は冷や汗をかきながら弓香を落ち着ける。

「まさか紗良ちゃんの推しが滝本先生だったとは。一番人気じゃん」

「そんな競馬みたいなこと言わないでよ~」

「あーあ、私も推しの小野先生と仲良くなりたいわ」

「またそんなこと言って、旦那さん泣くってば」

「いいじゃない、別に。なにも不倫したいとか思ってるんじゃなくてさ、芸能人とお近づきになりたいみたいなミーハーな気持ちよ。それくらい楽しみがないといろいろやってられないってば。紗良ちゃんは真面目すぎるのよ」

「……真面目なんですよ、私は
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    カシャカシャカシャッその音に、紗良と杏介は振り向く。そこにはニヤニヤとした海斗と、これまたニヤニヤとしたカメラマンがしっかりカメラを構えていた。「やっぱりチューした。いつもラブラブなんだよ」「いいですねぇ。あっ、撮影は終了してますけど、これはオマケです。ふふっ」とたんに紗良は顔を赤くし、杏介はポーカーフェイスながら心の中でガッツポーズをする。ここはまだスタジオでまわりに人もいるってわかっていたのに、なぜ安易にキスをしてしまったのだろう。シンデレラみたいに魔法をかけられて、浮かれているのかもしれない。「そうそう、海斗くんからお二人にプレゼントがあるんですよ」「えっへっへー」なぜか得意気な顔をした海斗は、カメラマンから白い画用紙を受け取る。紗良と杏介の目の前まで来ると、バッと高く掲げた。「おとーさん、おかーさん、結婚おめでとー!」そこには紗良の顔と杏介の顔、そして『おとうさん』『おかあさん』と大きく描かれている。紗良は目を丸くし、驚きのあまり口元を押さえる。海斗とフォトウエディングを計画した杏介すら、このことはまったく知らず言葉を失った。しかも、『おとうさん』『おかあさん』と呼ばれた。それはじわりじわりと実感として体に浸透していく。「ふええ……海斗ぉ」「ありがとな、海斗」うち寄せる感動のあまり言葉が出てこなかったが、三人はぎゅううっと抱き合った。紗良の目からはポロリポロリと涙がこぼれる。杏介も瞳を潤ませ、海斗の頭を優しく撫でた。ようやく本当の家族になれた気がした。いや、今までだって本当の家族だと思っていた。けれどもっともっと奥の方、根幹とでも言うべきだろうか、心の奥底でほんのりと燻っていたものが紐解かれ、絆が深まったようでもあった。海斗に認められた。そんな気がしたのだ。カシャカシャカシャッシャッター音が軽快に響く。「いつまでも撮っていたい家族ですねぇ」「ええ、ええ、本当にね。この仕事しててよかったって思いました」カメラマンは和やかに、その様子をカメラに収める。他のスタッフも、感慨深げに三人の様子を見守った。空はまだ高い。残暑厳しいというのに、まるで春のような暖かさを感じるとてもとても穏やかな午後だった。【END】

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