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不死身青年と賢狼烈女の悪戯Ⅰ_02

Author: kumotake
last update Huling Na-update: 2025-08-28 18:00:07

 10月、時刻は夕方を越して夜に差し掛かかろうとしている頃…

 今僕は、珍しくも友人と二人で、大学近くに位置するファミレスで夕食を共にしているところである。

 いや、「珍しく」なんて言ってしまうと、まるで僕には普段、夕食を共に食べる友人が一人も居ないように聞こえてしまうが、決してそんなことはない。

 大学の授業も後半に差し掛かり、前半とは違い『実験』のカリキュラムが導入されることでよりハードな学習内容となっている今日この頃…

 「友人なくして単位の取得は難しい」と言われている、我が私立神野崎大学 工学部 生物化学工学科 では、何を置いてもまず、友人とのコネクションがマスト事項なのである。

 なぜならそうすることで、協力して大学の課題やテスト勉強に取り組むことが出来るからだ。

 僕もそれのおかげで、大学前期の単位はなんとか落とすことはなく、全て得ることが出来たのだが…

 そのときに、実は今回同席している、友人であるところの彼女から、色々と試験対策の御指導を受けていたことは否めない。

 そうなると、これから先も僕は、情けなくも彼女を頼ることになるのだろう。

 友人としてこの少女に、頭を垂れながら頼るのだ。

 しかしながら今日は、なんだかそれが、その関係性が、まるで逆になるような状況だ。

 いや、逆にはならないか…

 なぜならこれは、彼女にとってそれは、『頼る』というよりも『お願い』という皮を被った、所謂『命令』に近いモノなのだから。

 その内容は、簡潔に彼女の口から、何も飾ることがなく言われたのだ。

 「荒木君、文化祭の実行委員をやってみる気はないかしら?」

 「文化祭の…実行委員…?」

 その言葉は、エビピラフを食べようとしていた僕の口から零れ落ちたモノだった。

 ついでにエビも落ちた…

 「えぇ、もし時間に余裕があるのなら、是非とも貴方に、お願いしたいのよ」

 「お前…そんな実行委員なんてやってたのか…しかも文化祭なんて…」

 「私だって、別に好きでやっているわけではないわよ、頼まれたのよ、高校の時の後輩に…『人手が足りていないからお願いします』って…それで断ろうにも断れなくって…」

 そう言いながら、彼女は自分の手元にあるパスタを、くるくると器用に取っていた。

 そしてそれを見て僕もまた自分の手元にあるエビピラフを掬って口に運び、租借する。

 そしてしばらく考え
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