フォートレス・フロンティア・オンライン

フォートレス・フロンティア・オンライン

last updateDernière mise à jour : 2025-11-29
Par:  ミカイノ宙En cours
Langue: Japanese
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軌道戦記シリーズ 第2弾 高校生リクが率いるのは、旧式装備の落ちこぼれeスポーツチーム『ジャンク・キャッスル』。 彼の秘密兵器は、ゲームの深淵で出会ったAI少女ユイとの絆と、常識外れの「ガラクタ」クラフト戦術だ 。 快進撃の果て、絶対王者に不正を疑われ、最大の武器であるユイとの連携を封じられてしまう。絶体絶命の決勝戦。少年とAIの絆は、エリートの支配を打ち破れるか。熱血SFクラフトバトル、開幕! 本作はAIによる校正・表現の調整を行っております。

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第1話 絶体絶命
 僕の名前はミシマ・リク。スペースコロニーのしがない公立高校 ヘロン第九高等学校に通う、高校一年生。ゲームが好きで、クラフトが好きで、……まあ、自分でも認めざるを得ない、どこにでもいるナードだ。 だけど、僕たちが今いるのは、そんな穏やかな日常が根こそぎ吹き飛ぶような、熱狂と喧騒の渦中だった。「うわー、すごい人……」 U19 eスポーツの地区大会会場。耳をつんざくようなアップテンポなエレクトロニック・ダンス・ミュージック、巨大スクリーンに繰り返し映し出される人気プレイヤーたちが派手なエフェクトと共に決めポーズを取るプロモーション映像、そして地鳴りのように響く観客たちの期待に満ちたざわめき。色とりどりのサイリウムの光が会場を埋め尽くしている。そのすべてが、僕たちチーム『ジャンク・キャッスル』を、場違いな闖入者のように圧倒していた。 僕らは試合会場に準備された各々のブースに入り、慣れない椅子に腰を下ろすと、愛用のジョイスティックをパソコンに接続した。そして僕は、クエンティンが作ってくれたフィグモ――ゲームのフィギュアの形をしたオプションパーツ――を、そっとジョイスティックのインターフェースに接続する。「頼むよ、ユイ」 誰にも聞こえないよう、僕はフィグモに囁きかけた。 ちょうどその時、隣のブースに相手チームが入場してきた。その名も『ロイヤル・ソード』。お揃いの光沢のあるチームTシャツに、メンバー全員が見るからに高価なジョイスティックを持ち、そして脳波コントロールマウス機能付きの最新型VRゴーグルを首に掛けていた。 方や僕らは各々の普段着で、僕とクエンティンが使っているのは、一般的なジョイスティックとジャンク屋で買った型落ちの脳波コントロールマウスだ。VRゴーグルなんて、メンバーの誰も持っていなかった。 ミミ先輩が、羨望の混じったため息をつくのが聞こえた。「いいなぁ、あれ。……せめてマウスだけでも新しければ、エイムももっと速いのに……」「みんな集まってくれ!」 そんな空気を振り払うように
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第2話 ジャンク・キャッスル・ラッシュ
「行くぞ、ユイ! サポートを頼む!」『OK、リク! 任せて!』 僕は昨夜、今から作る城のようなクラフトをユイに見せていた。僕の頭に浮かんだイメージを、彼女は脳波コントロールマウスから読み取って完璧に解釈し、次に必要なパーツ、接着すべき最適な角度を、ディスプレーの視界に次々と示していく。僕はもう、何も考えない。ただ、ひたすらスキルを発動し、ユイが示してくれる光のガイドに合わせて、ブロックや板を組み上げていくだけだ。『な、なんだぁ!? チーム『ジャンク・キャッスル』のクラフター、信じられないスピードで組み上げていく!』 解説が驚愕の声を上げる。 とどめを刺そうとウィングスーツで急降下してきた『ロイヤル・ソード』のエースアタッカーが、目の前の光景に驚愕し、動きを止めた。 ついさっきまでただのガラクタの山だったものが、青白いクラフトライトの光に包まれ、意思を持ったかのように蠢き、変形し、雄々しく立ち上がる。 無骨な『ブロック』で固められた装甲。地面をがっしりと掴む、六輪の大きな『タイヤ』。