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第3話

Author: 久遠カナタ
「ないわ」

私の答えに、彰仁の瞳に一瞬、失望の色が走った。

「沙雪、お前は御影家との婚約を必ず解消しなければならない」

私は問い返した。

「私が婚約を解消したら、誰が御影家に嫁ぐの?」

彰仁は思わず口を滑らせた。

「もちろん芹奈が……お嬢さま」

胸の奥に冷たい笑いが広がる。

自分の天真爛漫さと愚かさに――

彼が私の想いを受け入れたのは、私の粘り強さに心を動かされたからではなかった。

すべては、私に婚約を解消させ、芹奈を堂々と送り込むための計算だったのだ。

失言に気づいたのか、彰仁は視線を逸らした。

「俺たちはすでに一緒にいる。お前が嫁いでしまったら、俺はどうなる?」

その声にはかすかな震えが混じっていた。

危うく、また騙されるところだった。

彼が恐れているのは、芹奈が順調に御影家に入れなくなること。私の存在など関係ない。

私は唐突に口にした。

「御影家の後継者は、白川芹奈を好きになると思う?」

長い沈黙。

答えは返ってこないと思ったそのとき、彼は小さく口を開いた。

「そう思う」

胸を締めつけるはずの苦しさはなく、むしろ淡い解放感があった。

「なら、あなたの願いは叶うわ」

「……何?」

聞き返す彼に、私はもう何も答えなかった。

互いに言葉を失っていると、ドアを叩く音が響いた。

「沙雪、入ってもいい?」――芹奈の声だ。

その声を聞くなり、彰仁はすぐに私の手を放し、恭しく横に控えた。

私が黙っていると、芹奈は勝手に扉を開けて入ってきた。

「彰仁さんもいたね」

彼女は一度も彰仁を「執事」と呼んだことはない。

いつも淑やかに、甘やかに「彰仁さん」と呼ぶ。

その瞬間、普段は無口な彰仁の頬に、かすかな朱が差した。

そして珍しく口を開いた。

「白川さまに、オレンジジュースをお届けに」

芹奈はにっこりと頷き、嬉しそうに言った。

「私ね、もうすぐお嫁に行くの。沙雪、一緒にウェディングドレスを選んでほしくて」

彰仁の表情が固まり、朱が一瞬で怒気に変わった。

「どうして急に……どこの家に?」

我を忘れた彰仁は、自分の立場を越えたことにも気づかない。

今度は芹奈が恥じらう番だった。

唇を噛みしめ、小さく「秘密」と告げる。

彰仁がさらに言葉を重ねようとしたそのとき、芹奈は一本の電話に呼び出されて部屋を出ていった。

残された彰仁は心ここにあらず。

不意に机の上の香炉を倒してしまった。

灼けた灰と炉壁が私の腕を直撃し、水ぶくれがみるみる広がる。

「……っ!」思わず息を呑んだ。

だが彰仁は、なおも芹奈の背中を追いかけるように視線を外へ向けていた。

「御影彰仁!」

私の声で、ようやく彼は我に返り、床に転がる香炉と私の火傷に気づいた。

その瞳に、一瞬、痛ましさと迷いがよぎったのは錯覚だろうか。

彼は初めて私の傷を手に取り、丁寧に薬を塗った。

だが、その口からこぼれる言葉は――やはり芹奈のことだった。

「沙雪……もう芹奈を敵視しないで。あの子は本当に哀れなんだ……

もうすぐ嫁に行くんだ。お前にとって脅威にはならない」

私は思わず腕を引いた。

痛みに顔を歪める――だが、その痛みより胸の痛みの方がずっと鋭かった。

哀れなのは誰か。

母を失い、父に愛されなかった私ではないのか。

涙がこぼれ落ちた。

それを彼は「傷が痛むから」だと勘違いした。

最後に、彼は諦めたように小さく吐息を洩らした。

「もうすぐお前は御影家の後継者と婚約する。だが、お嬢さまは――あの身分では、良縁を望めない」

その声は小さかったが、はっきりと私の耳に届いた。

彼は言った――「彼女を補ってやるべきだ」と。

私は心の中で叫んだ。

補う必要なんてない。

だって――彼と結ばれるのは、白川芹奈なのだから。

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