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第3話

作者: うとうと独り言
父は一晩中起きて待っていたが、私は帰ってこなかった。

母が寝室から出てきた。

「あの子、まだ帰ってないの?」

父は食卓の前で煙草を吸っていた。

「朝、近所を何軒か回って聞いてみたが、誰も見ていないそうだ」

「どうせ、どこかに隠れて私たちに当てつけてるのよ」

母は手にしていた汚れた寝具を乱暴に放り投げた。

「あの子の得意技じゃない。何か失敗するたびに、忘れたふりをして馬鹿なふりをして、私たちが叱れないようにするの。

今回はららを死なせかけたのに、また同じ手を使うつもり?見つけたら、ただじゃおかないから!」

妹は小さな椅子に座って積み木で遊んでいたが、その言葉を聞いて顔を上げた。

「ママ、お姉ちゃんを叩かないで」

「ららはいい子ね」

母はすぐに優しい声に戻った。

「お姉ちゃんは、とても悪いことをしたの。ららを凍え死なせそうになったでしょう?悪いことをしたら、きちんと叱られなきゃいけないの。分かる?」

妹は分かったような、分からないような顔でうなずき、また積み木に目を落とした。

父はため息をつき、煙草をもみ消した。

「この町だって、それほど広くない。どこまで行けるっていうんだ。昨日、叱られて腹を立てて、誰かの家に泊まったんだろう」

父が言い終える前に、庭先から大場のおばさんのよく通る声が響いた。

「正志さん!そろそろ神社に集まる時間だよ!元旦祭が始まるよ!」

父は返事をして立ち上がった。

「元旦祭にはみんな集まる。琴葉が来たら、今度こそただじゃおかないぞ」

母もエプロンを外した。

そのとき、ソファの上に置かれた、まだ繕い終えていない布人形が目に入った。

あれは私の人形だった。

母がくれたものだ。

数日前、妹に腕を引きちぎられ、中の綿がはみ出していた。

母は、直してくれると約束していた。

けれど次の瞬間、母は大股で近づき、両手で人形を強く引っ張った。

びりっと、布の裂ける音がした。

もともと弱くなっていた生地は完全に裂け、綿が切れ目からあふれ出し、床一面に散らばった。

私は全身を震わせ、止めようと手を伸ばした。

けれど、また母の身体をすり抜けてしまった。

そうだった。

私はもう死んでいる。

その場に立ったまま、母がぼろぼろになった布切れをゴミ箱へ投げ捨てるのを見ていることしかできなかった。

「もう何歳だと思ってるの!いつまでこんな子どもじみたもので遊んでるのよ!一日中、忘れたふりをして馬鹿なふりをして、人形のほうが妹より大事だなんて!」

人形のボタンの目が床に落ちた。

何度か転がり、妹の足元で止まった。

妹はそれを拾い上げ、手のひらにぎゅっと握りしめた。

「行くぞ」

父が立ち上がった。

「琴葉も、神社の境内で様子を見ているかもしれない」

「そうね!今度ばかりは絶対に許さない。あの子は何でも忘れるんでしょう?だったら、一生忘れられないくらい叱ってやるわ!」

二人は家に鍵をかけ、妹の手を引いて村外れへ向かった。

「琴葉ちゃん、まだ帰ってこないの?」

近所の人が尋ねた。

「甘やかしすぎたのよ!」

母はすぐに答えた。

「昨日、少し叱っただけで腹を立てて飛び出して、一晩中帰ってこないんだから!もう17歳にもなるのに、少しも分別がないのよ!

みんなは知らないでしょうけど、あの子の病気だって……本当かどうか分かったものじゃないわ。覚えておかなきゃいけないことは忘れて、どうでもいいことはちゃんと覚えてるんだから。

この前だって、私が叱ったことをすぐ忘れて、にこにこしながら『今日の夕飯は何?』なんて聞いてきたのよ。腹が立つでしょう?」

「でも、病気なんだから、少しは大目に見てあげないと……」

「大目に見る?」

母の声が急に大きくなった。

「これ以上甘やかしたら、ますますつけ上がるだけよ!今回は絶対に思い知らせてやるんだから!」

私は何も言わず、母の後ろをついて歩いた。

涙が勝手にこぼれ落ちた。

お母さんは、ずっとそんなふうに私のことを見ていたんだ。

村外れの神社には、すでに大勢の人が集まっていた。

境内の御神木には注連縄が張られ、白い紙垂が雪風に揺れていた。

拝殿の前には神饌が供えられ、境内では焚き火の煙が朝の光の中へ細く立ち上っていた。

母は人混みの中を何度も見回した。

その顔は、だんだん険しくなっていった。

「どうしていないの?」

「姿を見せたら叱られると思って、どこかに隠れてるんだろう。元旦祭が終わったら、一軒ずつ捜せばいい。地面の中に潜れるわけじゃないんだから」

私は目を瞬かせた。

お父さん、お母さん。

私は、この御神木の裏にあるくぼみの中にいるよ。

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