そして、天に向かって突き出された一本の『大砲』と、不気味に旋回する複数の『自動照準』つき『クロスボウ』。 その中心には、僕たちの命そのものである『コア』が、頑丈なフレームに守られる形で鎮座していた。 それは、瓦礫のようなパーツから生まれ落ちた獣。無骨な移動要塞——『ジャンク・キャッスル』。「さあ、ショータイムだ」  僕は、むき出しの操縦席に飛び乗り、『ハンドル』をガシリと掴んだ。ジョイスティックに接続されたフィグモが淡く光り、僕の視界の隅に、パートナーであるユイのホログラムが姿を現す。『リク? ……次は何をする?』 僕はニヤッと笑い、「敵を蹴散らす!」 僕の言葉が終わらぬうちに、ユイが制御する『大砲』と『自動照準クロスボウ』が、空中で呆然とする『ロイヤル・ソード』のエースアタッカーを捉え、容赦ない集中砲火を浴びせた。抵抗する間もなく、彼の身体は光の粒子となって霧散する。[ENEMY PLAYER DO
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第3話 ガラクタの凱歌
 モニターの向こう、敵プレイヤー二人のアバターが、その手に最後の切り札である爆弾を握りしめている。勝利を確信した、無慈悲な笑み。 まずい! 二発の爆弾には、絶対に耐えられない! 思考よりも先に、身体が動いていた。 僕は、ジャンク・キャッスルのハンドルを全力で前に倒し、残ったバッテリーの全てを注ぎ込む勢いで全速前進させた。狙うは、片方のプレイヤー。爆弾を投げられる前に、この鉄の塊で轢き潰す! 轟音と共に、キャッスルは敵のアバターを掠めるように吹き飛ばした。やった! だが、その代償は大きかった。掠めた際に敵のアバターがキャッスルの車輪に引っかかり、急激に減速してしまう。その一瞬の隙を、もう片方のプレイヤーが見逃すはずもなかった。 投げられた爆弾が、完璧な放物線を描いて、僕たちのコアの真横に着弾する。[CORE EXPOSED!][WARNING: PLAYER HP 1] 世界が白く染まり、凄まじい衝撃で画面全体が揺れる。『コア』を守っていた最後の装甲が吹き飛び、僕自身も爆風で瀕死の状態に陥った。『リク!』 ディスプレーの隅で、ユイが心配そうに僕を見つめている。 ——諦めてたまるか! もはや一か八かだった。ジャンク・キャッスルを敵の要塞に向け『大砲』を最後の板目がけて撃った。あの硬い『板』の壁を壊すために。ユイも、僕の意図を汲んで『自動照準クロスボウ』を何発か放ってくれたようだが、爆風と警告音で揺れる視界の中、僕の目にはもう何も映っていなかった。 ――その時だった。 敵の最後の一撃が僕のアバターを捉え、世界が完全に暗転したのと、どこか間延びした、ゲームの終了を告げるファンファーレが鳴り響いたのは、ほぼ同時だった。 ——何が、起きた? 暗転した視界が、リスポーン地点の光と共に戻る。がらんとしたフィールド。静寂。そして、場違いなほど陽気な勝利のメロディー。『リク! 勝った! 私達、勝った!』 ヘッドセットから、ユイの、今まで聞いたこともないほど弾んだ声が聞こえた
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第4話 チーム結成
 ——一ヶ月前  その日は、年度末の試験も終わり、みんなが開放的な気分で夏休みの予定などを話している、そんな放課後だった。「なあ、リク」 ほとんどの生徒が帰り始めた、どこか気怠い空気が漂う教室。窓から差し込む西日が、床に長い影を落としていた。クエンティンが、一週間ぶりに僕のクラスに顔を出して、話しかけてきた。「うん?」 「俺、eスポーツで世界を獲ろうと思う」 「ふーん」 クエンティン・ミラーとは、小学校の頃からの腐れ縁だ。中学も、ここヘロン第九高等学校もずっと一緒。まあ、コロニーの土地事情を考えれば、アップタウンに住むようなお金持ちでもない限り、人口密度が過密なダウンタウンにある最寄りの公立校に通うことになるから、特に珍しいことじゃないけど。「あっ! リク! 流したな! 今回ばかりは俺は本気だ」 「だってさあ、中学の頃にも『FFOのバックドアを誰よりも早く見つけてやる!』とか、『もっと人間っぽいAIを作ってやる!』とか言ってたじゃん」「……今回は、そう言うんじゃないんだ」 突然沈んだクエンティンの表情を見て、僕はいつもの軽口を叩くのをやめた。何かがあったのだと、直感的に悟った。