第414話

礼央は朋世の長々とした説教など適当に聞き流し、前半の言葉だけに過剰に反応した。

「どういうことだよ、智美に会ったって？もう何してくれてんだよ！俺を怒らせるつもりか！」

朋世が心外だと言わんばかりに声を張り上げる。「あなたのためを思ってやったのに、何その態度は！私はあなたの叔母よ！」

だが、礼央の怒りはそれ以上だった。「だから叔母さん、俺は人の彼女を奪おうと必死なんだよ。頼むから余計な真似しないでくれ！本当にもう……あとで文句言いに行くからな！」

そう吐き捨て、一方的に電話を切った。

電話の向こうで、朋世は怒りのあまり目眩がするほど怒っていた。

「このバカ息子……！せっかくの名門令嬢を断ってまで、人の恋人を奪おうとするなんて。本当にどうしようもない子だわ！」

一方、智美は悠人を迎えるため空港へ向かっていた。

到着ロビーで智美は目を丸くした。現れたのは悠人だけではなかったからだ。

彼の傍らには兄の和也の姿があった。和也の腕の中では、色白の幼子が好奇心いっぱいの瞳で周囲をきょろきょろと見回している。

そしてその隣には、一人の若い女性が寄り添っていた。

モデルのように抜群のスタイル。繊細で華やかなその顔立ちは、どこか異国の血を感じさせるエキゾチックな魅力を放っている。

悠人が歩み寄り、紹介してくれた。「智美、紹介するよ。こちらは兄の和也、義姉の美穂、それから甥っ子の謙太だ。

……ごめん、和也が兄だということを今まで黙っていて」

和也が人懐っこい笑顔で智美に挨拶する。「智美さん、弟を責めないであげて。こいつは昔から変なところで負けず嫌いでしてね。岡田家の威光に頼らなくても事業を成功させられると証明したがるんだ。もう注意するのも面倒になったよ」

智美はふっと微笑んだ。「ええ、もう聞いたわ。理解しているから」

悠人には悠人のプライドがある。

それに以前、悠人は自分の身分を明かそうとしたことがあった。ただ様々な事情が重なり、タイミングを逃してしまっただけだ。

すると美穂が近づいてきて、ポケットからのし袋を取り出し、智美の手に握らせた。

温かな微笑みを向ける。「これ、お義母さんから預かってきたの。『時間があったらぜひ家に遊びにいらして』って」

智美は戸惑った。

自分はバツイチで、悠人は未婚。しかも相手はあれほどの家柄だ。ふと、理由のない劣等感