로그인「神威【鑑定】」 きゅう、と魔物の指揮を執る魔物にピントを合わせる。【鑑定結果:種族名/魔族ダークエルフ(闇魔術系) 固有名/オグロ】 魔族?【魔族とは敵対勢力に属する死物の種族名の一種であり、下から魔獣、魔物、魔族、魔人と続く。そのトップに立つのが魔神であり即ち滅亡の神、敵対勢力の長である】 なるほどね。これまで出てきた魔物よりワンランク上ってことか。あのワー・ベアが言っていた通り、いよいよ上層部がお出ましになる事態なわけね。 しかし……オグロとかいうヤツ、俺を生きたまま捕まえようって考えてる時点で、頭が回るとは思えないなあ。 頭の中に浮かび上がったそいつのステータスに目を通して、俺は肩を竦めた。「な……なんだ……? いや、私は魔族、魔物の上に坐する存在、それを生神が知って恐れ入ったのかもしれない。ならばそれを利用する価値はあるな」 ……うん、考え事は呟かないようにしようね。思い付きが全部出てるから。「うん、よし、私は偉い。大丈夫。出来る。これは神が私に与えたもうた機会だ。これを機会に私は魔人となり、神に傅く存在となるんだ。よし!」 どがっ。 うん、そりゃそうだろうなあ。ここまで考えてること口にして行動に移さない敵がいりゃあ、そりゃ俺だって蹴るだろうなあ。 後脚で蹴り飛ばしたプフェーアトは、くるりと体制を入れ替えて今度は前脚で魔族オグロを踏みつぶした。「ぐぎゅ」「魔族様が魔人様になっても俺は捕まえられないと思うけどねえ」 踏まれている魔族の前に座った俺の口角がまた上がる。「な、な、わ、私の考えを何故……いや、神に近い存在である私が神と同系統の考えを持ってもおかしくない……」「おーい、誰もこいつに、あんたは自分の考えを口にしちゃう癖があるよって教えてやんなかったのか? 可哀想に、自分の考え敵の前で喋っちゃった挙句不意付かれて潰されちゃったよ」「へ? へ?」 逃げ出そうとわたわたしていた魔物たちが、俺から一斉に目をそらす。うん、多分、知ってて誰も教えてやんなかったんだろうな。人望ねーな魔族様。「はい逃げんなよー? 逃げたら痛い目に遭う可能性が五倍増しになるからねー?」 オグロはプフェーアトに任せて、俺は魔物の群れに向かって歩いて行った。 多分、また、怖い笑みを浮かべているに違いない。 蒼海の天剣を握って
聖域に繋がるであろう入り口には、風が吹き荒れていた。 風の向こうからは怒鳴り声が聞こえてくる。「この風は」「本来は、気配を受け止められるようになったケンタウロスを清めて通す聖なる風が吹いていた」 プフェーアトは忌々しそうな声で言った。「今は……気配ではなく悲鳴が聞こえる」「悲鳴?」「近寄るな、触れるな、そう言う……声だ」「魔物どもが天馬をひどい目に遭わせている。そう考えていいか?」「ああ。中の連中は一網打尽にして蹴り飛ばしていいか?」「殺すなよ?」 俺はニッと笑った。「サーラがキレてるから。多分守護獣として属性は違うけど仲は良かったんだろうな。アウルムにキレた時もそうだけど、彼女がキレたら止められないぞ。力づくで抑えることは出来るかもだけど、俺、サーラの恨み買いたくないもん」「確実にひどい目に遭わされると言うんだな?」「簡単には殺されないだろうなあ。サーラは炎。キレたらだーれも止められない。事実、さっきの実験室も一瞬で蒸発したし。いや、一瞬で終わらせないだろうな。いたぶるだけいたぶるね。ミディアムレアに焼き上げて美味しくいただくだろう」「では、その前に蹴らせてもらうぞ」 俺が頷くと、プフェーアトは真っ先に風に突っ込んで行った。俺も続く。 辿り着いた部屋は、風が吹くほど広い部屋だった。通風孔でもあるのかと思ったが、そんなものはない。広い部屋のまん真ん中に一つの大きな土山があって、魔物どもがそこに群がっている。「急げ! 守護獣は連れ出さないと!」「ケンタウロスは?」「ソルドたちが向かった!」「くそっ、絶対ここに辿り着かないと思っていたのに!」「生神がもう入り込んでいるぞ!」「急げ! 移動だ!」 ががんっ! 岩を叩き割る音に、移動作業して気付かなかった魔物たちが飛び上がって驚き、恐る恐るこちらを向いた。「い、生神!」「グリフォンもいるぞ!」「ケンタウロスまで!」「焦るな! よく見ろ!」 怯えた顔を見せた魔物たちを一喝したのは、一番奥にいる大柄な魔物だった。「生神とケンタウロスとグリフォン、だけ、しかいない! グリフォンはいい実験材料だし、ケンタウロスを連れて行くことも、生神を捕えて実験に使うこともできるだろうが! そうすればこっちは大出世! 神様直々に褒美が与えられ