オレンジ色の西日が差し込む教室は、ほとんどの生徒が帰り、シーンと静まり返っている。 「何かあったの?」 「……親父がさ、……ちょっと……」  クエンティンの声は、かろうじて聞き取れるほど小さく、震えていた。彼を見ると、大きな目に涙をいっぱいに溜めていて、その瞳は夕日のせいでひどく赤く見えた。 「えっ! クエンティン、お父さんがどうかしたの?」 「悪りぃ、そんなつもりじゃなかったんだけどさ……。親父……コロニーのモノレールのメンテの仕事してるだろ? 仕事柄、最近やけに調子悪そうにしててさ、医者に行ったら……宇宙放射線病だって……」 ——宇宙放射線病。  僕ら宇宙生活者にとって、最も身近で、最も恐ろしい病だ。  発症すれば、慢性的な倦怠感・疲労感に見舞われ、がんや白血病のリスクも跳ね上がる。もちろん、コロニー自体に
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フォートレス・フロンティア・オンライン:ゲームルール
執筆用のメモ書き程度ですが、以下のルールでフォートレス・フロンティアがプログラムされていると考えてください。【1. 基本的なルール(目的)】 ・4対4のチーム戦です。 ・各チームは自陣にある「コア」を守りつつ、相手チームの「コア」を破壊すれば勝利となります。 ・チームに一人は「クラフター」が参戦し、戦闘中(アクションフェーズ)でもクラフトが可能です。   「クラフター」は直接戦闘は行えないため、仲間に守られながらクラフトを行います。【2. クラフト要素(素材と物理演算)】 ・準備フェーズ:   試合前の準備フェーズで、限られたリソースを使い、要塞、兵器、乗り物をクラフトします。 ・基本パーツ:   「クラフター」は「接着の魔法」スキルを使い、以下の基本パーツを自由に組み合わせることができます。    ブロック, バネ, タイヤ, 推進ファン, 大砲, 爆薬タル, 板, 棒, クロスボウ, 自動照準, ハンドル, バッテリー   両チームとも、種類と数が同じ基本パーツが自陣内に配置されます。 ・物理演算:   ゲーム内には物理演算が働いており、クラフトにはバランスと強度が重要です。    重心が高すぎれば倒れます。    強度が足りなければ衝撃で壊れます。    推進ファンの推力と機体の重量のバランスも考慮する必要があります。【3. リソース管理(時間とコスト)】 ・「準備フェーズ」の時間は限られています(5分くらい)。 ・各パーツには「コスト」が設定されており、強力なパーツばかりを組み合わせることはできません。 ・フィールド内には追加リソースを採取できるポイントも存在しますが、敵チームとの奪い合いになるリスクがあります。【4. コア】 ・勝利条件となるターゲットです。 ・持ち運び:   プレイヤーが直接持ち運ぶことが可能ですが、その間は両手が塞がり、攻撃などの他の行動はできなくなります。 ・
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第5話 データの海の亡霊
「で、クエンティン。心当たりってどこなの?」「へへっ、それは着いてからのお楽しみってことにしてください」 埃っぽいeスポーツ部の部室を出た僕たち四人は、ダウンタウンの雑多な路地裏を歩いていた。ミミ先輩の問いに、クエンティンは意味ありげに笑うだけだ。 やがて彼が足を止めたのは、古びた電子部品やジャンクパーツが店の外まで溢れ出している、一軒の店の前だった。錆びついた看板には、かろうじて『シュミットの工房』と読み取れる文字が残っている。「ここ……?」「ああ。俺が中学の頃からバイトしてる店だ」 店主のヴィル爺さんは、僕の親友の、もう一人のお爺さんのような人だ。クエンティンが中学の頃からバイトをしているこの店は、彼にとって第二の家みたいなものだった。「頼む、ヴィル爺さん! 今日から毎日、ここでFFOの練習をさせてほしい! バイト代は、練習代で全部引いてくれて構わないから!」 クエンティンが、真剣な眼差しで頭を下げた。その本気に、いつもは飄々としているヴィル爺さんも、少しだけ驚いたように目を見開いた。「……親父さんのことは良いのかい? いま、大変なんだろ?」 その言葉に、クエンティンの表情が一瞬、痛みに耐えるように歪む。「だからこそ、今やらなきゃならないんです」 彼の声に宿る覚悟を感じ取ったのだろう。