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第3話

Author: テバサキカラアゲ
プライベートクラブのパーティーは、贅を尽くした空気が隅々まで行き渡り、息をするだけで気後れするほどだった。

陸は千鶴を伴い、せっせと彼女をビジネスパートナーたちに紹介して回っている。

「こちらは高宮千鶴。親同士が古くからの付き合いで、子どもの頃から兄妹のように育った幼なじみだ」

そして私は、「妻は体調が悪くて、賑やかな場所は好きじゃないんだ」という彼の軽い一言で、場の隅へと追いやられた。

周囲のひそひそ声が、針のように耳に突き刺さる。

「あれが陸の奥さん?ちっとも色気がないわね」

「千鶴の格好を見なさいよ。全部最新のブランド品。それに比べて、奥さんはまるで家政婦じゃない」

「私が男だったら、やっぱり千鶴を選ぶわ」

そんな囁きを、私はただ無表情のまま受け止めていた。

千鶴は親しげに陸の腕に絡みつき、私の前まで来ると、わざとらしく心配そうな口調で言った。

「夏希さん、どうして一人で座ってるの?もしかして具合が悪いの?ねえ、先に帰ったら?陸のことは私がちゃんと見てあげるから」

すぐに陸の声が響いた。それは隠そうともしない施しの色を帯びていた。

「いい加減にしろ。ここで恥を晒すな。何か自分で食べ物でも探してこい」

その時、耳障りな火災報知器の警報音が、突如として喧騒を切り裂いた。

「火事だ!逃げろ!」

一瞬にして会場はパニックに陥り、悲鳴と叫び声が渦を巻く。

換気ダクトから黒煙がごうごうと噴き出し、喉が焼けるように苦しく、目も開けていられない。

私は慌てた人々に強く突き飛ばされ、床に倒れ込んだ。足首に激痛が走り、もう立ち上がれなかった。

すぐ近くの個室の入口から火の手が上がり、熱波が顔に押し寄せ、肌を焦がす。

絶望の中、私は床を這いずり、煙にむせて息が詰まりそうになった。

意識が朦朧とする中、見慣れた革靴が視界に入る。

陸だ!

私を助けに来てくれたのだ!

その瞬間、これは幻覚なのだとさえ思った。それでも、心の奥底から愚かで切実な希望が湧き上がる。

私は本能のまま手を伸ばし、出産の日、手術室の前でそうしたのと同じように、彼のズボンの裾を強く掴んだ。

「陸、助けて……足が……」

しかし彼は私を一瞥することもなく、視線は私を越え、背後で咳き込む千鶴へと注がれた。

「千鶴!千鶴は喘息なんだ、煙はだめだ!」

陸は駆け寄ると、千鶴を軽々と抱き上げた。

私はまだ、彼のズボンの裾を掴んでいた。それは、生きようとする本能そのものだった。

邪魔だと感じたのだろう。陸は苛立たしげに首を垂れ、一瞥を私に投げた。

その直後、私の手を蹴り飛ばした。

「自分で這って出ろ!邪魔だ!」

そう吐き捨てると、彼は千鶴を抱えたまま振り返ることもなく、安全通路へと消えていった。私に残されたのは、ただ、冷徹きわまりない背中だけだった。

その瞬間、私のすべての希望は、心臓ごと踏み砕かれた。

私は床に横たわり、迫り来る炎を見つめながら、静かに目を閉じた。

もういい。

死んでも構わない。

まだ一度もこの世界に触れることのなかった、あの子の元へ行こう。

死を待っていたその時、突然、力強い腕が私の体を地面から抱き上げた。

低く落ち着いた声が、耳元で響く。

「怖がるな。必ず連れ出してやる」

必死に目を開くと、黒煙に煤けた顔が見えた。

消防服に身を包んだ男が、私を抱きかかえ、炎の中から飛び出していく。

少し離れた下の階では、陸が千鶴に心配そうに声をかけ、焦った表情を浮かべていた。

一方、私を抱く消防士の足取りは、微塵もためらわない。

完全に意識を失う寸前、そのヘルメットの奥に、見覚えのある瞳が見えた気がした。

真島……零……

高校の同級生だった、真島零(まじま れい)だ。
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