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第344話

Author: 一匹の金魚
エレトンテックは立ち上がったばかりで、業界では誰もがその将来に大きな期待を寄せている。

今では真衣に全く役に立たないと言われ、むしろ足を引っ張っているとまで言われている。

「外山さん、もしあなたがこのことについて疑問があるのであれば、エレトンテックがこのプロジェクトを推進できる実力があることを示してください」

真衣はパソコンを閉じてUSBを抜き、「私の知る限り、あなたたちの資金繰りはもう破綻しているはずです。このプロジェクトの進捗が遅れているということは、この国の発展を遅らせているのと同じことです」と言った。

「外山さん、よくご検討ください」

萌寧の顔色が一変した。

この件は自分がすでに情報を封じ込めたはずなのに、なぜ真衣が詳しく知っているのだろう?!

「これはただのデタラメです」萌寧は冷たい表情で言い放った。「九空テクノロジーは、エレトンテックをライバルとして警戒しているだけです――」

真衣は自席に戻り、パソコンを置くと、萌寧の言葉を聞きながら肩をすくめた。「ライバルとして切磋琢磨しましょう」

真衣は何も怖くない。エレトンテックはそうでもないだろう。

はっきりと見えるところで比べれば、どちらが上かはすぐに分かる。

その時だった。

政府関係者が立ち上がった。

「これはあなたたち数社の内部協力の問題であって、我々はただ成果が見たいだけです」政府関係者は礼央を見て言った。「高瀬社長、あなたが後は決めてください」

政府関係者はそう言うと、会議室から出て行った。

ここからは内部の問題だ。政府関係者がここにい続けても意味がない。

政府関係者が出ていくと、真衣と安浩もパソコンと書類を片付け始めた。

「礼央、どうか私のことを信じて。エレトンテックは寺原さんが言うような状態ではないの」

エレトンテックは確かに資金繰りの部分で問題を抱えており、前回の住岡社長の件で大きな打撃を受けている。

今回また新たな問題が発覚すれば、エレトンテックはもはや風前の灯だ。

しかし、萌寧はどうにか会社を支えなければならない。

礼央は椅子にもたれかかり、萌寧を一瞥すると、意味深に笑った。「もちろん、君にその実力があると信じているよ」

礼央はペンを置き、それ以上は何も言わなかった。

湊は空気を読み、このタイミングで口を開いた。「外山さん、エレトンテックの影響でプ
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Comments (1)
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カネゴン
1日 7話 だと 話に動きがあって面白い! つい手に汗握ってしまう! 後は翔太の父親が誰か分かればスッキリする 前に戻っていくつかの話を拾っておやっと思うところがあったまたそのうち皆さんに確認してもらいたい
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