ヴィル爺さんは、ふっと息を吐いて頷いた。「……分かったよ。夕方の暇な時間なら、ただで使って良い。その代わり、面白い試合を見せな」「! ……ありがとう、ヴィル爺さん!」 こうして始まった僕たちの練習。短い時間の中でも、いくつかの発見があった。リョウガ先輩は、腕に板の盾をクラフトしてやると、その巨体と相まって鉄壁の守りを見せる、理想的なタンクだった。ミミ先輩は、予測不能な動きで敵をかく乱する、天性のトリックスターだ。 クエンティンの腕は、言うまでもない。 問題は、僕だった。自分のイメージする、リアルタイムでの高速かつ正確なクラフトが、どう
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第6話 箱の中の妖精
「私……? 私、……ビルドナンバー759」 ビルドナンバー。それは人の名前じゃない。 そう思ったけど、口に出すのは失礼な気がして、僕はその言葉を飲み込んだ。代わりに、自分でも不思議なほど自然に、言葉が続いていた。「こんなところで、何をしてるの?」「……ゲームを、見ている」彼女の感情のない瞳が、無数に浮かぶモニターに向けられる。「……色んなものが作られて、戦う……」「FFOのこと?」「F・F・O?」オウム返しに、彼女は平坦な声で繰り返した。「うん、『フォートレス・フロンティア・オンライン』。君が見てるのがそうだよ」「ふーん」 僕は、核心に触れる質問を投げかけた。「ねぇ、君は……AIなの?」「うん」「どうしてこんなところにいるの?」 彼女の瞳が、ほんのわずかに揺らいだように見えた。「外は、危険……。だから、出てはイケナイ……と、言われた」「そんな! ここはゲームの中だもの、危険なんてないよ」「……分からない……。私、ココしか知らない」 その言葉が、僕の胸に突き刺さった。ずっと一人で、この何もない暗闇の中で、ただ外の世界を眺めていただけ……? 後で考えると、自分でもどうしてあんな言葉が出てきたのか不思議だった。だけどその時、僕は、そう言わなきゃいけない気がしたんだ。「本当? ……じゃあさ、僕と一緒に外に出てみない?」 彼女は、人形のようだった瞳を、ゆっくりと僕に向けた。その奥に、初めて「戸惑い」という色の光が灯る。そして、長い沈黙の後、小さく、本当にかすかな声で、彼女は答えた。「……うん」 僕は、彼女の手を取り、思い切り飛
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第7話 フィギュアの中のパートナー
 ガラクタだらけの工房の片隅で、PCに接続されたUSBメモリサイズのチップが、静かに、しかし力強く、青い光を放っていた。 僕たち五人は、その小さな光を、息を詰めて見つめていた。張り詰めていた空気が、誰からともなく漏れた安堵のため息と共に、ゆっくりと緩んでいく。「……やったか…?」 クエンティンが、汗だくの額を拭いながら、力なく呟いた。彼はやりきった疲労感で、椅子に深く沈み込んでいる。「え、えっと……何がどうなったの? あのAIの子は、このちっこいのに?」 ミミ先輩が、まだ信じられないといった様子で、チップと僕たちの顔を交互に見比べた。その隣で、リョウガ先輩も、腕を組んだまま、ただ黙って事の成り行きを見守っている。とんでもないことに関わってしまった、という戸惑いがその背中から伝わってきた。 僕の視線は、チップが放つ光から離せなかった。 ユイは……本当に、この中にいるの? 助かった、という安堵と、彼女がどうなってしまったのか分からないという不安が、胸の中で渦を巻いていた。 ヴィル爺さんは、そのチップをPCからそっと引き抜くと、労わるように手のひらで包み込んだ。「ああ。運営の追跡からは逃れた。だが、転送時にかなりのデータが欠損したはずだ。このチップの中で彼女が再び『目覚める』かどうかは……本人次第だ」 その言葉に、僕の心臓が、また小さく音を立てた。 それから2週間。地区大会の決勝戦が目前に迫る中、僕はユイの安否が気になり、ただ意味もなく焦っていた。その間、工房ではクエンティンとヴィル爺さんが、あのチップを、僕がゴミ捨て場から拾ってきたフィグモに組み込むという、困難な作業を進めてくれていた。そして、大会前日。ヴィル爺さんが綺麗に塗装までしてくれた、僕の新しい『相棒』は、ついに完成したんだ。 僕は震える手で、完成した「ユイ入りフィグモ」をジョイスティックに接続し、工房のPCからFFOにログインする。 緊張と期待で、心臓が早鐘のように鳴っていた。 ログイン