「生神様が連れているからただの獣ではないとは思っていたが……」「俺の神子でもあるから、神具でも持ち出さない限りコトラを倒せる敵はいないよ」「空の獣がいささか気にしているように見えるのだが」「だからお前のことはちゃんと信用してるって、グライフ。神子契約してないからって拗ねるなよ」 鷲の頭を撫でてやる。「信用してるから、お前に残ってもらったんだ」「ぐる?」「ここにいるのは大地と風の守護獣だ。空と風の神獣であるお前とは近しいだろ?」「ぐる」「多分守護獣は弱っている。封印されて、こいつらが研究に使おうかって程弱ってるって言ってたろ?」 研究魔物を足で転がしながら俺は言う。「風と空の神獣のお前なら、シンクロしやすいだろう。封印を解きやすいかもしれない」「ぐる!」 任せろ! と言わんばかりにグライフは胸を張った。 本当は神子契約したいんだけど、アウルムが真っ当に育ったら、その証として彼女に戻してやりたいと言う気持ちもある。だから主従契約は結んでいるけど神子契約を結んでいないと言うのがグライフの中途半端な立場。 俺は炎の縄をプフェーアトに渡し。端末の画面を見た。 本道を通る子供たちとコトラの周りに光点はない。サーラたちの光点がもう一つの光点が多い所に向かっていく。「こっち側に来る奴はないな」「仔馬を取り返されたことに気付いたのだろう。まだ捕えている仔馬や大人を連れて逃げようとしてるんだろうな」「そこでサーラに潰される、と」 サーラたちの光点は、光点が集まっている場所のすぐ傍から動かない。そして、光点が数体ずつ現れては、消えて行ったりサーラの光点の傍で動かなくなったり。多分、そこにいるケンタウロスを連れ出そうとやってくる魔物たちを陰で待ち伏せて、一体ずつ捕まえて締め上げてるんだろう。サーラのしゅうね……もとい、怒り……もとい、もとい……ダメだ、俺の少ない語彙力では今のサーラの感情を表現できない。「じゃあ、守護獣の方に行こう。きっと、封印されてるっていう守護獣も持ち出されようとする可能性がある」「封じられた守護獣が、無理やり移動させられたらどうなるか……」「移動させたらダメ、アウト」 俺はヘルプで調べて首を振った。「守護獣が封印されるのは、自分の意思と強要の二種類あってね。その地の龍脈……って通じた
「しゅ、守護獣です!」 研究者の魔物は悲鳴を上げた。「ケンタウロスの研究が一通り終わったので、今度は、守護獣の実験をすると!」「なっ」 プフェーアトが今度は2メートルを超える高さまで魔物の皆蔵を掴んで持ち上げた。「我らが守護獣を、実験に、使うと?」「は、はい! 封印し、いい具合まで弱って来たので、色々調査を始めようと!」「あ~あ」 俺は溜め息をついた。「そいつらはサーラに殺さ……もとい、締め上げられるな」 こんな近い場所まで来てしまえば、同じ守護獣である天馬の声を聞き漏らすサーラじゃない。きっとその声を聞く。サーラが乗りこめば……その場は灼熱地獄となるだろう。レーヴェやミクンも止めやしないだろう。 グイ、と炎の縄を引いて、悲鳴を上げる研究者を引きずる。「どうする? 外で待つ?」「外?」「十人ほどの子供と、大人……成人してるかは分からないけど、大人が一人、いる。俺の仲間が出入り口を塞いでいる。この神殿の中は把握してるから、君たちを戻すことができる」 子供たちは顔を見合わせた。「僕たち、大人じゃないから、足手まといになるよね」「……ん、まあな」 こういう時口先だけの慰めを言っても意味がないのは知っている。そして、この子たちは現実を受け止めることができると思う。「コトラ」「ぅな?」 それまで床に転がされた魔物を軽く爪で引っかいたり鉤爪に引っ掛けたりしていたコトラとグライフがこっちを見た。「この子たちをヤガリに預けて戻ってくる。出来るか?」「ぅな!」「ぐぅる……」「次に子供が見つかった時はグライフに頼むよ」「ぐぅるる!」 軽く魔物を蹴飛ばして悲鳴をあげさせて、グライフはコトラを見た。 コトラとグライフ、どっちが強そうに見えるか。 どうしたって足の太い子猫と成獣したグリフォン、見た目ではグライフに軍配が上がる。「大丈夫だよ」 不安そうな顔をした子供たちに、俺は笑った。「コトラは灰色虎だから。そこらの魔物なんて一掃できる。君たちを守りながら入口へ戻るなんて簡単な事」「灰色虎?」「山の獣?」「そう。山の聖獣。大きくないから弱そうに見えるけど、強いよ?」「大丈夫だ、外で仲間と待っていてくれ。オレたちはこんなふざけたことをした連中をとっちめなきゃならないからな」 プフェーアトの笑顔がダメ押しだったんだろう、子
