Se connecter幾つもの街を抜けて、セリス達はやっとゼルヴァニア王国・首都エルデンブルクに辿り着いた。
エルデンブルクの街は、石造りの建物が整然と並び、風格ある街並みを形作っている。ゼルヴァニア王国の首都にふさわしく、広場には行商人が店を広げ、獣人やエルフといった多種族の人々が行き交っていた。街の中央に「知識の塔」がそびえ立っているのが見えた。
陽が傾き始めると、活気のあった街も徐々に静まり、昼間の喧騒が嘘のように消えていく。セリスたちは人の流れに逆らうようにして、街の中央にそびえる「知識の塔」へと向かった。
*** 知識の塔・内部
塔の中はひんやりとしており、古びた書物の香りが漂っている。壁一面に並ぶ書棚には、ゼルヴァニアの歴史や魔道に関する書物がぎっしりと詰まっていた。高い天井に取り付けられたランプが柔らかな光を灯し、淡い橙色が書架をぼんやりと照らしている。
「おぉ……ここは相変わらず壮観だな」
ライルが感嘆の声を漏らす。セリスは一歩、また一歩と足を踏み入れた。まるで過去の記憶がこの場所に染み付いているかのように、どこか懐かしさを感じる。ここで自分の探している答えが見つかるのかもしれない──そう思うと、胸の奥がざわめいた。
「お探しの本は?」
低く落ち着いた声が響いた。奥から現れたのは、知識の塔の管理者 エドガー だった。
「『王の書庫』について知りたいの」
セリスが切り出すと、エドガーは静かに目を細めた。
彼は壮年の学者らしく、灰色の髪を背中まで伸ばし、深い皺の刻まれた顔に知識の重みを宿している。長いローブを纏い、指先には無数のインクの染みがついていた。書物の山に囲まれた書斎の奥、薄暗い蝋燭の光の下で、彼はゆっくりと息をつく。
「それを求めるとはな」
静かに呟きながら、エドガーは古びた本の山を一瞥した。室内には乾いた紙の匂いと、微かにインクの香りが漂っている。壁一面の書棚には、時間の重みに耐えかねたかのように歪んだ背表紙が並び、その中に
*** ゼルヴァニア王国・首都エルデンブルク 幾つもの街を抜けて、セリス達はやっとゼルヴァニア王国・首都エルデンブルクに辿り着いた。 エルデンブルクの街は、石造りの建物が整然と並び、風格ある街並みを形作っている。ゼルヴァニア王国の首都にふさわしく、広場には行商人が店を広げ、獣人やエルフといった多種族の人々が行き交っていた。街の中央に「知識の塔」がそびえ立っているのが見えた。 陽が傾き始めると、活気のあった街も徐々に静まり、昼間の喧騒が嘘のように消えていく。セリスたちは人の流れに逆らうようにして、街の中央にそびえる「知識の塔」へと向かった。 *** 知識の塔・内部 塔の中はひんやりとしており、古びた書物の香りが漂っている。壁一面に並ぶ書棚には、ゼルヴァニアの歴史や魔道に関する書物がぎっしりと詰まっていた。高い天井に取り付けられたランプが柔らかな光を灯し、淡い橙色が書架をぼんやりと照らしている。「おぉ……ここは相変わらず壮観だな」 ライルが感嘆の声を漏らす。 セリスは一歩、また一歩と足を踏み入れた。まるで過去の記憶がこの場所に染み付いているかのように、どこか懐かしさを感じる。ここで自分の探している答えが見つかるのかもしれない──そう思うと、胸の奥がざわめいた。「お探しの本は?」 低く落ち着いた声が響いた。 奥から現れたのは、知識の塔の管理者 エドガー だった。「『王の書庫』について知りたいの」 セリスが切り出すと、エドガーは静かに目を細めた。 彼は壮年の学者らしく、灰色の髪を背中まで伸ばし、深い皺の刻まれた顔に知識の重みを宿している。長いローブを纏い、指先には無数のインクの染みがついていた。書物の山に囲まれた書斎の奥、薄暗い蝋燭の光の下で、彼はゆっくりと息をつく。「それを求めるとはな」 静かに呟きながら、エドガーは古びた本の山を一瞥した。室内には乾いた紙の匂いと、微かにインクの香りが漂っている。