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理想のパートナー
理想のパートナー
Author: 十月

第1話

Author: 十月
攻略に失敗した私は、「理想のパートナー」システムとやらに無理やりバインドされて、今や黒木将太(くろぎ しょうた)にとっての理想の妻を演じている。

彼と酒井千恵(さけい ちえ)のスキャンダルが流れれば、私はすぐさま表に立って釈明する。

千恵が私を陥れようと嘘をつけば、彼は何も言わず黙認し、私は慌てて自分から非を認めて謝る。

それどころか、彼が千恵に子どもを作らせても、私は騒ぎも怒りもしない。

むしろ素直に離婚協議書を差し出して、黒木家の奥様の席を千恵に譲る。

なのに、彼はなぜか不機嫌になる。私をベッドに押し倒し、怒りの色を湛えた瞳で言い放つ。

「咲(さき)、俺はお前に大人しくしてろと言ったんだ。俺を突き放せなんて、誰が言った?

今のお前は、俺を責めてるのか?」

私は呆然としたまま、彼の顔を見上げる。

「これが、あなたの望みじゃなかったの?」

……

将太が家に帰ってくる。

彼の体からは見慣れない香水の匂いがふわりと漂い、真っ白なワイシャツの襟元には、うっすらとした口紅の跡がついている。

優しい笑みを浮かべながら、スマホを片手に向こうの誰かとボイスメッセージをやり取りしている。

「いい子にしてろよ、言うこと聞け」

私はリビングのソファでテレビを見ている。将太が私を見た瞬間、さっきまでの甘い表情が一気に冷めて、声のトーンも冷たくなる。

「まだ寝てなかったのか?」

「ほら」

私はテレビ画面を指差す。

大画面のテレビには、十人以上の記者に囲まれている私が映っている。黒いマイクが次々と私の前に突き出される。

「奥さん、昨日のトレンド見ましたか?黒木社長が新人女優の酒井千恵さんと浮気したって本当ですか?」

「黒木社長と酒井さんが夜、一緒にいたことについてどう思いますか?」

……

昨日、将太と千恵が一緒にチャリティーパーティーに出席し、並んで会場を出入りする映像がSNSでバズっていた。

映像の中で、千恵は真っ赤なロングドレスを身にまとい、将太の腕にしっかりと手を絡めている。人ごみの中でまるで花のように華やかだ。

でも将太は、昔から赤い服を嫌っていた。

前に、私のクローゼットの中の赤い服を全部処分して、眉をひそめてこう言った。

「黒木家の奥さんはもっと品のある大人になれ。安っぽい雰囲気は似合わないぞ」

化粧も嫌いだと言っていた。「すっぴんが一番清楚だ」と。

結婚して五年、一度も化粧を許してくれなかった。

でも、千恵は真っ赤なルージュを塗り、将太にそっと唇を寄せて、彼の口元にキスを残していた。そこには甘い空気が漂っている。

そして、私が何年頼んでも一度もつけてくれなかった結婚指輪。

あの動画では、千恵と将太が指を絡ませ、薬指にはペアリングがきらめいていた。

その時、私はやっと気づいた。将太は赤い服が嫌いなわけじゃない。女の人が綺麗に着飾るのも、本当は嫌じゃない。指輪をしたくない理由も違う。

ただ、私が相手だから、私がお願いするから、全部ダメだっただけ。

将太は私を愛していない。

私はもう涙も枯れて、システムから「理想のパートナー」のプログラムを導入する提案を受け入れた。

昔、口論になるたび、将太は私に言った。「嫉妬深いし、自立してないし、空気も読めないし、理想の奥さんじゃない」

でも、プログラムを導入した今の私は、全て将太の気持ちを第一に考え、何もかも彼の望み通りに振る舞う。

だから、テレビの中の私は落ち着いて微笑み、手で「終わり」のジェスチャーをする。そして一つのマイクを受け取り、カメラに向かって優しく笑う。

「将太と酒井さんは、ただの仕事仲間です。

今ここにいるメディアの方々のお名前は全て記録しました。今日の夜12時までに、黒木グループの弁護士から通知が届く予定です」

将太が私の後ろでテレビを消す。

彼は眉を少しひそめ、不機嫌そうな顔をしている。

「理想のパートナー」プログラムで改良された私は、すぐに彼の機嫌を気にして、不安げに声をかける。「どうしたの?今日の私の対応、何か間違ってた?」

三ヶ月前、同じようなことがあった。

あの時の私は動揺して、記者に「黒木社長が酒井さんと一夜を過ごした」と言われて、思わず涙ぐんでしまった。

その夜、私は将太に真相を聞こうとした。だけど、彼は「メディアの前で恥をかかせた」と私を叱り、「表に出せる妻じゃない」と言った。

それから二週間、将太は一度も家に帰ってこなかった。

私は会社まで押しかけて大ゲンカしたけど、そこで見たのは、千恵が将太の膝の上に、親しげに腰かけている姿だった。

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