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第92話

Auteur: 雨の若君
宝石を棚にしまっているとき、素羽は夏輝から電話を受けた。内容は離婚に関することだった。

ガラス戸に映る素羽の細身の姿。宝石のきらめきは彼女の心を惑わすことなく、むしろ彼女の理性をより研ぎ澄ませていた。

「離婚するわ」

たった一言で、素羽の決意は明らかだった。

彼女は心が強いわけじゃない。一度のビンタや、たまにくれる甘い飴玉みたいな優しさ――そんなものにもう揺さぶられたくなかった。

司野がもし離婚協議書にサインしないなら、裁判所に持ち込むまでだ。

彼女の覚悟を察した夏輝も、すぐに手続きを始めた。

その頃、司野は会議を終えたばかりだった。間もなく、岩治がオフィスのドアをノックした。

「社長、奥様からお荷物が届いています」

そう言いながら、岩治は封筒を差し出した。

司野は眉を少し上げる。「何だ?」

自分が補充したばかりの彼女のジュエリーコレクション、そのお礼だろうか?

岩治は答えた。「中身は確認しておりません」

司野が封筒を開けると、中から飛び込んできた大きな文字に、表情が一瞬固まった。

岩治もその文字を見た。

「離婚協議書」――この五文字は、嫌でも目に入るほど
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