壁一面の書棚には、時間の重みに耐えかねたかのように歪んだ背表紙が並び、その中に
「……逃げられたか」 ライルは悔しげに剣を納める。 セリスも息を整えながら、周囲を警戒した。 (帝国の追っ手……やっぱり、どこかで監視されていたんだ)「セリス、大丈夫か?」 ライルが振り向いて尋ねる。「うん……大丈夫。でも、たぶんこれからもっと追われることになる」「ああ……それに、あいつらが逃げたってことは、すぐに増援が来るかもしれねぇな」 セリスはギュッと拳を握った。 (このままでは、どこにいても帝国に追われ続ける) (だけど……私は、逃げるだけじゃなくて、真実を探しに行かないといけない) 彼女は決意を新たにし、ライルを見つめた。「ライル、《王の書庫》を探しに行こう」「……ああ。そのつもりだったさ」 ライルが微笑む。 次の目的は、王国の知識の宝庫——《王の書庫》の手がかりを見つけること。 だが、その前に……「一旦、町を離れよう。このままじゃ、また敵が来る」「うん!」 二人は図書館を後にし、すぐに町を抜けるために動き出した。 *** セリスたちの進む獣道は、鬱蒼と茂る森の奥へと続いていた。木々が風にざわめき、遠くで鳥の鳴き声が響く。だが、その静寂を破るように、木の上から乾いた声が響いた。「そこまでだ、旅人ども!」 木々の間から十数人の男たちが姿を現す。肩に皮の鎧をまとい、粗野な布で顔を隠した盗賊たちだ。手には刃こぼれした剣や棍棒を握りしめ、殺気を露わにしている。 セリスはすぐに状況を理解した。 待ち伏せ──ここは奴らの縄張りだ。「おいおい、物騒じゃないか。せめて話し合いってもんがあるだろ?」
— 追跡者の影(3)— 翌朝、セリスとライルは《ルーヴェンの町》の図書館を訪れた。 図書館は石造りの堂々とした建物で、町の中央広場に面していた。中に足を踏み入れると、古い書物の香りと静寂が広がる。天井まで届くほどの本棚がずらりと並び、かすかな蝋燭の灯りが影を作り出していた。「ここなら、何か手がかりが見つかるかもしれないな」 ライルは辺りを見回しながら呟いた。 セリスは図書館の奥へと進む。 歴史書や王国の記録が収められている棚を探しながら、ふと気づいた。 ——古い時代の記録が、ほとんど抜け落ちている。「ライル……これ、見て」 セリスが手に取った本のページを開くと、エルセリア王国の記述が不自然に途切れていた。 まるで、誰かが意図的に削除したかのようだった。「……やっぱり、王国の記録は抹消されているのか」 ライルが眉をひそめる。 エルセリア王国の滅亡から十年以上が経過している。 その間に、帝国によって歴史が改竄されたのだろう。 だが、それでも完全に消し去ることはできないはずだ。 セリスは慎重にページをめくりながら、小さな手がかりを探した。 そしてしばらくして、セリスは一冊の古びた本を見つけた。 『失われた王国とその遺産』 表紙に刻まれた題名を見て、彼女は胸が高鳴るのを感じた。 (もしかして……エルセリア王国についての記述が?) 急いでページをめくると、そこには驚くべき内容が記されていた。 ——《王の書庫》、エルセリア王国の王族が代々守ってきた知識の宝庫。 ——王国の歴史、魔法、技術、すべての記録がそこに眠る。 ——だが、王国滅亡と共に、その在処は歴史から消え去った。
— 追跡者の影(2)— 戦いの余韻が、森の静寂に溶けていく。 セリスは肩の傷を押さえながら、荒い息をついていた。 ライルも剣を収め、周囲を警戒する。「とりあえず、ここを離れるぞ」 ライルが短く告げた。 戦いの音が響いた以上、他の帝国兵が気づいていないとは限らない。 早く森を抜け、次の目的地へ向かう必要があった。「セリス、歩けるか?」「……大丈夫、行こう」 痛みはあるが、今は止まっている場合ではない。 セリスは剣を握りしめ、ライルの後を追った。 *** 森を抜けた先には、小さな町《ルーヴェン》があった。 石畳の道が整備され、木造の建物が立ち並ぶ。 町の広場には噴水があり、行き交う人々の活気が感じられた。