俺はマザー・テレサやガンジー、キング牧師にはなれっこない。 たった一つ、こういう時におじさんが教えてくれたのは、『不要な暴力は揮うな』、だった。 こっちからは絶対に喧嘩を売るんじゃない、あっちが喧嘩を売って来て、それが回避不可能となって、相手に一発殴られた後だ。暴力と言う力は揮い時を誤れば自分に責任を押し付けられる、と。 小学校の時親なしと俺をからかってきた同級生や、金を要求してきた不良。こっちを弱いと思って喧嘩を売ってきた相手は、容赦なしで叩きのめした。 もちろん喧嘩を売られたからだけで叩きのめしたわけじゃない。その前に陰湿ないじめをしてきた連中だ。無視、仲間外れ、嫌がらせ。ゲーム感覚で行われたそれを耐えきって、俺は、反撃のタイミングを伺い、確実に相手が悪いと言われる証拠を揃えてから喧嘩を買って、勝ってきた。 だから、同級生も医者も警察も、あっちが悪いと言うしかなかった。敢えて言うなら過剰防衛だけど、相手が俺にやらかしたこと、証拠は全部取ってたし。 そして、目の前のこいつも。 俺にケンタウロスの実験体と言う形で喧嘩を売ってきた。臓器だけ生き残ったケンタウロスの再生が叶わないという一撃を受けた。 なら。 俺の攻撃のスイッチを押したのはこいつらだ。「他に、何をした?」「けん、研究を」「どんな?」「何も! 何も、してない! 研究しただけだ!」「お前の研究ってのは、子供を怯えさせたり脅したりして負の感情を引き出して、人間を解剖して魔獣化して俺に襲わせることか?」「ひぃぃぃぃっ」 ぐ、と拳を握り。 魔物の腹に叩き込む。「ぐ、ぐはっ! ぐほっ!」 もう一発。今度は顔面に。「ひぃぃ……」 今度は鼻血を垂らしながら、魔物は呻く。「たす、助けて……」「あの子たちも、きっとお前に、同じこと言ったよね?」 口角が上がっているのは自分でもわかる。分かるんだが抑えられない。「その時、お前は、どうしたんだい?」「ひ、ひ……」「そうだよな? なら、お前も同じ目に遭って当然だよな?」 胸倉をつかみ上げ、俺は笑う。「ご、めんな……」「ごめんで済んだら生神はいらないよな?」「生神様」 軽く肩を叩かれ、びくっと俺の身体が震えた。口角が下がる。「いいです、オレたちの為に怒ってくださったこと、感謝しておりま
ケンタウロスの子供たちが怯えた目でこっちを見ている。狭い部屋に押し込められ、ほとんど光のない場所で怯えさせることによって負の感情を増させるんだろう。「無事か!」 入ってきたプフェーアトを見て、子供たちの顔にパッと生気が戻る。「プラダリーアのプフェーアトだ! 助けに来た!」 わあ、と笑顔が開く。「先に……この負の力を【浄化】しちまわないとな」 俺は端末を構えた。子供たちは怯えて逃げようとするが、プフェーアトが大丈夫、と宥めた。「この方は生神様だ」「生神様?」「ああ。俺も捕まって人間を襲わされたが、生神様が戻してくれた。大丈夫だ」「【浄化】!」 柔らかい光に部屋の内部が浮かび上がる。あちこちに血の跡。子供たちには切り傷や打ち身がはっきりと刻まれている。恐らくは殺さない程度に傷つけられたんだろう。神威【再生】を使った後に魔法【回復】で怪我を治す。「うわあ……」 子供たちが感動の目で俺を見上げた。「大丈夫、だったろ?」 俺の笑顔に、子供たちを笑顔を戻した。 と、そこに飛び込んできたのは。「ガキども、命令を……!」 魔物が飛び込んできた。 ちょうど俺と目が合う。「ガキ……ども……?」「お前がこの子たちを痛めつけたのか」 俺は笑顔で言った。 生前、高校時代、同級生が、俺の笑顔が怖い、と言ったことがあった。 もちろん普通に笑うのは全然問題ないらしいが、俺はキレた時に笑う傾向があるらしい。その笑顔が下手なヤクザより恐ろしい、と同級生は言っていた。おじさんが亡くなって家と財産を継いだ俺に金を要求した不良共を叩きのめした時だったか。俺は、笑いながら、不良共を足蹴にしていたらしい。その笑顔がとことん、怖かった、と。 多分、今の俺は、その時と同じ……いや、それ以上の笑顔を浮かべている。「え、な、なんだ」「痛めつけた、んだな?」 胸倉をつかんで壁に叩きつけ、壁を背によろめく人型をした魔物の顔面の横にガンっと拳を叩きつけ。「なんで、そんなことをした?」「け……研究のためだ! 生神を殺すだけじゃなくても、ケンタウロスは興味深い実験体だから、色々探ってみたくなるのも当然だろう!」「思わないね」 ケンタウロスの子供たちの視線が俺の背中に刺さる。「――俺を殺そうとするなら自分の力でかかってこい。でないと――」