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第8話 ガラクタたちの祝杯
 地区大会一回戦の勝利の興奮も冷めやらぬまま、僕たち四人は『シュミットの工房』の、油と埃の匂いが染みついた小さな事務室に集まっていた。ヴィル爺さんが出してくれたジュースと安物のスナック菓子が、今日の僕たちのささやかな祝杯だ。「悪いな、ヴィル爺さん。こんなことまでしてもらっちゃって」 クエンティンが、少し気恥ずかしそうに言った。「いや何、お前さんたちのお陰で、少し儲かったんでな。利益の還元というやつさ」 ヴィル爺さんは、悪戯っぽく片目をつぶって見せる。「えっ? 何? 賭けをしてたのかよ」 クエンティンが、ジト目でヴィル爺さんを睨んだ。「まぁな。お前さんたちのチーム、とんでもないオッズがついてたからな」「食えない爺さんだなぁ……。今度俺にも一口頼むよ。未成年だと買えないんだよ」「これは大人の特権だからな、諦めろ」「そんなぁ」 クエンティンが本気で悔しがっているのか、ふざけているのか。そのやり取りを見て、みんながどっと笑った。高価な料理なんかよりも、ずっと美味い、勝利の味がした。「……まさか、あたしらが優勝候補の一角に勝てるなんてねぇ」「全く……、クエンティンが部室に入ってきたときにはどうなるかと思っていたが……まさかな、ハハハッ!」 ミミ先輩、リョウガ先輩とも、心の底から嬉しそうに、上機嫌で笑っていた。「なっ! リク! 俺の言った通りだったろ、お前がクラフターをやってくれれば、絶対上手くいくって!」 クエンティンも、ジュースを飲んでいるだけなのに、その熱量はすでに酔っ払っているかのようだった。「そうそう、リクっち! 難しい顔しない! このまま行けば、絶対に優勝狙えるよ!」「う、うん……、そうですね」 今日の勝利に、僕が水を差すわけにはいかない。僕は、少し気圧されながらも、精一杯そう合わせるのがやっとだった。 一時間ほど経ち、少し落ち着きを取り戻した僕たちは、ヴィル爺さんが用意
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第9話 モノレールが繋ぐ祈り
 地区大会での祝勝会の熱気が、まだ身体のどこかに残っているようだった。だが、翌日俺が向かったダウンタウンの公立病院に、そんな浮かれた空気は一切なかった。消毒液の匂いがツンと鼻をつく、静かで、どこか寂しい空間。ここが、今の親父の戦場だ。「よお、クエンティン」 病室のベッドの上で、親父——マーカス・ミラーは、痩せてしまった身体を起こし、精一杯の笑顔で俺を迎えてくれた。「お前の試合、病室のモニターで見てたぞ。すごいじゃないか……チームのエースなんだってな」「まあな! それより、体の調子はどうなんだよ」 俺がそう尋ねると、親父は一瞬だけ、遠い目をした。「ああ、保険が効く標準治療のおかげで、痛みはだいぶマシになった。……ただ、この治療じゃ、進行を遅らせるのが精一杯でな」 親父は、点滴に繋がれた自分の腕を、悔しそうに見つめた。「本当は、最近承認されたばかりの新薬もあるんだが……。あれを使えば、もっと良くなるかもしれん。だが、保険が一切効かなくてな……。すまんな、クエンティン。もう、お前たちに何もしてやれないばかりか、迷惑ばかりで……」 その言葉に、俺は奥歯をぐっと噛みしめた。違う、迷惑なんかじゃない。あんたは、俺たちのために、ずっと体を張って働いてくれたじゃないか。 込み上げてくる言葉を、俺は、無理やり笑顔で飲み込んだ。「何言ってんだよ! 親父は、ゆっくり休んでろって! あとは俺に任せとけ!」 俺が病室を出ようとした、ちょうどその時だった。ドアが開き、パート帰りの母さん——サラ・ミラーが顔を出す。「あら、クエンティン。入れ違いだったわね」「ああ。じゃあ、母さん、あと頼む」 俺は母さんと短く言葉を交わし、病室を後にした。 病院からの帰り道、俺は母さんと二人、モノレールに乗っていた。それは、かつて親父が担当していた路線の一つだ。ダウンタウンとミッドタウンを結ぶ、コロニーで最も利用者の多い
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