「ここならしばらく身を隠せるかもしれないな」 ライルは町の様子を見回しながら呟く。 黒鴉の兵士たちは全滅したが、彼らが報告を済ませていた可能性は高い。 帝国が次の追っ手を送り込むのは時間の問題だろう。「まずは宿を探そう。それから情報を集める」「うん……」 セリスは小さく頷きながら、胸に手を当てた。 あの戦いの最中に甦った記憶——あれは一体何だったのか。 ほんの一瞬だったが、まるで別人になったような感覚があった。 剣を握る手が、自然に動いたあの瞬間—— (……もしかして、王国の誰かの記憶?) 自分の中にある《記憶の継承》の力。 その意味を知るためにも、もっと多くの記憶を取り戻す必要がある。 (エルセリア王国の過去……そして、私の使命……) 深く考え込むセリスの横で、ライルが歩みを止めた。
— 追跡者の影(1)— 夜が明ける頃、セリスとライルは森の中を抜け、東へと歩を進めていた。「次の街は?」 セリスが問いかけると、ライルは地図を広げながら答える。「ここから北東に二日ほど進んだ場所に《ルーヴェン》という町がある。交易が盛んな町で、情報が集まりやすい」「……そこで手がかりを探すの?」「そうだな。まずはお前の“記憶”に関わる情報があるかどうか調べるのが先決だ」 セリスは小さく頷いた。 ——エルセリア王国の滅亡の真実。 ——王族に受け継がれる記憶の力。 それらを知るための手がかりを求め、彼女たちは旅を続ける。 だが、その背後には確実に追跡者の影が迫っていた。 *** 帝国軍拠点・指令室「……逃げられた、だと?」 低く冷たい声が響く。 ヴァルガルド帝国軍の指令室。 そこには、漆黒の軍服をまとった男が立っていた。「申し訳ありません、ヴァルドリッヒ将軍……」 報告に来た兵士は額に汗を浮かべながら頭を下げる。 ヴァルドリッヒ・カインツ。 帝国最強の将軍と称される男。「傭兵風の男に邪魔され、捕縛に失敗しました。しかし、相手はおそらく……」「ライル・フェンリス……か」 ヴァルドリッヒは小さく呟いた。「ゼルヴァニアの“狼”……なるほど、厄介な相手だ」 その名を知っているのかと、兵士は驚いたように顔を上げる。 ヴァルドリッヒは椅子に座り、指を組みながら静かに続けた。「だが、今はそれよりも重要なのは……“あの娘&rdqu
夜の静寂の中、草を踏む音と、かすかに吹き抜ける風の音だけが響く。 帝国兵たちの追跡はひとまず振り切ったようだが、それでも緊張は解けない。 ライルの戦いぶりは尋常ではなかった。 ただの傭兵とは思えないほどの剣の腕前、そして冷静な判断力— それに、彼がセリスに向ける視線には、どこか探るような鋭さがあった。 しばらく歩いたところで、ライルが足を止めた。「ここなら、少し休める」 視線の先には、大きな岩壁がそびえていた。 その影にひっそりとした洞窟が口を開いている。「この辺りは知ってる。傭兵時代に何度か使ったことがある場所だ」「……ありがとう」 セリスは少し警戒しつつも、疲れた身体を休めるために洞窟の中へと入った。 洞窟の内部は意外にも広く、壁には古びた焚き火の跡が残っていた。 ライルは慣れた手つきで薪を積み上げ、火打石を使って火をつける。 ゆらめく炎が洞窟内を淡く照らし、ようやく少し安心できた気がした。 セリスはそっと腰を下ろし、深いため息をついた。「……今日は色々ありすぎた」「だろうな」 ライルは焚き火を見つめながら、静かに言った。「帝国に追われる理由、聞いてもいいか?」 セリスは一瞬、口ごもった。 (この人に、どこまで話していいんだろう……) 彼は助けてくれた。でも、完全に信用できるわけではない。 それに、自分の正体を明かせば、彼がどう反応するかも分からない。「……言いたくないなら無理に聞かない」 ライルは肩をすくめて、あっさりと話を切り上げた。 その態度がかえって意外だった。「だがな、一つだけ忠告しておく」 彼は炎の揺らめきを見つめたまま、低い声で言った。「お前、自分がどれだけ危険な立場にいるのか、本当に分か